事業者団体ヒア・議事録3

○青木意見陳述人(日本ホームヘルパー協会会長)
 論点1の生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準及び報酬について申し上げます。結論は、訪問介護の社会的評価の低下を招くおそれがあるので、訪問介護員の研修要件の緩和、介護報酬の切り下げには強い懸念を持っていますので、慎重の上にも慎重を期してほしいとお願いいたします。仮に生活援助は誰でもできるので安い労働力で対応すればよいという考え方では、3級ヘルパーを廃止した意味がないと思います。時計の針の逆回りに見えます。
 日常生活の組み立てを支援する生活援助は、家の中の様子を見て日々の暮らしぶりを観察し、ちょっとした会話によるふだんの体調などの変化の気づきをもとに、意欲の維持・回復を支援し、セルフケア力を高めることが目的です。安易に基準を緩和し、介護報酬の引き下げを行うことは、訪問介護員のモチベーションの低下を招き、結果的に利用者の重度化を早めることにもなりかねません。また、研修時間を短くしても総合事業の訪問型サービスを担う人材が集まらない実態を見ると、訪問介護員の確保につながることは余り期待できません。

 論点2の生活援助のみ頻繁に利用していることをどう考えるかについて申し上げます。結論は、それぞれの事例には個別の理由があるので、一律に回数のみで評価し、単純に減算規定を設けるべきではないと考えます。例えば本来身体介護で算定すべきものが、保険者の理解不足や利用者負担額の軽減、サービス利用を支給限度額の範囲内におさめるための理由で無理やり生活援助に位置づけられている場合もあります。したがって、地域ケア会議などでその必要性や介護報酬区分の妥当性を検証した上で個別対応すべきものと考えています。

 論点3の集合住宅におけるサービス提供の適正化については、移動コストに見合う減算を行うことには異議がありません。

 論点4の前半にある身体介護を行う者と生活援助を行う者の役割分担を進めることについては、それが重要とは全く考えておりませんことをまず申し上げます。
 後段のサービス提供責任者の任用要件については、サービス提供責任者の担う業務の重要性を考えれば、国が標準的なサービス提供責任者養成研修カリキュラムを提示し、今後はその研修を修了した者でなければ、サービス提供責任者に従事できないような仕組みにすることを提案します。

 論点5の前半にある身体介護における自立生活支援のための見守り的援助について申し上げます。利用者の潜在能力を見出し、ICFで言うところの参画活動を促進するための意欲を利用者に持っていただくことが、まず自立支援の出発点になると考えています。調理や着がえなどは訪問介護員が代行したほうが短時間で終わりますが、それでは意欲もない、依存心が高まることになるので、手を出し過ぎない介護が重要です。しかし、論点2でも申し上げましたが、何らかの事情でこれがケアプラン上は生活援助の算定区分に位置づけられていることが多々あると聞いています。したがって、ローカルルールの是正が必要と考えています。
 後段のリハビリテーション専門職との連携については、利用者の居宅における訪問リハ、通所リハの専門職との連携に限定せずに、利用者にかかわっているリハ専門職が助言を求めた場合等、広く生活機能向上連携加算を算定できるようにしてはいかがでしょうか。

(つづく)