事業者団体ヒア:提出資料1

第147回社会保障審議会介護給付費分科会(H29.9.13)で、事業者団体のヒアリングを実施しています。

ホームヘルパー関係は2つの団体が対象になっているようですが、まずはその資料から。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000177215.html

*資料のレイアウトや文字強調等はブログ掲載にあたって修正している場合があります。


資料3 日本ホームヘルパー協会提出資料

訪問介護に係る論点に関する意見について


1.生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準及び報酬について、要介護者に対する生活援助の意義を踏まえ、どう考えるか。
(1)介護給付は、介護保険法に規定されている「利用者の要介護状態の改善または悪化の防止に資する」ことを旨として行われるものであると承知しています。
(2)独居で身体機能と認知機能が低下した80歳以上の超高齢の利用者が増加する状況下で、その居宅生活の維持を支援するためには、不安や厭世的気分の解消を図り、意欲と自信の回復を目指しながら「普段の体調管理(低栄養・脱水・低活動・便秘の防止)」と「服薬」などを中心とした「日々の暮らし」の基本を支えることが、要介護状態の悪化の防止に必須であると認識しています。
(3)訪問介護員にとって、食事・入浴・排泄の3大介護技術のみが専門性ではありません。利用者の心身機能の低下の要因・背景と置かれた環境との相互作用を踏まえつつ、利用者とのコミュニケーションを図る中で、阻害要因と促進要因をアセスメントし、心身の状況に応じた総合的な視点から、「日々の暮らし」を支援することが重要です。
(4)生活援助といえども、自立支援の視点に立った利用者とのコミュニケーションが重要であり、日々の暮らしの観察に基づくアセスメントは不可欠です。
(5)訪問介護員が誇りをもって利用者の自立支援に携わることができる環境を整えることが介護人材の確保の最大の要件であると考えており、安易に基準の緩和と介護報酬の引き下げを行うことは、利用者および訪問介護員の双方にとって事態の悪化をもたらすものと危惧します。

2.「生活援助」のみの利用状況については月31回以上の利用者が一定程度いる中で、身体介護も含めた訪問介護の報酬のあり方について、どう考えるか。
(1)介護給付は、介護保険法に規定されている「居宅での生活を継続する」ことを旨として行われるものであると承知しています。
(2)要介護度1・2の利用者は、3大介護の必要性や激しいBPSDはみられないが、認知機能の低下がみられることに鑑み、前述したようにバランスのとれた食事、脱水防止のための水分摂取、活動性の維持、服薬の確認、清潔の保持などの「日々の暮らし」の支援に併せ、意欲の維持に関する支援は要介護状態の悪化防止に必要不可欠であります。
(3)訪問回数が著しく多い事例については、単に回数の多寡のみをもって論じるのではなく、その必要性や報酬算定区分(身体介護か生活援助か)の妥当性について、地域ケア会議などで検証した上で、対応すべきものと思います。

3.集合住宅におけるサービス提供の適正化について、どう考えるか。
(1)集合住宅は、移動に要する時間が少ないので、その分に見合う介護報酬の適正化を図ることは理解できます。
(2)一方、地域加算がない地域において、点在する居宅を訪問する場合に遠距離加算があるわけではないので、集合住宅減算は高齢者に特化した集合住宅にとどめるべきものと思います。

4.主として身体介護を行う者と生活援助を行う者の役割分担を進めていくことが重要との意見がある中で、サービス提供責任者の役割や任用要件について、どう考えるか。
(1)利用者にとって、身体介護と生活援助を行う者の分担を進めることが重要とは理解していません。生活援助は誰でもできるという安易な考え方は、前述した「日々の暮らし」の基本を支え重度化を防止するという重要性を否定することになりかねません。
(2)サービス提供責任者は、「日々の暮らし」の基本を支える視点から適切な訪問介護計画を作成し、かつ、訪問介護員を指導教育する重要な職責を担っているので、その資質向上を図ることは重要な課題であると認識しています。
(3)介護支援専門員については、手厚い法定研修制度が設けられていますが、サービス提供責任者は介護福祉士または実務研修修了者が要件であり、サービス提供責任者の職務に着目した研修が義務付けられていません。したがって、サービス提供責任者には就任前研修を義務化するよう要望します。

5.身体介護における自立生活支援のための見守り的援助について、どう考えるか。また、生活機能向上連携加算の取得状況を踏まえ、リハビリテーション専門職の意見を踏まえた訪問介護の実施について、どう考えるか。
(1)自立支援のための見守り的援助は重要であり、心身の状況に応じた介護の具体例として、手を出し過ぎない介護は利用者のセルフケア力を高める介護手法であると認識しています。
(2)しかしながら、市町村の担当者や介護支援専門員、利用者の考え方によっては、高い専門性に立脚した見守り的援助であるにも関わらず、介護報酬単価の低い生活援助に位置づけられるという不合理な取り扱いがみられるので、ローカルルールの是正を図る必要があります。
(3)サービス提供責任者がリハビリテーション専門職との連携の下でのアセスメントに基づき訪問介護計画を作成することは、双方の相乗効果を高め、自立支援に重要であると認識しています。ついては、現在の生活機能向上連携加算の算定要件を緩和し、特定のサービスを利用している場合に限定せずに、多様な社会資源の中に存在するリハビリテーション専門職との連携の下で訪問介護計画を作成した場合は、加算を算定できるように検討していただきたい。

(つづく)