事業者団体ヒア・提出資料2

資料4 全国ホームヘルパー協議会提出資料

介護給付費分科会の論点に対する意見


●生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準及び報酬ついて
[1]「生活援助の専門性を踏まえた慎重な検討が必要です」
 現在、生活援助中心のサービス提供について、人員基準の緩和と報酬のあり方が議論されていますが、訪問介護における生活援助は、単に家事代行支援をしているのでなく、自宅の環境や調理・洗濯、日々の会話等から利用者の状態の全体像を把握し、状況に応じて適切な支援を判断・提供する非常に専門性の高い支援です。生活援助中心のサービス提供では認知症の高齢者や精神障害の方への支援も数多くあり、専門性が求められるのが実態です。
 また、生活援助と身体介護は一連の流れの中で提供されるサービスです。それぞれを分けてサービス提供することは、利用者の全体像を把握できなくることにつながり、適切なサービス提供を行うことが困難になることで重度化を招くことが懸念されます。
 そのため、生活援助を中心とする場合の訪問介護サービスの提供について、一律に人員基準を緩和するのではなく、専門職による適切なアセスメントに基づいた支援が提供される体制を保つことが必要です。

[2]「専門性の高い人材の育成が重要です」
 人員基準を緩和させる議論にともない、緩和された基準に応じた人材を養成する簡易な研修を実施することが想定されていますが、この研修の実施により自立支援の視点が低い人材が増加することを非常に懸念しています。自立支援の視点が盛り込まれていない支援は利用者の重度化を加速させるともに、ホームヘルパー全体の地位を低下させる危険性があります。
 訪問介護における支援は、生活援助と身体介護の知識を総合的に用いながら利用者の状況の観察と報告を行い、自立支援の視点をもってサービスを提供することが重要です。そのため、簡易な研修で基準緩和の人材を養成するのではなく、介護職員初任者研修の受講者に対して助成を行うなど、高い専門性を持った人材の育成を推進することが必要だと考えます。さらに、ホームヘルパーの専門性や魅力への理解を深め、人材確保につなげることを目的に、研修時にホームヘルパーの同行訪問を盛り込むことが有効であると考えます。

介護給付費分科会の論点に関連する意見

ホームヘルパーの人材確保に対するさらなる処遇について
「利用者のニーズに応えられる体制の確保が必要です」
 ホームヘルプサービスは他業種に比べて労働条件が不安定なことに加え、賃金格差もあることから引き続き人材確保が大変厳しい状況にあります。さらには、ヘルパーの高齢化や退職などの要因も重なることで、今後は利用者のニーズがありながらもそれに応えられなくることを非常に懸念しています。
 利用者のニーズに応え、地域生活の継続を安定して支援するためには訪問介護を含め介護サービスの人材の定着・確保が必須であると考えます。そのため、一億総活躍社会の実現に向けた「働き方改革」により最低賃金の改定率が上昇していますが、基本報酬についてもこの改定率を踏まえた設定とし、事業所が介護従事者の処遇改善や職場環境整備、人材確保等に積極的に取り組めるよう検討してください。
 また、訪問介護事業所においても資質の向上を目指した研修を企画しておりますが、認知症ケアや喀痰吸引などの専門的な研修については事業所での開催は困難です。各専門機関と連携し、専門的な研修を身近な地域で受けられるような体制整備が必要です。

ホームヘルパーの負担度の高いケアへの対応について
「負担度に応じた報酬上の評価を検討してください」
 認知症高齢者や要介護度の高い単身高齢者へのサービス提供は、利用者との信頼関係の構築や遠方の家族との調整などに非常に時間がかり、サービス提供責任者の業務負担も大きくなっています。こうした負担度に応じた報酬上の評価を検討してください。

●訪問初期・再開時の対応について
「利用者への初期の関わりを適切に評価することが必要です。」
 利用者への初期の関わりは、その後の利用者との関わり方を判断するためにアセスメントを丁寧に行うほか、関係性の構築や家族との調整など、その後の利用者支援において非常に重要な時期の支援です。
 現在も初回加算においてサービス提供責任者の関わりが評価されていますが、丁寧に時間をかけて対応することを要する非常に重要な業務であることを鑑み、報酬上においてより適切に評価いただくよう検討してください。

●重度化対応・看取りのニーズへの対応について
「重度化や看取りのニーズへ対応が適切に評価されることが必要です」
 在宅での看取りのニーズの高まりを踏え、ホームヘルプサービスにおいても看取りへの取り組みを充実する必要があります。看取りにあたっては、医師との連携や職員に対するケア、家族との調整等の適切な対応が求められます。そのため、看取りへのニーズに対する一連の対応について、報酬上で適切な評価が必要です。
 また、重度化対応や看取りのニーズへの対応の一環として緊急時訪問介護加算を申請できますが、これについてはケアプランの内容に予め緊急時の対応やそれに類似した文言が含まれていれば申請できないこととなっています。加算の仕組みがありながら申請できない現状が是正されるよう、指導を行っていただきたいと考えます。

●ケアマネジャーとホームヘルパーの連携について
「利用者の状態に応じた適切なケアプランが作成される体制が必要です」
 ホームヘルパーは、利用者の解決すべき課題が変化していることを敏感に気づくことができ、直接的な支援だけでなく「相談」や「情報提供」等の支援を状況に応じて行っています。利用者の自立支援の視点からは、サービス提供の過程で得られる気づきをケアマネジャーと随時共有し、利用者の現在の状態にあわせてリハビリのテーション<注:原文ママ>の充実を行うなどケアプランの内容も変更していくことが重要と考えます。
 現在もサービス提供の過程での気づきをサービス提供責任者等からケアマネジャーへ報告し、適切なサービス内容となるよう連携を図っていますが、ケアマネジャーとホームヘルパーがより密接に連携し、利用者の自立支援が促進される体制となようご検討ください。

●医療と介護の連携体制確保について
「医師とケアマネジャーのさらなる連携、及び、ホームヘルパーとの情報共有の促進を求めます」
 利用者が生活の場を病院から地域へ円滑に移行させるためは、入院時から医師とケアマネジャーが密接に連携して退院後に必要な支援等について調整したうえで、支援開始に備えてケアマネジャーとホームヘルパーが情報共有することが重要です。
 現在、医師とケアマネジャーの連携について、入院時情報連携加算や退院・退所加算等により連携の促進が図られていますが、いずれの算定状況も1割未満となっており、十分な連携がされているとは言えない状況です。そのため、医師とケアマネジャーの連携がさらに促進されるような体制をご検討くだい。

●介護予防・日常生活支援総合事業について
「訪問サービスAの単価や基準は、事業者の実態を把握したうえで慎重な検討が必要です」
 総合事業は、住民等の多様な担い手によるサービスを充実させることで地域の支え合い体制を推進することを主旨としています。しかし、現状では新たな担い手の参入は進んでいると言えず、サービス内容も従前とほぼ同じで単価を切り下げているだけのケースが多く見られ、さらには事務処理も煩雑なことから事業所経営を圧迫している現状があります。
 そのため、新たに改定されたガイドランを踏まえ、単価や基準については事業者の実態をよく把握し、協議しながら慎重に検討するよう国による自治体への指導を徹底するとともに、事務処理の負担に対する報酬上の評価を検討してください。