訪問介護の論点7(7.5分科会)

小原委員(日本介護支援専門員協会副会長)
 論点の1番の生活援助の意義についてですが、まずは生活援助のみの利用状況について、利用者さんが集合住宅等に居住するのか、あるいは在宅での利用なのかといった状況によっても違いが出てきますし、なぜそのようなサービス利用状況になるのかということもしっかりと見ていく必要があるのかなと思います。
 財務省からの指摘については、生活援助が中心となるケースと定期巡回の対象像が異なることとか、あるいは月当たりの基本報酬が定められている定期巡回の平均値と生活援助の最大値との比較は妥当性があるのか、疑問に思うところがあります。
 その上で、このような特殊なサービス利用形態にならざるを得ないケースについては、十分に検討していく必要もあるかと思いますし、さまざまなサービス利用のパターンがあってこそ、先ほど誰かもおっしゃっていましたが、在宅生活が継続できるという側面もあるのではないかなと思います。
 その上で、要介護高齢者等の個人が直面する暮らしにくさ、生活課題に対して、最低限必要な生活状況を継続するために活用する支援としての生活援助とよく比較される家事代行的なサービスを比較するのは、ちょっと違和感があります。また、生活援助の場合は、居宅サービス計画に応じた訪問介護計画の作成とか、実施の際の声かけとか安否確認、さまざまな連絡調整等の附帯する業務も必要になってきます。
 生活援助の意義、必要性については、実情としてとても適切とは言えない生活環境にある利用者さんを支援することは少なくないのですが、例えば清潔な生活環境が担保できなくて、不適切な食品の摂取とか、水分の不足とか、重要な薬の飲み忘れなどが頻回にあれば、容易に健康状態とか生活状況の悪化につながることは想像にやすいと思います。ここら辺は自立支援との兼ね合いとも絡めて考えていかなければいけないと私は強く思います。

小林委員(全国健康保険協会理事長)
 訪問介護サービスのあり方については、介護保険制度の持続可能性といった視点も十分踏まえて、適正化できる部分は見直し、評価を重点化すべき部分については重点化が図られるように、両面からの見直しを検討すべきだと考えます。
 こうした観点から、論点の1つ目の○にある生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準及び報酬については、サービス水準に与える影響には配慮する必要がありますが、限られた介護人材を有効活用する意味でも、より多くの人材が生活援助を実施できるよう基準を見直し、それに伴う報酬水準の適正化を図っていくべきではないかと思います。
 論点の3つ目の○の集合住宅におけるサービス提供については、参考資料の27ページにあるとおり、現行では事業所とサービス利用者の居住する建物が同一敷地内にあっても隣接敷地内にあっても減算率は同じ10%になっておりますが、同一敷地内のほうがサービス提供に伴う移動コストは低廉になる場合が多いと思いますので、その点はより細かく報酬を設定していくべきだと思います。
 評価の重点化という観点からは、利用者の自立支援や在宅中重度者の方の受入拡大につながるよう、加算の要件の見直しもあわせて行うべきではないかと思います。

齋藤(訓)委員(日本看護協会副会長)
 何人かの委員からも御指摘のように、私も生活援助と身体介護をきれいに切り分けられるのかどうかは、少し疑問があります。私も親を介護しておりますので、サービスを受ける側としても全く切り分けはできないのでは、と考えております。
 例えばお掃除一つにしても、居室は広くてできないけれども、小さなトイレだったらできるなどの場合もあるかと思います。利用者が出来る範囲で参加すること自体が生活機能の維持・向上に資すると思いますので、利用者の状態に合わせた援助と家事代行とは区別していく必要があると思います。生活機能を維持するための機能訓練の要素がある場合は訪問介護に残して、そうではない家事代行サービスなどは訪問介護以外のサービスを活用するというように、少し分けていく方向もあるのではないかと感じているところです。
 参考資料の54ページに、生活援助サービスを提供している利用者さんについて、約8割の事業所がこのままサービスを継続すべきだと回答しているわけですが、一方で13.6%の事業所が訪問介護以外の総合事業でも対応可能という回答もありますので、こうした事業者側の判断について、随時ケアマネジャーに情報提供して、ケアプランの中身を変えるといったようなサービス提供責任者からの意見、情報提供を促す仕組みがあると、総合事業に移行しやすくなるのではないかと考えています。
 もう一点、任用要件のところでございますが、25ページ目の資料で、生活機能向上連携加算をなぜ算定できないのかという理由が出ていたかと思いますが、3番目の4番目の理由として「利用者の身体の状況等の評価を共同して行なうことが難しい」、あるいは「生活機能の向上を目的とした訪問介護計画を策定することが難しい」というのがあがっております。これらが、任用要件と関連があるのかどうかは確実には分かりませんが、恐らく介護福祉士等にすることで算定がしやすくなるのではないかと推察しております。ですので、訪問介護計画の作成等の責任者は介護福祉士にお願いするような方向でよいのではないかと思います

(つづく)