訪問介護の論点4(7.5分科会)

及川委員(日本介護福祉士会副会長)
 訪問介護事業に携わる介護福祉士の立場を踏まえ発言させていただきます。現在の課題であります地域包括ケアシステムを深化させるため、また、国民が安心して在宅で生活する環境とするためには、訪問介護サービス事業所がきちんと機能することがとても重要であります。
 施設サービスと違って、24時間利用者のそばにいるわけではなく、生活の一場面にかかわり、介護サービスを展開します。そこで専門的なアセスメントやマネジメントを実施して、在宅生活をお支えするわけですから、その役割は大きいものです。
 その反面で、社会保障費の適正化を図るためには、今後介護サービスも中重度者への支援へ重点化していく必要があることや、効率化等を図ることは理解していかなければいけないと考えています。しかし、だからといって軽度者へのサービスがおろそかになってもよいということではないはずです。それを考えれば、サービス事業者の職員に対する指導や個別援助計画作成の役割を持つサービス提供責任者の責任は大きく、介護福祉士の有資格者であることが最低要件と考えます。軽度者へ提供されるサービスの質がきちんと担保されているか、生活を支える専門職としてきちんとチェックしていくことを今まで以上に求めていくことが重要だと考えております。
 論点の1つ目の生活援助につきまして、生活援助を利用される方に対するアセスメントやモニタリングについては、専門性が必要であると考えます。人員基準等の緩和については、この点も留意して検討していただきたいと思います。

大西委員(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長・高松市長)
 まず生活援助サービスにつきましては、軽度者である要支援者につきまして、平成29年4月から全ての市町村で総合事業を実施し、その中で展開をしていくということをやったところでございます。
 したがいまして、これから中重度者も含めた生活援助サービスをどういうふうにしていくのか、そのあり方につきましては、我々としては、総合事業の実施状況も十分検討した上で、慎重に検討していく必要があると考えておるところでございます。
 そういう意味で言いますと、現時点におきまして、総合事業の実施を進めていく中で、特に本市におきましても、いわゆる人員基準を緩和して生活援助に特化しました訪問型サービスAにつきましては、事業者の参入が実際ほとんど進んでいない現状にございます。したがいまして、期待するような効果が今のところは発揮できていないということでございまして、生活援助のほうだけで基準緩和をしてサービスを充実していこうと思っても、なかなか現実がすぐついてくるかどうか難しいのではないかなというのが、今の時点での感想でございます。
 ただ、方向性としては、生活援助サービスをより効率的、効果的に展開していくということは必要だと考えておりますので、その辺、現状等も十分見きわめながら進めていただきたいなと思っております。
 論点の3つ目の集合住宅におけるサービス提供の適正化についてでございます。現行の同一建物減算につきましては、その対象として事業所に隣接する敷地内に所在する建物にまで拡大はされているということでございますが、その基準が非常に曖昧でございまして、我々保険者におきまして実際判断に苦慮している例が結構ございます。
 また、サービス付き高齢者向け住宅の職員と訪問介護事業所の職員を兼務させることによりまして、実質的に常駐している職員が訪問介護を提供して、減算を回避するなどの事例も見られるところでございまして、このような状況を改善するために今、必要な報酬改定、適切な報酬の設定といったものが必要ではないかなと考えております。
 いわゆる囲い込みの問題に関しましても、本市におきましても一部不適切なサービス提供が行われている現状が見られております。その原因といたしましては、どうしてもケアマネジメントの客観性、あるいはケアマネジャーの独立性が確保されにくい状況があると伺っているところでございまして、この辺の客観性、独立性といったものが担保できるような仕組みをしっかりと構築する必要があるのではないかなと思っております。

(つづく)