訪問介護の論点8(7.5分科会)

堀田委員(慶大大学院健康マネジメント研究科教授)
 論点の1つ目に関連して2つです。
 1つ目は、今までの何人かの委員がおっしゃったことと最終的にはつながると思うのですけれども、25年度の老健事業で御紹介くだっている訪問介護のあり方と並行して行われていた介護人材の機能分化の調査というのがありまして、その結果を見ますと、訪問介護はそんなにサンプルは多くなかったのですが、訪問介護の中で生活援助にかかわるものを業務の専門性としてどう見るかという調査だったのですが、ピュアな生活援助に関しては、知識・技術をそれほど有しないという方と、基本的な知識・技術を有している方に相当するというのが8割を超えていたのです。逆に言うと、介護福祉士以上の方々がそれを担うべきだというのはとてもわずかだった。
 他方で、目に見えることが生活援助だったとしても、アセスメントを実施したり、既にお話があったように、計画作成とか、その見直しにつなげていくという介護過程の展開ということを考えていきますと、今、申し上げていた知識・技術をそれほど有しないとか、基本的な知識・技術を有している人がそれを担ってよいというお考えの訪問介護の方々というのは10%台ぐらいしかいなかったのです。
 ですので、ピュアな、本当に目に見える生活援助、それは逆に言うと、どなたでも家庭の中で行っているかもしれない。もちろん、それは暮らしを支える上で確実に大切ですが、誰でも担えるかもしれないようなものも現状の訪問介護の中には紛れ込んでいるかもしれないということが一つ言えるのですが、単純に生活援助を全部、では、それは誰でもできるもの、地域で幅広くというふうにやっていいかというと、並行して行われていた三菱総研のほうの訪問介護の検討会の中でとても興味深かったのですけれども、訪問介護にかかわる事業者さんとか団体の方々と一緒に議論しておりましたら、見かけ上生活援助ということを使いながら、先ほど申し上げたようなアセスメントをやっているという場合もあって、それが例えば退院直後とか、あるいは配偶者がなくなったとか、生活の環境がとても変わってしまったという時期には、生活援助というツールを使いながら、その方の自立に向けた方向性をどう考えるかということを展開しているのだという話があったのです。
 そういうことを考えますと、単純に生活援助を中心にということで要件をどうするかということではない、もう一つの視点をどう入れていくのか。先ほど齋藤委員から御指摘があったような、ともにする数とか、身体をとっているところもあると思うのですが、機能訓練、自立、ADLの向上という視点もあるでしょうし、それを通じてアセスメントをやっているということで見る場合もあるでしょうし、そこは丁寧な議論が必要かなと思います。
 ただ、報告書で残ったかどうか記憶がないのですが、三菱総研のほうの訪問介護のあり方の会合の中では、では、結果として今、生活援助と身体介護というのは、指定訪問介護だと単価が違うわけですけれども、実際に御本人と自立と尊厳の向上ということにつながる適時適切なケアということであれば、それは単価が分かれている必要はあるのだろうかというような議論が出されていたということも少し記憶に上ってきたところです。ですので、そのあたりの丁寧な議論が必要かなと思います。
 2つ目は、他方で、もちろん今はもしかすると専門性が必要ないかもしれない部分、ピュアの生活援助までカバーしてしまっているかもしれないところは、対象が軽度であろうと中重度の方々であろうと変わらない事実としてありそうだということも明らかになっていまして、そのときに、先ほど大西委員が総合事業についての言及もなさいましたけれども、地域の方で幅広く生活援助をカバーしていこうとしたときに、基礎的な質の担保を図っていくかというときに、参考資料の60ページあたり、後ろのほうに地域住民の参入促進が幾つか出されていますが、単純に高齢者の家庭における生活の援助ということを超えて、既に幾つかの自治体などでは、20~30時間ぐらいで子どもから高齢者まで基礎的な助け合いの知識・技術を学ぼうといった枠組みを入れているところもありますので、幅広く住民の方々が互助をしっかり担っていけるような視点からの基礎的な質の担保という考え方もあるかなと思います。


<コメント>

以前、「軽度者にこそ、プロの目を」という記事の中で、

一方、重度の方は、といえば、もちろんプロの支援は必要です。
ただ、支援の必要量の総量が増える中で、ボランティアにできることも増えます。
すなわち、ボランティアを活かす機会は、重度者の介護の場にこそある、という見方も可能かと。


というようなことを書きました。
堀田委員のボリュームのある発言の中には、この考え方につながる部分もあると思います。

(つづく)