そこで、エネルギー資源の埋蔵量を見ていきます。
前記事同様、目安としてではありますが、「世界のエネルギー統計」の数値を利用します。
石油では4割弱、天然ガスでは5割強の埋蔵量を、BRICSが占めています。
(埋蔵量は、そもそも推定ですから、それこそ「目安」でしかありませんが。)
これは相当に大きなウェイトですが、これだけで「世界のエネルギーの5割」と断定するのは、やはり無理があると思います。
「世界のエネルギー統計」には「純再生可能エネルギーによる発電量」という項目もあります。
これは、風力、太陽光、水力などによる発電で、「埋蔵型」の資源ではないので、年間発電量を使っています。
さすが大国というべきか、中国が突出しているので、BRICSで5割近くを占めることになりますが、エネルギーの性質上、自家用が多いのか、輸出量はそれほど多くありません。
どっちにしても、この分野の割合が(どこの国でも)大きくなればよいのに、とは思います。
また、原子力も、発電のエネルギー源ではあります。
ウランの埋蔵量を調べてもいいのですが、プルトニウムとして再利用が可能であったり、日本のように(主に原発関係者の責任に帰する事由のために)プルサーマルが事実上できなくなっている国があったりするので、原子力を含めて「世界のエネルギーの5割」を論じることは難しいと思います。
で、これら性質の異なるエネルギー源について、「世界のエネルギーの5割」をBRICSが占めているかどうかを判断するのは、困難というべきだろうと思います。
たとえば「天然ガスの埋蔵量はBRICSが世界の5割を占める」というのなら、ある程度の精度で計算可能ですし、実際、間違っているとはいえないでしょう。
ですが、何の前提もなく、
<BRICSはGDPもそうですが、世界のエネルギーの5割を占めております。>
というのは、GDPの件が間違っているのと同時に、エネルギーの5割の件も、あまり正確というか精密ではない表現だろうと思います。
なお、BRICSが世界全体において相当の重みをもっているのは事実と思いますし、G7だけで何でも決める、というのも無理だろうとは思います。
ただ、BRICSは、けっして一枚岩ではありません。
もともと中国とインドは領土紛争を抱えていますし、サウジアラビアとイランは対立してきました。
(G7も各国の利害に差がありますが、法の支配というか国際秩序の維持、たとえば国連憲章に違反するロシアのウクライナ侵略を批判する方向性は一致しています。)
鈴木氏のブログに
<軍事面でも実戦で明らかになっているように、BRICS諸国が西側連合に勝りつつある現状があるようです。>
とコメントした人がいたことを前記事に書きましたが、まず、BRICSは軍事同盟的な性格は持っていません。
(G7も、NATOと日米とが米国のブリッジみたいな形で接しているだけで、軍事同盟を目的とはしていないはずです。)
また、「実戦で明らかになっている」のは、ロシア軍(核兵器を除く)が前評判よりは弱体で、トルコの無人機等が効果を上げている、ということではないでしょうか。
ウクライナだけでなく、トルコの支援を受けたアゼルバイジャンに負けたアルメニアが、ロシア離れを起こしていることからも。
まあ、ロシアびいきの方々は、ロシア単独で考えると(ウクライナには勝てても)少なくとも中長期的には明るい材料に乏しいので、拡大後のBRICSに活路を見出したいのかもしれませんが、あまり誇張した表現での主張は、なんだかなあ。