G7対BRICSその1

参議院議員鈴木宗男氏の4月19日のブログには、

BRICSはGDPもそうですが、世界のエネルギーの5割を占めております。>

とあります。

 

18日の記事に

<現在、ロシア、中国、イラン等のBRICS諸国全体のGDPは、西側全体のGDPを上回っており、さらに軍事面でも実戦で明らかになっているように、BRICS諸国が西側連合に勝りつつある現状があるようです。>

とコメントした人に対してのようです。

 

実際、今年の1月から、既存のBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に、5か国(エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビアアラブ首長国連邦)が加わり、10か国体制になっています。
(アルゼンチンも加入の意向がありましたが、新大統領が方針を変更しました。)

BRICSが世界全体に占める割合が大きくなっているのは事実ですが、GDPまでG7を超えてていたかな、と疑問に思ったので、ちょっと調べてみました。

以前にG7などについてまとめた表を更新したかったというのもあります。
https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2023/05/16/220211

 

今回は、名目GDPが日独で逆転した後の数値を使いたかったので、
グローバルノート - 国際統計・国別統計専門サイト(https://www.globalnote.jp/post-1409.html
を利用しました。
元データは2023年IMFInternational Monetary Fund)統計とのこと。

人口・面積は、世界の統計(2023)総務省統計局(https://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2023al.pdf)2021年(人口は推計)です。

 


G7が44.7%、BRICSが27.0%ということで、鈴木氏の18日のブログにコメントした人は間違っていました。
やっぱりね。

鈴木氏も、それを(少なくとも明確には)否定していないし(むしろ「GDPもそうですが」と肯定している)、知らなかったのか、調べるのが面倒だったのか、G7<BRICSの印象を与えられたら何でもよかったのか。

 

まあ、いいです。
GDPだけが国力を表すものではないし、今回の主眼はそれではないし。

 

「世界のエネルギーの5割」の方ですね。

この「世界のエネルギー」というものを比較するのが難しい。
生産量や埋蔵量などについて、全ての国(または地域)別に表示しているデータが、なかなか見つかりません。
(「中東」というような大区分や、サウジアラビアのような大資源国のみのデータなら見つかります。)

なんとか、「世界のエネルギー統計」というウェブサイトにたどり着きました。
https://ja.atlasbig.com/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E7%B5%B1%E8%A8%88

ただ、これ、数値の年次がわかりません。
公的統計などと比較すると、2010年代の後半、2020年のちょっと手前ぐらいかな、という印象ですが、各国語で閲覧できるようになっているし、わかっている範囲の公的統計データなどと大きな差はなさそうなので、目安として使ってみることにします。

たとえば、年間生産量なら、こんな感じ。

 


サウジアラビアなど中東3か国が加入した効果は大きく、BRICSの生産量のウエイトは石油、天然ガスで4割を上回ります。
石炭は中国の生産量が突出して大きく、BRICSで世界の6割を超えます。
この3者の単純平均で、だいたい5割?
いや、そういうわけにはいかないでしょう(笑)

石炭については、日本を含めて発電など利用の効率化が工夫されてきてはいますが、現在では主力エネルギーから外れ、だんだんとエネルギー源としてのウエイトが下がっていくものと思われます。
石油と天然ガスについては、(地球環境のためには減らしたいところですが)まだまだ利用が維持されるでしょう。
が、この2者の状況だけで、BRICSは「世界のエネルギーの5割」と断定するのは無理があるように思います。

 

(つづく)