H30介護報酬パブコメ結果5

ADL維持等加算

ADL利得(BI利得)が0の利用者を0として計算するのは、「維持」を評価することにはならないのではないか。
ADL維持等加算は、ADL利得が多い順に、提出者の総数の上位100分の85に相当する数(その数に1未満の端数が生じたときは、これを切り上げるものとする。)の利用者について、(一)ADL利得が零より大きい利用者については1、(二)ADL利得が零の利用者については零、(三)ADL利得が零未満の利用者についてはマイナス1として、当該(一)から(三)までに定める値を合計して得た値について、「零以上であること」と規定することとしております。例えば、提出者が100人で、そのうちADL利得が零より大きい利用者が15名、零の利用者が40名、零未満の利用者が45名の場合、(一)から(三)までに定める値を合計して得た値は1×15+0×40+(-1)×25=-10となり、要件を満たしません。一方、別の評価対象期間において、提出者が100人で、そのうちADL利得が零より大きい利用者が同
様に15名であっても、零の利用者が60名、零未満の利用者が25名の場合、(一)から(三)までに定める値を合計して得た値は1×15+0×60+(-1)×5=10となり、要件を満たします。このように、ADL維持等加算は、評価対象利用期間においてADLが向上した利用者の割合が増えず、ADLが維持された(悪化が防がれた)利用者の割合のみが増えた場合でも、評価される内容となっています。

ADLの評価指標として、なぜBarthel Indexを用いるのか。
Barthel Indexは、現在、国内のみならず国際的にも汎用され、研究の蓄積があるADL指標であるとともに、介護報酬改定検証・研究委員会における調査において、通所介護事業所でもっともアセスメントに活用されているADL指標でもあったことから、ADL維持等加算において用いることとしています。

口腔

口腔衛生管理加算について、報酬引下げを行わず、口腔ケアの評価を引上げること。
口腔衛生管理加算については、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が行う口腔ケアの対象者を拡大する観点から、歯科衛生士が行う口腔ケアの回数の緩和をするとともに、当該入所者に係る口腔ケアについて介護職員へ具体的な技術的助言及び指導を行い、口腔衛生管理の充実を図るための見直しを行うこととしています。

口腔衛生管理の充実について、利用者の負担も踏まえ、現状以上に必要であるのか。
適切な口腔衛生管理により誤嚥性肺炎の減少や咀嚼機能の維持による低栄養リスクの改善等の効果が報告されているものの、歯科医師や歯科衛生士の確保が出来ず十分な口腔衛生管理が実施出来ていないとの調査結果もあります。今回の改定においては、口腔衛生管理が必要な利用者に対して口腔ケア等が提供出来るよう、口腔衛生管理に関する加算の見直しを行うこととしています。

地域区分

介護報酬の地域差について
三大都市圏では、最低賃金の上昇など採用が難しくなっており、採用経費も人件費率も高まっている傾向にあるため経営が悪化しており、もう少し地域差を設けるべきである。
地域区分は、地域間における人件費の差を勘案して、地域ごとの人件費の地域差を調整するものであり、民間事業者の賃金水準を基礎とした賃金指数に基づき設定するという原則に立ち、客観的に地域区分を設定する観点から、公務員(国家公務員又は地方公務員)の地域手当の設定に準拠する設定を行うこととしています。

介護崩壊を食い止め、介護事業所で働く全ての職員の労働条件を改善するため、介護報酬を大幅に引き上げること。
【理由】昨年12月18日に加藤厚生労働大臣と麻生財務大臣が合意した「0.54%引き上げ」を前提としたものだが、この引き上げ幅では、介護事業所で働く全ての職員の処遇改善や求められる介護サービスの向上には不十分である。
介護報酬は、社会保障として国民が受ける介護の質と量を規定するものである。医学・医療の新たな知見や介護技術の進歩を介護報酬にしっかりと反映させ、介護事業所で働く全ての職員の労働条件を改善するためには、介護報酬全体の更なる引き上げが必要である。国の責務は、要支援・要介護状態となってもすべての国民が健康で文化的な生活を営むことができる環境を整備することである。なお、介護職員の給与面の底上げをすることを目的に介護職員処遇改善加算が設定されているが、介護職員以外の職員は対象外であり、これでは不十分である。
介護崩壊を食い止め、介護事業所で働く全ての職員の労働条件が改善できるよう、国庫負担を拡大して介護報酬の大幅引き上げを行うことを改めて求める。
平成30年度介護報酬改定については、地域包括ケアシステムの推進、質の高い介護サービスの実現、多様な人材の確保と生産性の向上及び介護事業者の安定的経営の確保等の視点を踏まえ、+0.54%の改定率となりました。また、介護人材の処遇改善については、これまでも財源を確保しつつ着実に行っており、平成29年度は臨時に介護報酬改定を行い、月額1万円相当の処遇改善を実施しました。さらに、平成29年12月に閣議決定した「新しい経済政策パッケージ」に基づき、2019年10月から更なる処遇改善を行うこととしており、具体的な内容については、今後検討してまいります。

介護職員の処遇改善

介護職員処遇改善加算の見直しについて
介護職員処遇改善加算(IV)及び(V)の存続を求める。
介護職員処遇改善加算は本来、すべての事業所が取得すべきものであり、未申請の事業所のみならず、申請能力の低い事業所を切り捨てることは、加算創設の主旨に反するだけでなく、介護人材確保の路線からも逸脱している。
介護職員処遇改善加算(IV)及び(V)については、要件の一部を満たさない事業者に対し、減算された単位数での加算の取得を認める区分であることや、当該区分の取得率や報酬体系の簡素化の観点を踏まえ、廃止することとしています。その際、一定の経過措置期間を設けることとしており、その間、介護サービス事業所に対してはその旨の周知を図るとともに、より上位の区分の取得について積極的な働きかけを行うこととしています。

今期、処遇改善加算の増額はなく、報酬全体も0.54パーセントのアップにとどまり、少なくとも「2019年10月からの勤続10年以上の介護福祉士給与引き上げ(新しい政策パッケージ 内閣府)」まで具体的な介護職員の処遇改善はない。現場の人材不足は危険水域を越えているにも係わらず、なぜ1年半放置するのか。建物は立っても職員が確保できない介護保険施設の実態を見ても理解できない。一刻も早い改善策を示すべきである。
平成30年度介護報酬改定については、地域包括ケアシステムの推進、質の高い介護サービスの実現、多様な人材の確保と生産性の向上及び介護事業者の安定的経営の確保等の視点を踏まえ、+0.54%の改定率となりました。また、介護人材の処遇改善については、平成30年度の介護報酬改定を待つことなく、平成29年度に臨時に介護報酬改定を行い、月額1万円相当の処遇改善を実施しており、これについては、平成30年度以降も引き続き実施します。更なる処遇改善については、安定財源の確保が必要であることから、平成29年12月に閣議決定した「新しい経済政策パッケージ」に基づき、消費税率の10%への引上げによる財源を活用し、2019年10月から行うこととしています。

区分支給限度額

医療系介護報酬は、区分支給限度額から外すべき
【理由】訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、短期入所療養介護は、医学的な必要に応じて実施すべきであるが、区分支給限度基準額の範囲でしか介護保険給付を受けられない。これらのサービスや、区分支給限度基準額の対象外である居宅療養管理指導や介護老人保健施設介護療養型医療施設、介護医療院における介護を除く部分は医療そのものであり、医療保険の窓口負担率を大幅に引き下げて、医療保険給付に戻すべきである。少なくとも、区分支給限度に組み込まれた訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、短期入所療養介護は、区分支給限度の対象から除外すべきである。
御指摘のサービスは、あくまでも要介護認定を受けることによって利用することができる介護サービスです。このため、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、短期入所療養介護についても、区分支給限度基準額の対象とすることが必要です。

共生型サービス

「障害者が高齢者(65歳)に到達して介護保険に切り替わる際に事業所の報酬が大きく減ることは、65歳問題への対応という制度趣旨に照らし適切ではなく、概ね障害福祉制度における報酬の水準を担保する」という概要趣旨からすれば、報酬単価が大きく増加することも利用者のサービス利用や介護保険料に大きく影響することから、共生型サービスの介護報酬はもう少しきめ細かに設定すべきではないか。
今回の介護報酬改定における共生型サービスの介護報酬の設定については、報酬体系の簡素化が求められていることも踏まえ、
・本来的な介護保険事業所の基準を満たしていないため、本来の介護報酬単位と区別する、
・障害者(65歳未満)が高齢者(65歳以上)になって利用する制度が切り替わる際に事業所の報酬が大きく減ることは、65歳問題への対応という制度趣旨に照らして適切ではないことから、概ね障害報酬の水準を担保する、
という観点から、単位設定すること
「共生型サービス」は、障害福祉制度に介護保険制度の原理を導入するものです。障害者へのサービスは、一人ひとりの障害の個性によって異なります。まして介護とはまったく異なるものです。障害福祉介護保険のサービスを混同することは、サービス提供者にとっても、公的資格の誇りを否定されることであり責任のある業務が行えないことにもなります。

現場の実態を無視した「共生型サービス」の導入を撤回すべき。
共生型サービスは、これまで、65歳に達した障害者が介護保険の被保険者となった際に、使い慣れた障害福祉サービス事業所を利用できなくなるケースがあり、社会保障審議会障害者部会において、障害福祉サービス事業所が介護保険事業所になりやすくする等の見直しを行うべきとの意見が出されたことを踏まえ、引き続き同じ事業所においてサービスを利用しやすくする観点から位置付けたものです。