訪問介護の論点1(7.5分科会)

2017年7月5日 第142回社会保障審議会介護給付費分科会議事録がアップされています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000174375.html

けっこう論点が多く、どこまで記事がまとまるかわかりませんが、訪問介護について抜粋してみます。
どこを抜粋するかは私の判断ですし、色塗り(青系は注目、赤系は反対か疑問)も個人的判断です。


(三浦振興課長)
 1つ目は、生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準及び報酬について、要介護者に対する生活援助の意義を踏まえ、どう考えるか。
 2つ目、「生活援助」のみの利用状況については月31回以上の利用者が一定以上いる中で、身体介護も含めた訪問介護の報酬のあり方について、どう考えるか。
 3点目、集合住宅におけるサービス提供の適正化について、どう考えるか。
 4点目、主として身体介護を行う者と生活援助を行う者の役割分担を進めていくことが重要との意見がある中で、サービス提供責任者の役割や任用要件について、どう考えるか。
 5点目、身体介護における自立生活支援のための見守り的援助について、どう考えるか。また、生活機能向上連携加算の取得状況を踏まえ、リハビリテーション専門職の意見を踏まえた訪問介護の実施について、どう考えるか。

鈴木委員(日本医師会常任理事)
 一番上の○でございますけれども、介護保険制度の持続可能性を確保するためには生活援助の効率化は必要であると考えます。通常北欧などを見ても、軽度者はサービスの回数が少ないです。軽度者に対してサービスを全くとめてしまうのではなくて、回数を減らすことが考えられると思うのですが、サービスが減ったために自立支援を妨げることがないようにする必要があると思います。同時に、軽い人に関しては地域での受け皿づくりの取り組みも必要であると考えます。
 2つ目の○についてです。これも身体介護も含めてということですけれども、軽度者の方は回数を減らすことが考えられます。一方、一定以上の頻回訪問については、資料にもありますが、1日に算定可能な報酬の上限を設定する、あるいは1カ月当たりの定額にすることなどが考えられると思います。
 3つ目の○についてです。これは集合住宅が介護施設化しているために頻回訪問になっていると考えられますが、不適切事例の是正はぜひとも必要でありますので、一定以上の頻回訪問については、事前にかかりつけ医を含む多職種でアセスメントをしたり、保険者が個別にケアプランを点検できるようにするとともに、住所地特例のために自治体が情報を入所できないという大きな問題がありますので、住所地特例が適用されたサ高住の入居者の情報も、保険者が確認できるように保険者間での情報共有の仕組みが必要であると思います。
 4つ目の○についてです。サービス提供責任者、サ責と呼ばれているようですが、その要件から介護職員初任者研修課程修了者、いわゆる旧2級ヘルパーを廃止することは予定されていたことではありますが、まだ一定の方がいらっしゃいますので、十分な経過措置が必要だろうと思います。
 5つ目の○についてです。生活機能向上連携加算は有効であると思いますけれども、訪問リハビリか、通所リハビリと訪問介護を併用している方でないと利用ができないところがネックになっているのではないかと思いますので、それ以外の方でも医師の指示があれば、リハビリ専門職が行けるようにすることがよろしいのではないかと思います。

稲葉委員(民間介護事業推進委員会代表委員)
 まず、論点の1つ目「生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準及び報酬について、要介護者に対する生活援助の意義を踏まえ、どう考えるか」とされています。まず、訪問介護サービスは、身体介護、生活援助が現場で一体的、総合的に提供されることで、合理的に利用者の生活を支えているものであります。生活援助のみを切り出すような対応は慎重にしないと、利用者の生活基盤を揺るがし、サービスレベルの低下を招きかねないおそれがあります。
 参考資料1の3ページに老計10号が載っています。身体介護と家事援助の定義と区分を行っており、自立支援、見守りのための調理・洗濯などは、身体介護の「1-6 自立支援のための見守り的援助」と定義されています。生活援助の検討に当たっては、この老計10号で定義、区分された利用者の自立支援を目的としたサービスの考え方を基本的には尊重するべきであると考えています。
 また、以前の給付費分科会でもありましたが、低栄養状態の予防と改善ということが高齢者の自立支援として有効であるという話がありました。
 例えばヘルパーが訪問して、利用者にしっかりと食べてもらうために、ただつくるだけではなく、必要なものを必要な量、そして食べられるものをつくって提供することで、食べ方の情報も含めいろいろな情報をヘルパーは持っており、それがサービス提供責任者などを通じてケアマネジャーに情報として提供されます。そして、通所サービスなどにおける食事の提供などと合わせ継続的な視点を持つことで、医療との連携の間にも役に立つ貴重な情報になると考えております。
 一方で、老計10号ですが、作成後17年が経過しているので、改めてICFの視点や自立支援サービスの強化、介護予防の視点、医療介護連携の視点から、その定義や区分のあり方について、必要に応じて再度点検、見直しをするべきときに来ているのではないかとも思います。
 続いて、介護職員の確保についてです。介護職員の確保は困難を極めており、介護職員のマンパワーと専門性を生かすために、一部代替可能なサービスを総合的に組み合わせるということの検討はあり得るのだと思います。
 具体的には、資料1の4ページの介護保険制度の見直しに関する意見の中で、「体力的な都合等で身体介護は難しいが生活援助ならできるという介護人材も存在し、その人材の活用を図るべき」との意見があるように、そういったシニア層の協力を得やすい仕組みや緩和のあり方を議論するなど、人材確保の観点やサービス供給量の拡充といった観点を含めて考えるべきだと思います。
 訪問介護の最後ですが、論点の上から3つ目の「集合住宅におけるサービス提供の適正化について、どう考えるか」についてであります。参考資料1の44ページには、サービス付き高齢者住宅や住宅型有料老人ホームなどに関する大阪府の調査が示されています。この値がどうかということなのですが、これが全国的に通ずる話ではないと考えます。大阪府の調査内容の詳細を国として確認していただきたいと思います。例えば、サービス付き高齢者住宅や住宅型有料老人ホームにお住まいの方は、基本的には独居であります。比較の対象となっている在宅では、独居はもちろん、家族と同居の方も数多くいらっしゃいます。この資料を見た中ではデータのとり方の問題なのですが、同居であれば当然使われるサービスは、家族の介護力も働くということもありサービスの利用量は抑制されるということです。
 また、生活保護者の方がこの調査対象に占める割合などはどのようになっているのでしょうか。もしその割合が多ければ、生活保護の場合は自己負担がない分、上限枠近くまで使っているということがもしかしたら考えられるのかもしれません。これが良いとか悪いとかいうことではなく、対象の違いも合わせて調査がされるべきだと思います。
 そして、限度額の比較対象になっていない、例えば処遇改善加算などがデータ値に含まれているのか否かということも影響するのではないかと思います。調査対象となった地域、集合住宅入居者の特性などの有無を調べて、条件を合わせた上で比較をされたいと思います。そういった正確な結果を見てから、報酬について、あるいは制度について議論をしないと、いささか乱暴な議論になってしまいますので慎重に対応されるべきだと思います。
 一方で、大事なのは適正にケアマネジメントが行われているかということであり、不適正事例の是正はやはり進めるべきと感じます。

(つづく)