公共の福祉と公の秩序

多くのユダヤ人の生命を救うために本国の訓令に反してビザを大量に発給した杉原千畝氏、そして関連して根井三郎氏、小辻節三氏について、記事に書いたことがあります。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/32515749.html

ノーベル平和賞というのは、いろいろ政治的なこともあって、受賞の可否について論評することは難しいとは思いますが、今日の日本人の感覚としては、杉原氏が受賞していたとしてもおかしくない、といえるでしょう。
(ただし、死者の受賞はないのが原則なので、これから贈られるということはありません。)


ところで、自民党改憲案について過去に触れたことがあります。

自民党
十三条 全て国民は、<人>として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、<公益及び公の秩序に反しない限り、>立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。

現行憲法
十三条 すべて国民は、{個人}として尊重される。幸福追求に対する国民の権利については、{公共の福祉に反しない限り、}立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

<赤色>自民党案、{青色}は、現行憲法の表現です。

これ以外にも、現行憲法の「公共の福祉」という言葉が、自民党案では「公の秩序」などの言葉に置き換わっている箇所が複数あります。

「公の秩序」というのは、自民党がQ&A等でいくら言い訳したとしても、政治や司法に携わる人間の考え方で差が出ることがあります。

今日の(少なくとも私の)感覚では、杉原氏の行為は、(少なくとも世界全体の)「公の秩序」に反するとは思えないのですが、当時の外務省からすれば、「公の秩序」に反する、ということになるのでしょう。
(ちなみに、杉原氏は外務省を退官することになります。)

もちろんユダヤ人に限らず日本国民でない人は第13条の保護の対象にはなっていませんが、
杉原氏のような行為が「公の秩序に反する」とされる可能性があるような改憲案は、私は支持しません。