選択別姓・中間報告のまとめ1

以前の記事で触れた「婚姻制度等の見直し審議に関する中間報告及び報告の説明」
https://to403.web.fc2.com/chuukan.html

このうち、夫婦の氏(姓)についての部分を(無理やり)まとめてみました。

 

1 試案の概要と中間報告の結論

 試案としてA・B・Cの3案が示されましたが、A案を基軸にすることが相当とされています。
夫婦別姓は選択可能。その場合、子の姓を父母のどちらと同じにするか、婚姻時に決めておく)。

 

A案
・夫婦は原則同氏(同姓)、別氏(別姓)も可能。
・別氏夫婦の子に複数の子がある場合、その氏は同一とするなど、現行制度の基本的な枠組みを維持。
→現行制度の基本的な枠組みは維持しつつ夫婦別氏制を導入しようとするもの(漸進的で緩やかな制度の変更を目指すもの)。
 当面の法改正においては、このA案を基軸にすることが相当。

B案
・夫婦は原則別氏(別姓)、同氏(同姓)も可能。
・別氏夫婦の子の氏は、出生時における父母の協議による。
→B案の基底にある思想と我が国の国民の氏に関する意識との間には、いまだギャップがある。
 現段階においてこの考え方を制度化することは、時期尚早。

C案
・夫婦は同氏(同姓=現行制度を維持)。
・婚姻前の氏(姓)を自己の呼称として使用することを法律上承認する。
・この呼称は、氏ではなく、「氏に代わる個人の表示」。子に承継されることばない。
→(個人の氏に対する人格的利益を法律上保護する)夫婦別氏制の理念は後退。
 (氏とは異なる)「呼称」という概念を民法に導入すると、理論的に困難な新たな問題が生ずる。氏の理論を一層複雑、難解なものにするおそれ。
 長期的な展望に立った氏の制度して採用することは、相当でない。

 

2 試案に対する意見等

(一)選択的夫婦別氏制を導入すべきか
 ・導入すべき(大半)
  [1]女性の社会進出が進むに伴って、婚姻によって氏を改めることが社会生活上の不利益・不都合をもたらすという事態が増加してきており、これを解消すべきである、
  [2]現代社会における多様な価値観を許容する観点から、夫婦がそれぞれ別の氏を称することを希望する人々には、その道を開いてよい、
  [3]個人の氏に対する人格的利益を保護すべきである、
  [4]現行制度は、形式的には夫婦が対等な立場で氏を決定することになっているが、社会の実態は約九八%の女性が婚姻によって氏を改めており、実質的な男女不平等を生じている など
 ・消極意見(ごく少数)
  [1]夫婦同氏制は、我が国の伝統であり、社会に定着している、
  [2]夫婦別氏制は、婚姻の意義を薄れさせ、家族の秩序を維持する上で好ましくない、
  [3]夫婦別氏制の下では、子の氏の決定に関する問題が生ずる、
  [4]別氏であることを希望する人は、現実には極めて少ない、
  [5]婚姻により氏を改めることの不利益は、婚姻前の氏を通称として使用することにより、回避することができる など

 

(二)夫婦の氏の在り方
 ・B案を支持する意見(比較的多数)
   支持:氏が個人の呼称であることを重視し、氏は婚姻によっても改められないのを原則とすべき
   批判:[1]現行制度から乖離しており、国民の意識や感情に沿わない
      [2]氏の個人的性格を過度に強調している
      [3]夫婦・親子の氏が別々になるため、家族の一体感を確保する上で間題がある など
 ・A案を支持する意見(B案支持に次いで多い)(→報告では、こちらをベースに)
   支持:[1]現行制度との乖離が小さい
      [2]国民の意識は、夫婦が同氏であることが望ましいと考えている など
   批判:子が父母の一方と氏を異にすることになるため、B案に対する[3]と同様の観点
      正面から夫婦が別氏を称することを認めなくても、現行の離婚後の婚氏続称制度との均衡上、婚姻によって氏を改めた者が婚姻前の氏を呼称上の氏として称する制度とするのが相当
 ・C案を支持する意見(ごく少数)
   支持:現行の制度を維持しつつ、婚姻によって氏を改める者の社会生活上の不利益を回避することができる
   批判:[1]別氏制の理念に応えておらず、制度として不徹底である
      [2]夫婦の氏を定めなければならない根拠が薄弱である
      [3]氏と異なる呼称の制度を設けることは混乱を招く、など
 ・試案の3案とは異なる氏の類型が望ましいとする意見(相当数)
   A・Bの両案のような考え方ではなく、夫婦が婚姻時に同氏・別氏をいわば対等なものとして選択する制度にすべき

 

(三)婚姻後の夫婦の氏の転換を認めるべきか
 ・「いずれの転換も認めない」とする意見(比較的多数)
   支持:[1]転換を認めると、個人の同一性の識別という氏の社会的機能が揖なわれる
      [2]転換を認めると、婚姻の際の同氏・別氏の選択が安易に行われるおそれがある
      [3]婚姻時に選択した夫婦の氏の在り方を事後的に変更することを認める必要はない など
   批判:転換を認めないと、[1]婚姻時における選択が過度の重みを持つことになり、事実上別氏を選択することが困難になる
               [2]夫婦が氏の転換を図るため、形式的な離婚と再婚をすることを誘発するおそれがある など
 ・「別氏から同氏ヘの転換のみを認める」とする意見(相当数)
   支持:婚姻後の事情の変化により、別氏から同氏への転換を必要とする場合が生じ得るから、柔軟に対応すべき
   批判:(主としてB案を支持する立場から)同氏と別氏との間に制度上の差異を設けるべきではない
 ・「いずれの転換も認める」とする意見(相当数)
   支持:[1]選択的夫婦別氏制を導入するならば、氏について自由な選択を許容すべきである
      [2]夫婦のそれぞれの氏を次の世代に承継させるのを認める(B案の立場)のであれば、同氏夫婦についてもこれを可能にするため、別氏夫婦への転換を認めるべきである
      [3]婚姻後の社会的現境の変化により、夫婦の氏の転換を必要とする事態が生じ得る など
   批判:[1]選択的夫婦別氏制を導入ずることは、当然に氏の自由化をもたらすものではなく、両者は区別して考えるべきである
      [2]転換を認めると、個人の同一性の識別という氏の社会的機能が損なわれる
      [3]同氏夫婦となること又は別氏夫婦となることの不都合は、婚姻時において予測可能であるから、婚姻の際に選択した夫婦の氏の在り方を変更することを認める必要はない など

 

(つづく)