憲法に見る天皇の人権

明日5月3日は憲法記念日です。

こちらの記事を書いた頃か、それ以前からだったか、考えていたことがあります。


日本国憲法で、天皇の役割等については第1章に書かれていますが、天皇個人の人権についてはどうなっているのでしょうか。

第三章に、「国民の権利及び義務」について書かれています。

では、国民とは何でしょうか。天皇や皇族は含まれるのでしょうか。

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第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
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「法律」というのはこれでしょう。

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国籍法
第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。
 一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
 二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
 三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。
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http://www.moj.go.jp/MINJI/kokusekiho.html

天皇、あるいは皇族の父母が日本国民なら、子である天皇や皇族も国民ということに(この第2条第1号からは)なります。
大日本帝国憲法時代に、もしも天皇や皇族と国民とを別物として定義していたとしたら・・・それでも第3号により「国民」とされる可能性が高いと思われます。


第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

第十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

第二十三条 学問の自由は、これを保障する。

第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。

第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

ここから先は、刑事裁判などでの権利が主になり、今回のテーマに関係が薄くなるので省略します。

さて、ここまでの条文ですが、「国民」の権利として書かれている条文は灰色の地の囲みで表しています。また、「国民」に限定する表現がないもの(たとえば「何人も」というような表現)についてはピンク地の囲みにしています。

そうすると、第22条第1項に、
「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」
とありますね。

「公共の福祉に反しない限り」という条件付きではありますが、天皇や皇族が仮に国民としての権利がなかったとしても、職業選択の自由を有する、といえる余地はあるように読めます。
少なくとも、「何人も」の中には含まれるだろうから、本来は職業選択などの権利も認められるべきである。
ただし、「公共の福祉に反する限り」という条件は付いているから、
まあ、「職業選択の自由は尊重されるべきである」という感じでしょうか。

職業選択の自由」の中には、当然、特定の職業を辞める自由も含まれるでしょうから、
高齢になって、たとえば80代になって、退位する、という自由も、尊重されるべきでしょう。
少なくとも、そう考える余地はあるのではないか。
私はそう考えます。

まあ、第1章の規定もあるから、難しい問題はあるでしょうが、そのあたりのところを柔軟に、天皇や皇族が過度のストレスを感じないように配慮することが、長期的には皇位継承の安定に利するのではないかと私は考えています。