軽度者の生活援助の統計2

前記事同様、介護給付費実態調査報告(平成26年5月審査分~平成27年4月審査分)のデータを基に見ていきます。

前記事で触れたように、訪問介護利用者のうち、要介護1~2の方が占める割合は多いですし、
生活援助の訪問回数も少なくはありません。

ですが、単位数で見ると、それほど多くはありません。

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通院等乗降介助のデータが出ていなかったので、身体介護と生活援助とで見ていきますが、
その両者の合計単位数のうち、要介護1~2の生活援助は約17%に過ぎません。
単位数に単価(10円+α)を乗じて費用を算出するので、訪問介護のうち通院等乗降介助を除いた総費用額の17%と考えてよいと思います。

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介護サービス費と介護予防サービス費の合計額(ただし、償還払いが含まれないので、住宅改修費や福祉用具購入費、高額サービス費などは含まれない)は、年間で93億円余り。
そのうち、訪問介護は8.6%。さらに、それから通院等乗降介助を除いた額の17%程度が、国が除外を検討しようとしている「軽度者」(要介護1~2)の生活援助です。

通院等乗降介助を考慮しないで、
訪問介護799,167百万円×17%=135,858百万円 と計算してみます。
軽度者の生活援助を給付から除外した場合の削減額は、少なくともこの額よりは少なくなります。
読売記事(2016.1.20)では、「抑制額は年約1100億円、約30万人の利用者に影響が出る可能性」とあるので、これを基にしましょうか。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34485203.html

1100億円を要介護3の1人当たり特養年間費用3,160.8千円で割ると、34,801です。
生活援助を利用できなくなった人が重度化して、34,800人程度の人が特養に入ったとすると、この「生活援助の削減効果」はなくなる、ということになります。
影響が出るとされる約30万人のうち、わずか34,800人、11.6%の人が特養入所者となるだけで、国の計算は完全に成り立たなくなるわけです。

その11.6%の人が特養入所を希望するかどうかはわかりません。
ですが、生活援助を利用できなくなった1割強の人が重度化するということは十分考えられますし、
特養に入所しなかった(できなかった)としても、重度化により介護費用が増加することは間違いないでしょう。
単価が(相対的に)安い軽度者のサービスを削ると、単価が高い重度者が増えるのです。

もちろん、費用の問題だけでなく、サービスが利用できなくなった人々の生活の質が落ちる、という問題もあります。

(たぶん、つづく)