本人などの同意がない場合の措置

掲示板の書き込みを思い出して、ちょっと後悔していることがあります。

障害者虐待で、本人などの同意がなくても入所措置が可能か、というテーマでした。
スレ立てた公務員の方への批判コメントもあったりしました。

私の書き込みは、こんな感じで(一部修正あり)。

結論からいえば、ご本人の同意がなくても措置は可能ということになります。

行政が措置を行う際に関係者の同意が必要な場合には、
「~の同意を得て」というような法令の文言になっています。

あるいは、児童福祉法のように、親権者等の意に反する場合にはできない、というような規定が入ります。
(ただし、一時保護には、この手の制限規定がないので、強制的に保護をしている間に家庭裁判所の手続きをして、入所措置を行うことが可能。)

精神保健福祉法の場合、障害特性を考慮したためでしょうか、まず、本人同意を得た任意入院を基本とし、その後の条文で措置入院医療保護入院を規定する順番となっています。
退院請求の拒否について明示されているのは、このためではないかと推測しています。

知的障害者福祉法は、身体障害者福祉法、老人福祉法などと同様、関係者(本人も家族も)の同意が条件に入っていません。
したがって、同意がなくても措置入所を行い、また措置入所を継続することは法的には可能です。

私たち公務員には、人々の生活に影響を及ぼすような強制力を伴った権限があります。

でも、それは本来、人々の生活を守るためか、生活を向上するための最小限のもののはずで、そのため、法令できわめて限定的に制限されています。

その意味で、ねこここうむいんさんが、まだ起きるかどうか確定していない障害者ご本人との意思との対立について慎重に検討されているお気持ちは、よくわかります。

また、こういう重大案件でなくても、たとえば小規模な自治体では、自治体内で検討しても都道府県などに尋ねても納得できる答が得られない場合も(残念ながら)あり得るでしょう。

そういう人たちが、「エイヤー」と独断で走るよりは、こういう掲示板でより良い回答を探そうとすることは、ずっとマシだと思います。

ずっと書き込みから遠ざかっている人間が言うのもなんですが、公務員以外のみなさまも、ご理解いただければ幸いです。

書き込みの主旨自体は、自分でいうのも何ですが、けっこうマトモだと思っています。

で、どこを「一部修正」したかというと・・・・・・「ねこここうむいんさん」の「こ」の字がひとつ少なかったんですね(苦笑)

ねこここうむいんさん、失礼しました。
こちらをご覧になっていないと思いますが、お詫びいたします。

せっかくなので、児童福祉法の「親権者不同意」関係条文なんぞを貼り付けておきます。

児童福祉法(抄)

第27条 都道府県は、前条第一項第一号の規定による報告又は少年法第18条第項の規定による送致のあつた児童につき、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。
 一~二 略
 三 児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し、又は乳児院児童養護施設、障害児入所施設、情緒障害児短期治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること。
 四 略
2 都道府県は、肢体不自由のある児童又は重症心身障害児については、前項第三号の措置に代えて、指定医療機関に対し、これらの児童を入院させて障害児入所施設(第42条第二号に規定する医療型障害児入所施設に限る。)におけると同様な治療等を行うことを委託することができる。
3 都道府県知事は、少年法第18条第二項の規定による送致のあつた児童につき、第一項の措置を採るにあたつては、家庭裁判所の決定による指示に従わなければならない。
4 第一項第三号又は第二項の措置は、児童に親権を行う者(第47条第一項の規定により親権を行う児童福祉施設の長を除く。以下同じ。)又は未成年後見人があるときは、前項の場合を除いては、その親権を行う者又は未成年後見人の意に反して、これを採ることができない。
5~6 略

第28条 保護者が、その児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合において、第27条第一項第三号の措置を採ることが児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反するときは、都道府県は、次の各号の措置を採ることができる。
 一 保護者が親権を行う者又は未成年後見人であるときは、家庭裁判所の承認を得て、第27条第一項第三号の措置を採ること。
 二 保護者が親権を行う者又は未成年後見人でないときは、その児童を親権を行う者又は未成年後見人に引き渡すこと。ただし、その児童を親権を行う者又は未成年後見人に引き渡すことが児童の福祉のため不適当であると認めるときは、家庭裁判所の承認を得て、第27条第一項第三号の措置を採ること。
2~5 略

第33条
2 都道府県知事は、必要があると認めるときは、第27条第一項又は第二項の措置をとるに至るまで、児童相談所長をして、児童に一時保護を加えさせ、又は適当な者に、一時保護を加えることを委託させることができる。
3 前二項の規定による一時保護の期間は、当該一時保護を開始した日から二月を超えてはならない。
4 前項の規定にかかわらず、児童相談所長又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、引き続き第一項又は第二項の規定による一時保護を行うことができる。
5 前項の規定により引き続き一時保護を行うことが当該児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反する場合においては、児童相談所長又は都道府県知事が引き続き一時保護を行おうとするとき、及び引き続き一時保護を行つた後二月を経過するごとに、都道府県知事は、都道府県児童福祉審議会の意見を聴かなければならない。ただし、当該児童に係る第28条第一項第一号若しくは第二号ただし書の承認の申立て又は当該児童の親権者に係る第33条の7の規定による親権喪失若しくは親権停止の審判の請求がされている場合は、この限りでない。

第33条の7 児童又は児童以外の満二十歳に満たない者・・・の親権者に係る民法第834条本文、第834条の2第一項、第835条又は第836条の規定による親権喪失、親権停止若しくは管理権喪失の審判の請求又はこれらの審判の取消しの請求は、これらの規定に定める者のほか、児童相談所長も、これを行うことができる。