親の同意はなくても一時保護可能

児相の一時保護、親の同意不要に

TBS系(JNN)9月30日(金)15時30分配信
 虐待を受けている子どもを家族から引き離す「一時保護」を児童相談所がより積極的に行えるよう、厚生労働省は保護者の同意を原則としないなどの見直しをした新しい運営指針を全国の自治体に通知しました。

 一時保護をめぐっては、おととし、神奈川県相模原市児童相談所が、両親から虐待を受けて自ら保護を求めた男子中学生について、親の同意が得られなかったなどの理由から保護を見送り、男子生徒がその後、自殺しました。

 問題を受けて厚生労働省は、児童相談所が「一時保護」を積極的に行えるよう、運営指針を見直して全国の自治体に通知しました。具体的には、一時保護をする際の保護者の同意について、これまでの「原則として必要」から「望ましい」に表現を改めた上で、子どもの安全確保が必要な場面では「一時保護を躊躇なく行うべき」としています。(30日12:59)
最終更新:9月30日(金)19時14分
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160930-00000068-jnn-soci


相模原市児相のこと」でも触れましたが、この自殺の件については、指針よりも当該児童相談所の対応の問題である要素が強いと思います。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34596472.html

改正前の運営指針であっても、親の同意が得られなくても一時保護は可能とされています。

児童相談所運営指針>第5章一時保護(抜粋)
第1節 一時保護の目的と性格
 法第33条の規定に基づき児童相談所長又は都道府県知事等が必要と認める場合には、子どもを一時保護所に一時保護し、又は警察署、福祉事務所、児童福祉施設、里親その他児童福祉に深い理解と経験を有する適当な者(機関、法人、私人)に一時保護を委託する(以下「委託一時保護」という。)ことができる。一時保護は行政処分であり、保護者等に対する教示については、第4章第1節に示すところによる。
 なお、虐待等を受けた子どもの一時保護については、本指針に定めるほか、平成9年6月20日児発第434号「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」及び「子ども虐待対応の手引き」による。

1.一時保護の必要性
 一時保護を行う必要がある場合はおおむね次のとおりである。
(1)緊急保護
 ア 棄児、迷子、家出した子ども等現に適当な保護者又は宿所がないために緊急にその子どもを保護する必要がある場合
 イ 虐待、放任等の理由によりその子どもを家庭から一時引き離す必要がある場合(虐待を受けた子どもについて法第27条第1項第3号の措置(法第28条の規定によるものを除く)が採られた場合において、当該虐待を行った保護者が子どもの引渡し又は子どもとの面会若しくは通信を求め、かつこれを認めた場合には再び虐待が行われ、又は虐待を受けた子どもの保護に支障をきたすと認める場合を含む。)
 ウ 子どもの行動が自己又は他人の生命、身体、財産に危害を及ぼし若しくはそのおそれがある場合
(2)行動観察(略)
(3)短期入所指導(略)

2.一時保護の期間、援助の基本
(1)一時保護は子どもの行動を制限するので、その期間は一時保護の目的を達成するために要する必要最小限の期間とする。
(2)一時保護の期間は2ヶ月を超えてはならない。ただし、児童相談所長又は都道府県知事等は、必要があると認めるときは、引き続き一時保護を行うことができる。

3.一時保護の強行性
(1)一時保護は原則として子どもや保護者の同意を得て行う必要があるが、子どもをそのまま放置することが子どもの福祉を害すると認められる場合には、この限りでない。
(2)現に一時保護を加えている子どもが無断外出した場合において児童福祉上必要と認められる場合には、その子どもの同意を得なくても再び保護することができる。なお、この場合においても、子どもや保護者の同意を得るよう十分な調整を図る。
(3)一時保護は、子どもの親権を行う者又は未成年後見人の同意が得られない場合にも行うことができる。これは、一時保護が終局的な援助を行うまでの短期間のものであること等から例外的に認められているものである。なお、この場合においても親権を行う者又は未成年後見人の同意を得るよう十分な調整を図る必要がある。

第2節 一時保護所入所の手続き
1.一時保護の開始
(1)入所前の手続き
 ア 一時保護の決定は受理会議等において検討し、児童相談所長が行う。緊急の場合においても臨時の受理会議等を開いて検討する。
 イ (略)
 ウ 一時保護の決定に当たっては、原則として子どもや保護者に一時保護の理由、目的、期間、入所中の生活等について説明し同意を得て行う必要があるが、緊急保護の場合等子どもを放置することがその福祉を害すると認められる場合にはこの限りではない。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv11/01-05.html

第2節の手続き関係部分だけを読むのではなく、第1節、特に3の「一時保護の強攻性」(3)あたりも読み込んで制度の理念を真に理解していれば、相模原市のような事態にはならなかったのではないかと思います。
(そして、全国的には少なからぬ児相が保護者の同意なく一時保護に踏みきった経験があるでしょう。)

もっとも、政令市になったばかりで人材も経験も十分ではない自治体でも適切に一時保護が行えるように、という意図での指針改正なら、反対するつもりはありません。