地方紙の視点

介護保険 生活援助を軽んじるな

(2月08日(水) 信濃毎日新聞
 この春から、介護保険制度で在宅介護を支える訪問系のサービスが変わる。厚生労働省が、保険から事業者に支払われる報酬単価を見直したことによる。

 一つは、24時間地域巡回型サービスの創設だ。月決めで定額の利用料を払えば、一日に何度もホームヘルパーなどが訪問する。

 もう一つは、調理や掃除、買い物など家事を手助けする生活援助サービスについて、時間区分が見直された。

 介護の必要な人が、1人でいても住み慣れたわが家で暮らし続けられるよう在宅ケアを充実させる。とともにサービスの効率化を図る。このねらいはうなずける。

 ただ、見直しが現場の実態に合っていない面がある。長野県のように中山間地や過疎地を抱える地方の事情をくみとりきれていない。利用者が状況に応じて柔軟にサービスを使えるよう、厚労省の対応を求めたい。

 24時間対応の訪問介護は、すでに各地で取り組まれている。だが採算面などから、なかなか続かないのが現状だ。

 夜間の人繰りに苦労する一方、利用希望者はそう多くない。中山間地では移動に時間を取られる。

 早朝、深夜を問わずいつでも駆けつけてくれる―。巡回型が定着すれば、在宅介護の心強い味方となることは確かだ。人口が密集する都市部だけでなく、中山間地の事業所も採算が取れる仕組みを整える必要がある。

 生活援助の見直しにも、課題が多い。これまではサービス時間を「30分~60分」と「60分以上」で区切っていた。春以降は「20分~45分」と「45分以上」になる。

 45分間では、洗濯機を回しても干すところまでいかない。まとめてつくるおかずも1品減らさざるを得ない。スーパーが家の近くにない過疎地では、買い物の行き帰りだけで時間が足りない…。現場のヘルパーたちの意見である。

 介護給付費が膨張するなか、サービスの効率化は欠かせない。生活援助には、一部に「家政婦代わりに使っている」との批判がある。過剰な援助があれば、個別に改めるのはもちろんだ。

 ただ、利用者の多数はひとり暮らしや老老介護の世帯である。ほかに介護者はなく、生活援助が文字通り命綱となっている。

 介護保険のなかで生活援助に対するニーズは高い。けれど報酬単価などの面で軽んじられてきた。厚労省は家事支援の重要性、ヘルパーの専門性について、認識を改めてもらいたい。
http://www.shinmai.co.jp/news/20120208/KT120207ETI090009000.html


世の中には、全国紙、特に日経などでは実情がわからない場合があります。
地方紙でこそ取り上げやすい問題があります。
その一例だと思ったので、全文を紹介しました。

なお、太字強調は、引用者が行いました。