瑕疵があれば全てが無効か

介護報酬改定案によれば、居宅介護支援の運営基準減算が厳しくなります。

運営基準減算の中には、サービス担当者会議の開催に関するものもあります。

以前、実地指導とか監査とか呼ばれるものに行っていた頃、
「サービス担当者会議には追加・変更するサービス事業者だけでなく、他のサービス事業者も参加を求めること
という内容の指摘をしたことがあります。しかも複数の事業所で。

これは法令や通知を持ち出さなくても(知らなくてもよいという意味ではない)、必要性を説明することはできます。

たとえば、福祉用具貸与の品目を追加(又は変更)する場合。

福祉用具貸与事業者は当然呼びます。
○訪問サービス事業者も、自宅内での利用者の状況は把握していますし、サービス提供に影響が出る場合もありますから、参加は必要です。

では、通所サービス事業者は?


直接の関係はないように見えても、自宅での利用者の状況の変化が通所サービスのあり方に影響を与える場合はあります。
個別サービス計画の目標等の変更の可能性もあります。
また、通所サービスでの利用者の状況から、その福祉用具の必要性について意見を言うこともあり得ます。

だから、みんなで考えた方が良いプランになるでしょ?

と口頭で説明しておいて、納得を得ておいてから、文書指摘です。


でも、うっかり通所サービス事業者を呼んでいなかったからといって、「運営基準減算」という指導はしませんでした。

<関係法令・通知>

平成12年厚生省告示第25号
三十五 居宅介護支援費に係る運営基準減算の基準
 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第13条第七号、第九号から第十一号まで、第十三号及び第十四号(これらの規定を同条第十五号において準用する場合を含む。)に定める規定に適合していないこと。

平成12年老企第36号・第三
6 居宅介護支援の業務が適切に行われない場合
 注2の「別に厚生労働大臣が定める基準に該当する場合」については、二十五号告示第三十五号に規定することとしたところであるが、より具体的には次のいずれかに該当する場合に減算される。
<略>
(1)居宅サービス計画の新規作成及びその変更に当たっては、次の場合に減算されるものであること。
 [1] <略>
 [2] 当該事業所の介護支援専門員が、サービス担当者会議の開催等を行っていない場合(やむを得ない事情がある場合を除く。以下同じ。)には、当該月から当該状態が解消されるに至った月の前月まで減算する。
<以下略>

平成11年厚生省令第38号第13条
七 <略>
九 介護支援専門員は、サービス担当者会議(介護支援専門員が居宅サービス計画の作成のために居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等の担当者(以下この条において「担当者」という。)を招集して行う会議をいう。以下同じ。)の開催により、利用者の状況等に関する情報を担当者と共有するとともに、当該居宅サービス計画の原案の内容について、担当者から、専門的な見地からの意見を求めるものとする。ただし、やむを得ない理由がある場合については、担当者に対する照会等により意見を求めることができるものとする。
十 十一 十三 十四 <略>
十五 第三号から第十一号までの規定は、第十二号に規定する居宅サービス計画の変更について準用する。
十二 介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成後、居宅サービス計画の実施状況の把握(利用者についての継続的なアセスメントを含む。)を行い、必要に応じて居宅サービス計画の変更、指定居宅サービス事業者等との連絡調整その他の便宜の提供を行うものとする。

サービス担当者全員を呼ぶよう、指導はすべきです。
でも、開催のテーマに比較的関係が薄い1事業者を呼ばなかったからといって、
「サービス担当者会議の開催等を行っていない場合」
として減算を求めるのは、法令解釈に無理があるように私は思います。

これは、行政担当者の中でも、ひょっとしたら見解が分かれるかもしれません。

ですが、たとえば事業者側が一連の手順を経て訴訟を起こした場合、
行政側が敗訴する可能性はあると考えられます。

裁判になってみないとわかりませんが、個人的には、敗訴の確率の方が大きい感じがします。
サービス担当者会議の開催規定の趣旨から考えて、減算が必要なほどの損害を利用者や社会に与えているとまでは言えないので。
(もちろん、福祉用具貸与事業者など主要な関係者が参加していない場合は、全く別です。)

そういえば、別件で、こういう書き込みをしたこともあります。
たとえば居宅サービス計画の第2表に瑕疵があった(短期目標が更新されていなかった)からといって、居宅サービス計画全体が(法的に)無効になるというものではありません。
その居宅介護支援事業所が指導対象となるのは当然でしょうが、このケースで「現物給付とならない」というのは、法令解釈に無理があります。