4/27介護給付費分科会(2)

○大森分科会長 一体お金はどのくらいあるのか、私も知りたいですけれども、今、なかなかそのことは。でも、上がるような話には絶対ならないですよ。幾ら介護が重要であるからといって、この震災対応の中で私どもだけが単価が上がるという話は、恐らく通用しないと、皆さん方もそう思っておいでになるんだけれども、それぞれのお立場だとなかなか言いにくいものですから、難しいこともあるんですけれども。
 私もちょっと言葉は違いますけれども、今回、被災地に相当のお金を投与しなければいけませんので、そのことを私どもがこれから議論するとき、いつも念頭に置きながら議論するということだと私は思っています。だから、3.11の後、従来型のような議論をそのままするということは、給付費分科会もできないという気持ちは私もあるので、そのことを具体的に示すにはどうすればいいかということの知恵を出してもらうということ以外ない。介護保険制度そのものは守り通しますけれども、今回のような非常事態に対して、ここだけが単独で何かできるという話はない。
 その意味で言うと、政府全体が今回どういうふうにお考えになっていて、社会保障の御議論が進んでいるように聞いていますけれども、全体の中でどういうふうに位置付けられるかということも、いつも気にしながら議論することになるんじゃないかと思っています。(略)
 
○木間委員 (略)
 私は、前回、和光市が地域保健研究会作成の生活援助から自立を目指す生活機能向上プログラムを導入して、介護度を改善し、介護保険給付の低減を実現したことを申し上げました。本日は、北九州市が22年度のモデル事業として生活機能向上プログラムを導入し、生活機能向上サービスを提供し、訪問介護を利用する要支援者の生活機能を向上させた結果について申し上げます。
 北九州市のモデル事業の対象者は、介護予防訪問介護の生活援助を利用している要支援者です。生活機能向上サービスを受ける人と受けない人に分け、比較をしています。提供された生活機能向上サービスは、利用者の家事遂行能力や体調などに合わせて行う体操と作業療法の面から行う手作業と口腔ケアなどです。本人はセルフケアプログラムがあり実施しています。朝・昼・晩の体操や口腔ケアです。
 生活機能向上サービスの提供の前後に、体力測定、活動機能検査、家事遂行能力調査、生活健康度調査が行われています。生活機能向上サービスは、ヘルパーが週1回、1回30分、3か月行いました。生活援助と生活機能向上サービスを一体的に提供した結果を、家事遂行能力と身体機能・体力の面から見ています。生活機能向上サービスを提供された人たちは、ほぼすべての項目に改善傾向が認められました。それに対し、生活機能向上サービスを提供されなかった人たちは、低下あるいは維持の項目が多いという結果になっています。
 例えば、体格、体力、体水分量、身体活動量の測定値の中で改善が認められたのは、安静時脈拍数、握力、10mと6mの通常歩行速度、歩幅、歩数、舌圧、体内総水分量や細胞内液量等々であります。
 生活機能向上サービスの提供の前後に、この事業の評価指標の一つとして、地域保健研究会が開発した家事遂行能力尺度を用いて、掃除、洗濯、調理など家事の36項目について5段階の遂行能力ランクを調査し、解析しています。生活機能向上サービスを提供された人は、家事のすべての項目で、生活機能向上サービスを提供されなかった人たちよりも高く、遂行能力が向上していました。生活援助と並行して生活機能向上の支援を行うことによって重度化防止ができること、また生活機能向上プログラムは効率的に個別対応が可能な手法であるということも実証されました。
 この北九州モデル事業支援評価統括委員長の地域保健研究会の田中甲子先生は、軽度者の介護予防は、高齢者の自立による尊厳と介護保険制度の安定運営のかぎである。高齢者の激増に備えるために、制度化による普及・推進が早急に望まれると指摘なさっておられます。
 別の調査でありますが、慶應義塾大学の池上直己先生たちが予防給付利用者の解析結果を基に、通所介護を勧奨し、訪問介護を抑制する政策の妥当性は認められず、早期に是正する必要があると指摘しています。
 私は、先ほど池田委員がおっしゃいましたことに賛成とか反対とかではなくて、制度を改定するに当たりましては、こうした実証分析を基になさることを望みます。
 
○池田委員 日本福祉大学のK先生のデータでは、家事援助を使っていると悪くなっているというデータもあります。したがって、いろいろなデータがあるんです。だから、一つや二つでエビデンスはないので、それをきっちりと説明した方が、ちゃんと調査してトータルに比較してみた方がいいと思います。今おっしゃったことは、ある意味で一方的な一つのデータにすぎない。逆のデータもあります。
 もう一つ、予防というのは自己責任じゃないですか。何で介護保険からお金を払わなければいけないんですか。
 
○大森分科会長 今日、論争をしますか。もう一言答えたいですか。
 
○木間委員 論争はしません。池田委員に対して論争など、恐ろしくてできません。誤解を解いておきたいのです。
 私は家事援助を必要とか必要でないとかではなくて、客観的なデータがあるということを申し上げているのです。家事援助をすることによって悪化したというデータがあるということも存じております。ただ、今回の場合は、先ほど申し上げましたように、体格とか体力とか体水分量、そういう科学的な数値で示したということであります。
 それから、予防は自己責任ということは、私も高齢者でありますから体操をやって予防をいたしております。ただ、介護予防は異なります。介護予防・日常生活支援総合事業というものが今度できるわけでありますが、制度改定にあたっては、こういうデータを慎重に検討していただきたいということを申し上げておきます。