介護基準改正パブコメ結果5

7(1)生産性向上に先進的に取り組む特定施設に係る人員配置基準の特例的な柔軟化、9(1)利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会設置の義務付け

40 利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会を設置することの効果を示すべきではないか。

 第233回社会保障審議会介護給付費分科会において、介護ロボット等を導入し、その安全・有効活用のための委員会を設置している事業者では、設置していない事業者に比べ、職場環境や利用者の行動に関して良い変化を実感する割合が高いという調査結果をお示ししています。


41 利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の設置により、職員等の負担が増加し、介護サービスの質が損なわれることや介護職員の離職等に繋がるのではないか。

 委員会の開催が事業所や職員に過剰な負担とならないよう、既存の委員会との共催や複数事業所間の共同開催など、具体的な委員会の開催方法等について、通知等により示してまいります。


42 利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の設置の義務づけについて、設置を一律に求める場合、委員会設置に関する新たな加算を新設する等による報酬上の支援が必要ではないか。

 委員会の開催に対して加算を行うものではありませんが、委員会における生産性向上に資する取組の検討を踏まえ、見守り機器等のテクノロジーを導入し、生産性向上ガイドラインに基づいた業務改善を継続的に行うとともに、効果に関するデータ提出を行うことを評価する新たな加算を設けることとしています。


43 利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の設置の義務づけに関して、生産性向上という言葉は、介護現場には適していないように感じる。

 介護現場における生産性向上とは、介護ロボット等のテクノロジーを活用し、業務の改善や効率化等を進めることにより、職員の業務負担の軽減を図るとともに、業務の改善や効率化により生み出した時間を直接的なケアの業務に充て、利用者と職員が接する時間を増やすなど、介護サービスの質の向上にも繋げていくことと考えております。
 また、社会保障審議会介護給付費分科会において、委員から、「介護現場では生産性向上という言葉に対して同様の印象を抱いている方もいることから、介護現場における生産性向上の考え方について事業者・職員に適切に周知し、理解促進を図ることが重要」との御意見も頂いており、引き続き、上記の生産性向上の考え方について周知に努めてまいります。


44 特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化について、どのデータに基づいて見直しの判断がされたかが不明確である。また、当該判断が厚生労働省実施の「介護現場でテクノロジー活用に関する調査研究事業」に基づく見直しであるとする場合、実証データとしては不十分である。さらなるデータの収集を行ってから判断すべきではないか。データの収集の際には、労働者への調査も行うべきではないか。

 特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化については、令和4年度及び令和5年度に実施した「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業」の結果等を踏まえた見直し案となります。結果の概要は、第233回社会保障審議会介護給付費分科会においてお示ししており、実証では介護職員等の労働者に対してヒアリング調査も実施しており、その結果の概要もお示ししています。
 また、実際の運用に当たっては、特例的な人員配置基準が適用された施設において、労働者である職員へのヒアリング等の実施も含め、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減が適用後も継続して行われているかを把握・検証することとしております。


45 1法人の実証結果のみをもって特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化を行うことは、現場職員の負担の増加、介護サービスの質の低下が懸念され、入居者の安全を守れない事態になる恐れがあることから、反対である。

 特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化について、複数事業者・複数施設において国の実証を実施しており、当該実証では、生産性向上の取組の結果、複数事業者・複数施設において、常勤換算で3:1(要支援は10:1)の人員配置より少ない場合であっても、介護サービスの質の確保や職員の負担軽減が図られたことが確認されております。


46 特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化について、実証に参加した施設により効果の有無に差異があること等から、介護給付費分科会においても実証が不十分ではないかとの指摘もある。
 介護ロボットやICT等のテクノロジーの活用については、利用者の安全の確保、介護サービス質の確保、職員の負担軽減のために活用するべきである。本見直しは現場の実態を反映しておらず、利用者の安全や介護サービスの質の確保を損なうことや、介護職員の心身の負担が増えることが懸念される等から、反対である。

 特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化について、実証では、生産性向上の取組の結果、常勤換算で3:1(要支援は10:1)の人員配置より少ない場合であっても、介護サービスの質の確保や職員の負担軽減が図られることが確認されました。他方、人員配置の状況にばらつきがあったことや、人員配置の状況と入所者の状況や職員の属性等との間に有意な相関までは確認されなかったことから、介護給付費分科会の意見も聴いた上で、一律に人員配置基準を緩和するのではなく、一定の要件の下で、個別の施設ごとに特例的に柔軟化された人員配置基準を適用できることとする見直し案としています。
 適用に当たっては、生産性向上の取組に関する安全対策を検討した上で、テクノロジーの活用や職員間の適切な役割分担の取組等の開始後、3ヶ月以上試行(試行期間中には通常の人員配置基準を遵守すること)を行い、介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減が行われているとデータにより確認ができた場合においてのみ適用できることとしています。
 また、実際の運用に当たっては、特例的な人員配置基準が適用された施設において、職員へのヒアリング等の実施も含め、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減が適用後も継続して行われているかを把握・検証することとしております。


47 特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化について、当該柔軟化の要件として、年次有給休暇等を全て取得している事や、育児休業制度等への取組を進めている事などを確認し、職員の負担が増えないようにするべきではないか。

 特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化については、生産性向上の取組に当たっての安全対策を検討した上で、介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減が行われていることがデータにより確認ができた場合においてのみ適用できることとしています。
 職員の負担軽減が行われていることの確認に際しては、試行前後の総業務時間及び当該時間に含まれる超過勤務時間が短縮していることを確認することとしており、また、年次有給休暇の取得状況の変化についても事業者から報告をしていただくことを検討しております。詳細については、御意見を踏まえ、今後通知等により示してまいります。


48 特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化について、どういった意味があるのか。

 生産年齢人口が減少していく一方、介護需要が増大していく中で、介護人材の確保は喫緊の課題となっています。このため、介護職員の処遇改善を進めることに加え、介護ロボットやICT等のテクノロジーの導入等により、介護サービスの質を確保しつつ、職員の負担軽減に資する生産性向上の取組を推進することが重要です。
 また、現在の介護現場の状況及び将来の社会情勢の変化を考えると、介護業界全体で生産性向上の取組を進めていく必要があり、委員会の設置や加算の新設と併せて、先進的な取組を促すことが重要と考えております。
 こうした観点から、実証事業の結果等を踏まえ、先進的に生産性向上に取り組む特定施設について、一律の人員配置基準の緩和ではなく、介護サービスの質の確保や職員の負担軽減が図られた等の一定の要件の下で適用できる新たな取扱いを認めることとしております。


49 利用者の転倒や転落等への対応について、施設が賠償請求をされる場合もある。テクノロジーの活用は異常等の検知は可能であるが、実際の介護対応は職員が行う必要があるところ、こういった状況の中、特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化をすることは、テクノロジーの活用等により現場職員を減らすことにつながり、利用者の安全に関するリスクが大きくなることが懸念される。特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化については、テクノロジーの活用により利用者の安全に関するリスクが大きくなることについて、利用者等に周知をするべきではないか。

 特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化について、国の実証では、生産性向上の取組の結果、常勤換算で3:1(要支援は10:1)の人員配置より少ない場合であっても、利用者の安全が確保された上で、介護サービスの質の確保や職員の負担軽減が図られたことが確認されております。
 また、適用に当たっては、生産性向上の取組に当たっての安全対策を検討した上で、介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減が行われているとデータにより確認ができた場合においてのみ適用できるものとしています。
 あわせて、実際の運用に当たっては、特例的な人員配置基準が適用された施設において、職員へのヒアリング等の実施も含め、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減が適用後も継続して行われているかを把握・検証することとしております。


50 特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化について、利用者の安全の確保が損なわれないよう、また、職員の負担等が増えないよう、適切な運用を図る必要がある。

 特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化について、生産性向上の取組に当たっての安全対策を検討した上で、介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減が行われているとデータにより確認ができた場合においてのみ適用できるものとしており、また、適用に当たって事業者が留意すべき事項等については、今後通知等でお示しすることを予定しております。
 あわせて、実際の運用に当たっては、特例的な人員配置基準が適用された施設において、現場職員へのヒアリング等の実施も含め、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減が適用後も継続して行われているかを把握・検証することとしております。


51 介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減が行われていることの具体的な判断基準を明らかにするべきである。

 介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減が行われていることの確認については、試行前後を比較することにより、以下の事項が確認される必要があることとする予定であり、詳細については、今後通知等により示してまいります。
i 介護職員の総業務時間に占める利用者のケアに当てる時間の割合が増加していること
ii 利用者の満足度等に係る指標において、本取組による悪化が見られないこと
iii 総業務時間及び当該時間に含まれる超過勤務時間が短縮していること
iv 介護職員の心理的負担等に係る指標において、本取組による悪化が見られないこと


52 人員配置基準の特例的な柔軟化の適用を受けた施設について、本適用を受けたことに伴って介護報酬の総額が減少することがないようにすべきである。

 同様のご意見を社会保障審議会介護給付費分科会でもいただいているところであり、ご意見を踏まえ、対応してまいります。


53 今回の人員基準の緩和については、外部サービス利用型は含まれていないと捉えて良いのか。

 外部サービス利用型指定特定施設入居者生活介護については、特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化の対象とは考えておりません。

 

(つづく)