一問一答 消費者契約法改正5

問8 当該消費者の認識を考慮することによって、認知症の高齢者が事業者に勧められたために必要であると思い、大量の商品を買わされたという事例は、対象外となることはないのですか。

(答)
1.消費者にとっての通常の分量等については、[1]消費者契約の目的となるものの内容及び[2]取引条件、並びに[3]事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況及び[4]これについての当該消費者の認識を総合的に考慮した上で判断されるため、当該消費者の認識を考慮しても、それだけで認知症の高齢者が大量の商品を買わされたという事例が対象外となるわけではありません。

2.例えば、既に同級生と連絡を取れず疎遠になっている認知症の高齢者が、当該消費者の生活の状況からは客観的に存在していないにもかかわらず、何十人もの同級生が遊びに来ると思い込んだ上で、大量の食材を購入した事例においては、そもそも客観的に存在していない生活の状況についての当該消費者の認識を観念することはできません。したがって、この場合は、当該消費者にとっての通常の分量等を判断するに当たって、当該消費者の認識は考慮されないことから、通常は過量な内容の消費者契約に当たることとなると考えられます。


問9 過量な内容の消費者契約の取消しが認められるためには、事業者が過量な内容の消費者契約に当たることを知っていたことが要件とされているのはなぜですか。
(答)
1.過量な内容の消費者契約の取消しは、合理的な判断をすることができない事情がある消費者に対し、その事情につけ込んでこのような契約を締結させるという事業者の行為の悪質性に着目したものです。
2.そして、事業者が過量な内容の消費者契約であることを知らなければ、事業者が消費者の事情につけ込んだとはいえず、事業者の行為に取消しを認めるまでの悪質性はないことから、事業者の認識を要件としています。
(注)なお、消費者委員会の答申(平成28年1月7日)の別添「消費者契約法専門調査会報告書」では、以下の記載があり、事業者の認識があることを取消しの要件とすることとされています(下線は消費者庁で付したものです)。

第2 速やかに法改正を行うべき内容を含む論点
2.合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型
 事業者が、消費者に対して、過量契約(事業者から受ける物品、権利、役務等の給付がその日常生活において通常必要とされる分量、回数又は期間を著しく超える契約)に当たること及び当該消費者に当該過量契約の締結を必要とする特別の事情がないことを知りながら、当該過量契約の締結について勧誘し、それによって当該過量契約を締結させたような場合に、意思表示の取消しを認める規定を新たに設けることとする。


(おそらく、つづく)