一問一答 消費者契約法改正10

<取消権の行使期間>
問19 取消権の短期の行使期間を伸長する必要性はどのようなものですか。

(答)
1.不当な勧誘を受けて契約を締結し、改正前の消費者契約法の取消権の行使期間である6か月間を経過してしまう消費者が一定数存在しています(注)。

(注)消費者庁実施(平成27年9月28日から10月13日まで)の「消費生活相談員に対するアンケート調査」において、アンケートに回答した消費生活相談員(984 名)の約35%が「騙されて契約していたことに気付いたときから6か月以上経っていた」相談を、約12%が「不退去・監禁(退去妨害)から解放されてから6か月以上経っていた」相談を、それぞれ受けた経験があるという結果となっています。また、当該アンケートにおいては、すぐに相談してこなかった理由として、以下のような回答がなされています。
・事業者と交渉しているうちに6か月経過してしまった。
・相談先が分からずに6か月経過してしまった。
・事業者が怖くてこれ以上関わりたくないとして6か月経過してしまった。

2.そこで、不当な勧誘を受けた消費者をできる限り救済するため、取消権の行使期間を6か月間から1年間に伸長することとしたものです。


問20 取消権の行使期間のうち、短期の行使期間について1年間に伸長するだけでは不十分であり、より長い期間に伸長すべきではないのですか。

(答)
1.今回の改正に先立って調査審議をした消費者委員会の消費者契約法専門調査会においては、消費者契約法は、民法の定める場合よりも取消しを広く認めるものであり、契約の一方当事者である事業者の負担を考慮すれば早期に法律関係を確定させる要請もあることに鑑みると、伸長をするとしても最低限度とすることが適当であるとされ、「取消権の行使期間のうち、短期の行使期間を1年間に伸長する」ことについてコンセンサスが得られたため、消費者委員会からその旨の答申がなされました。

2.なお、権利の行使期間を1年に限定している規定の例として、特定商取引法における過量販売の解除権の行使期間等(注1)も参考としています。

(注1)行使期間を1年に限定している規定として、特定商取引法第9条の2第2項以外にも商品先物取引法第117条第2項、金融商品取引法第27条の21 などがある。

3.以上のことなど(注2)を考慮し、短期の行使期間を1年間に伸長するものとしたものです。
(注2)一般的には、実家を離れている家族なども、年に1回程度は帰省するものと考えられ、取消権の行使期間を1年間に伸長しておけば、帰省の際に、家族が消費者被害に気付いて消費生活センターに相談しやすくなることも想定されます。

(参考)権利行使の期間を1年に限定している規定

特定商取引に関する法律(昭和五十一年六月四日法律第五十七号)
(通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買契約等の申込みの撤回等)
第九条の二 申込者等は、次に掲げる契約に該当する売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又は売買契約若しくは役務提供契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、申込者等に当該契約の締結を必要とする特別の事情があつたときは、この限りでない。
一・二 (略)
2 前項の規定による権利は、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結の時から一年以内に行使しなければならない。
3 (略)

商品先物取引法(昭和二十五年法律第二百三十九号)
(仮装取引等をした者の損害賠償責任)
第百十七条 前条の規定に違反した者は、当該違反行為により形成された対価の額又は約定価格等により当該商品市場における取引又はその委託をした者が当該取引又は委託につき受けた損害を賠償する責めに任ずる。
2 前項の規定による賠償の請求権は、請求権者が前条の規定に違反する行為があつたことを知つた時から一年間又は当該行為があつた時から三年間これを行わないときは、時効によつて消滅する。

金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)
(公開買付けに係る違反行為による賠償請求権の時効)
第二十七条の二十一 第二十七条の十七第一項の規定による請求権及び第二十七条の十八第二項の適用がある場合における同条第一項の規定による請求権は、請求権者が当該違反を知つた時又は相当な注意をもつて知ることができる時から一年間、これを行わないときは、時効によつて消滅する。当該公開買付けに係る公開買付期間の末日の翌日から起算して五年間、これを行わないときも、また、同様とする。
2 前条第二項の適用がある場合における同条第一項の規定による請求権は、請求権者が公開買付開始公告等、公開買付届出書、公開買付説明書又は対質問回答報告書のうちに重要な事項について虚偽の記載若しくは表示があり、又は記載若しくは表示すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けていることを知つた時又は相当な注意をもつて知ることができる時から一年間、これを行わないときは、時効によつて消滅する。当該公開買付けに係る公開買付期間の末日の翌日から起算して五年間、
これを行わないときも、また、同様とする。

(たぶん、つづく)