民法改正4・詐欺又は強迫、意思表示

<改正前>

(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の三者に対抗することができない。


<改正後>

(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない三者に対抗することができない。


↑これも「明文化」かもしれません。
「事実を知っていた」だけでなく、「事実を知ろうと思えば知ることができた」ときにも範囲を広げたり、
三者の保護について「善意」(事実を知らない)だけでなく、「過失がない」ことも要件に加えています。



<改正前>

隔地者に対する意思表示)
第九十七条 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
2 隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

<改正後>

(意思表示の効力発生時期等
第九十七条 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
3 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。


↑もともとは、離れたところにいる人物に手紙などを送った場合のことを想定していた条文ではなかったかと思います。つまり、AさんがBさんに通知文を郵送したとき、(Aさんが投函したときではなく)Bさんが受け取ったときから効力が発生しますよ、また投函した後にAさんの身に何かあったとしても効力は妨げられませんよ、ということで。
改正後は、離れたところにいるかどうかに関わらず、一般的な意思表示の効力についての条文としています。また、相手方が正当な理由なく通知の到達を拒否した場合には、通常は届くであろう時期に届いたものとみなされるようになります。極端にいえば、郵便配達人を途中で殺したとしても、その郵便が普通配達されるときに届いたものとみなされる、ということです。
なお、改正前の第2項は第3項となり、おそらくは表意者が認知症などが進んだ場合をも想定して改正されるのではないかと思われます。

(たぶん、つづく)