民法改正8・代理権消滅、無権代理人

<改正前>

(代理権消滅後の表見代理
第百十二条 代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。


<改正後>

 (代理権消滅後の表見代理
第百十二条 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。


↑改正前は骨格だけかいてあったのを、改正により「わかりやすく」明確にする、という意図かもしれません。
でも、「わかりやすく」なっていない、という見方もあるかもしれません(笑)
「善意」というのは、(少なくとも民法などの業界では)「知らないこと」を意味するので、代理権が消滅したことを知らなかった人、かつ、その知らなかったことについて落ち度がなかった人などについては保護されるべき、という考え方なのでしょう。



<改正前>

無権代理人の責任)
第百十七条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。


<改正後>

無権代理人の責任)
第百十七条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
 一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
 二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
 三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。


↑第1項については、表から書くか裏から書くかというような違いがあるだけで、改正前も改正後もおなじことを言っているのでしょう。
第2項は、箇条書きするか(改正後)、文章の中に入れ込むか(改正前)、という形式上の違い、のようですが、第2号ただし書き(自己に代理権がないことを知っていたときの例外規定)については、改正後にだけ明示されています。

(たぶん、週末にでもつづく)