民法改正9・取消

<改正前>

(取消権者)
第百二十条 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2 詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。


<改正後>

(取消権者)
第百二十条 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2 錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。


制限行為能力者が他の制限行為能力者法定代理人となることがある場合を想定した改正が、第1項。
第2項は、錯誤の追加。(そのまんま、で、解説にもコメントにもなっていません・・・)



<改正前>

(取消しの効果)
第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。


<改正後>

(取消しの効果)
第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。

(原状回復の義務)
第百二十一条の二 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
2 前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
3 第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。


↑取り消された行為は、最初から無効だったとみなされる、だから(たとえば)もらったものは返してね、ということのようですが・・・
改正前のただし書きの考え方(制限行為能力者)は、追加された第121条の2第3項の下線部分(意思能力を有しなかった者)に残っています。それ以外に、その行為が無効であることを知らなかった者なども、同様に「現に利益を受けている限度において」返還の義務を負う、と明示されました。
そうですね、たとえば知らずに食べてしまった場合、残っているものを返せばよい、という感じでしょうか。

(つづく)