民法改正7・双方代理、表見代理

<改正前>

(自己契約及び双方代理)
第百八条 同一の法律行為について、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。


<改正後>

(自己契約及び双方代理等)
第百八条 同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
2 前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。


↑AさんとBさんが交渉や取引するような場合、Aさんの代理人、Bさんの代理人の両方をCさんが引き受けるような場合の規定です。
改正前は、双方の代理人にはなれない、としています。
改正後は、代理権を持たない者がした行為とみなします。
似ているようですが、改正後の方が明確、ということでしょうか。
例外規定(債務の履行、AさんCさんとも許諾した行為)は変更ありません。

そして、依頼人代理人との利益相反の場合も同様、とする考え方が、第2項で追加されます。



<改正前>

(代理権授与の表示による表見代理
第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。


<改正後>

(代理権授与の表示による表見代理等)
第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。


↑これも第2項の追加です。
甲さんが乙さんに代理権を与えたことを第三者(たとえば丙さん)に対して表示した場合、代理権の範囲内で乙さんがしたことについては甲さんが責任を負うのは当然です(改正前の第109条、改正後の同条第1項)。
それに加えて、(代理権の範囲外の行為でも)丙さんが代理権の範囲内の行為と信ずべき正当な理由がある場合は、甲さんが責任を負いますよ、と。
どんな場合でしょうね。たとえば、甲さんが表示した・・・委任状の書き方がまずくて誤解が生じるような場合でしょうか。



<改正前>

(権限外の行為の表見代理
百十条 前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。


<改正後>

(権限外の行為の表見代理
百十条 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。


↑これは、前条(第109条)で第2項が追加されたための、まあ、機械的な変更です。

(いつになるかわからないが、つづく)