特養待機者が急減?

<特養>待機者が急減 「軽度」除外策、介護難民増加か

毎日新聞 6月30日(木)21時39分配信

 52万人が入所待ちしていた「特別養護老人ホーム」の待機者が、各地で大幅に減ったことがわかった。埼玉県で4割、北九州市で3割、東京都で2割弱など毎日新聞が取材した10自治体ですべて減っていた。軽度の要介護者の入所制限や利用者負担の引き上げなど、政府の介護費抑制策が原因とみられる。一方、要介護度が低くても徘徊(はいかい)がある人らが宙に浮いており、施設関係者らは「介護難民」が増えたと指摘している。

 特養ホームは建設時に公的支援があるため公共性が強く、低所得者や家族のいない人を優先的に受け入れている。希望者が多く、入所まで数年待つことも珍しくない。

 だが特養ホームで作る東京都高齢者福祉施設協議会が今年1~2月、457施設に調査したところ(242施設回答、回収率53%)、2013年と15年で1施設あたりの平均待機者数は17・7%減っていた。

 都の待機者減が明らかになるのは初めて。待機者数を調べている自治体に毎日新聞が聞き取ると、13~16年ごろにかけて埼玉県42%▽北九州市30%▽神戸市27%▽横浜市16%▽岡山市13%▽兵庫県姫路市11%▽高松市11%▽広島市9%▽長崎県5%--と軒並み減っていた。

 協議会は原因に▽要介護1、2の人が昨年4月から原則、入所できなくなった▽有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅が激増した▽特養の自己負担額が高くなった--をあげる。西岡修会長は「要介護度が低くても世話の大変な人の行き場がなくなった」という。中部地方の女性(60)の母(84)は認知症だが要介護2で、特養に入れる見込みはない。一切家事ができず1人にはしておけない母を「どこに入れるというのか」と悩む。

 厚生労働省高齢者支援課は「要介護3以上に(入所を)『重点化』したのは限られた資源を真に必要な人に使ってもらうためだ」と説明した。【斎藤義彦、榊真理子】

 伊藤周平・鹿児島大学法科大学院教授(社会保障法)の話 待機者減は深刻な実態を示している。自己負担の引き上げで家族の負担は重くなり、無届け施設に行かざるを得ない人も増えるだろう。介護ニーズがある人の切り捨てで、「介護棄民」を生む。厚労省は介護サービスの抑制を繰り返しており、国は公費負担を増やす必要がある。
(以下略)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160630-00000098-mai-soci


<特養>待機の実態調査へ 待機者急減 整備抑制の可能性も

毎日新聞 7月2日(土)8時15分配信

 52万人とされていた特別養護老人ホームの入所待機者が全国各地で急減している問題で、厚生労働省は特養待機者の実態調査をすることを決めた。要介護1、2の軽度者を除外した結果、待機者が減っている実態を今秋までにまとめる。結果次第では、費用のかかる特養の整備が抑制される可能性もある。

 厚労省高齢者支援課などによると、待機者数や特養ホーム入所の優先度、申込時期、所得の程度などについて、都道府県を通じ全特養ホームを調べる。一部の自治体では既に調査が進んでいる。

 複数の特養に入所を申し込む人もいるため、同一人物かどうかチェックして、希望者の実数に近づける。「優先度」では入所の必要性の度合いや、他の施設での対応が可能かどうかを調べる。国として「優先度が低い」と判断した人数分は特養の整備対象から除外するねらいがある。

 厚労省は、2014年時点の待機者が52.4万人との調査をまとめ、要介護3以上の重度者で在宅の15.3万人を「緊急に入所が必要」と判断した。これに基づき、安倍政権が打ち出した「介護離職ゼロ」で、20年代初頭までに12万人分の施設・在宅サービスを整備するとしている。このうち特養を何人分整備するかは決まっていない。

 高齢者支援課は、「待機者が減ったとはいえゼロになるわけではない。特養は依然、人気が高いとは認識している」とする一方、「大きく減ったとわかれば、それだけ整備するのかという話になるかもしれない」と話し、結果によっては特養の整備を進めない可能性を示唆した。
(以下略)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160702-00000003-mai-soci


記事では、入所待機者の減少の原因について、

・軽度(要介護1~2)の要介護者の入所制限
・利用者負担の引き上げ

など、政府の介護費抑制策の結果と推測しています。

それを否定はしませんが、

・入所待機者数の推計方法は同じか(複数施設申込者の存在等)
・地域によっては施設の需給バランスが変わって来つつあるのではないか

ということも気になります。

それはそれとして、根本的な問題として・・・・・・

施設サービスであろうが在宅サービスであろうが、要介護度でサービスの必要性を判断することには限界があります。

以前から言っていることですが、
要介護度というのは、介護の手間についての量的な目安であって、必要なサービスを質的に規定するものではありません。
<参考記事>
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34505530.html

だから、たとえば要介護5で介護量(時間)は多くても家族がそれほど負担に感じない場合もあるし、
要介護2で認知症や本人の性格等により家族にとって耐え難い場合もあります。