地域単価差を拡大する必要があるか

以前、保険者別に介護保険の認定者1人当たりの各サービス利用額を出したことがあります。

具体的には、「介護保険事業状況報告 月報(暫定版)」の平成22年3月から23年2月までのデータを元に、要介護(支援)認定者1人当たり給付額を算出しました。

今回、介護報酬改定案で示された新しい級地区分を元に、上記のデータを集計してみました。

(新)級地別1人当たり介護保険サービス利用額と全国平均との比較
http://www.jupiter.sannet.ne.jp/to403/tokushuu/kaitei/kyuuchihi.html

なお、級地が異なる市町村からなる広域連合(福岡県介護保険広域連合)の数値は除外しています。

リンク先の表で、青塗りがあるのは、その級地の全自治体が全国平均以上。
水色は、大半の自治体が全国平均以上。
赤は、全自治体が全国平均未満。
ピンクは、大半の自治体が全国平均未満です。

1級地から3級地にかけては、訪問サービス(居宅療養管理指導や福祉用具関係を含む)が多いのが顕著です。
なお、訪問リハビリは自治体の規模に関係なく供給が少ない地域が多いと思われ、比較は難しいかもしれません。

大都市圏が少ないのは、通所、短期入所、グループホーム、特養、老健などです。
地域密着型サービスは、その自治体の意向が反映しやすい面がありますが、小規模多機能型居宅介護も意外に大都市圏が少ない印象です。

6級地、7級地というあたりは自治体数が多く、それほど極端な傾向は出ていませんが、通所、短期入所、特養、老健が全国平均よりは多くなっています。

居宅介護(介護予防)支援はそれほど差がありませんね。

全国平均との比較というのは、相対的な傾向しかわからず、これだけで断定するのは危険です。
ただ、各サービスの利用率(普及率)から見れば、今回の改定案ほど級地差をつけることが必要か、疑問を感じます。

大都市圏で、通所、短期入所、施設の利用が少なめなのは、報酬単価が低いというよりも、ハコモノ整備に費用がかかる(特に地価、賃借料)からではないかと推測できます。

6級地や7級地でそれらのサービス利用が多いのは、逆に訪問系の供給が少ないからという見方もできますし、他人に家に入ってこられる抵抗感の差とも考えられます。
ですが、介護保険スタート前後、あるいはそれより以前から施設整備を促進してきた自治体が多いのも事実です。

大都市圏の自治体が施設整備をサボっていたというつもりはありませんが、乏しい財政をやりくりして特養敷地を提供したり、独自の補助金を支出したりしてきた地方の小規模自治体は、けっして少なくありません(まあ、土地代は、今回の級地格差どころではなくレベル差がありますが)。

難しい問題ではあります。
オリンピックの誘致には力を入れているのに、「何が贅沢かといえば、まず福祉」といって特養整備を抑制する首長が当選するのも、それは有権者の選択で、他の自治体の住民が批判すべきではないかもしれません。

ですが、介護報酬の級地単価に差をつけるだけでは解消できない問題があるのも、また事実です。