ノーベル賞と、社員の発明の対価

ことしのノーベル物理学賞は、赤崎勇さん、天野浩さん、中村修二さんの3人が受賞と発表されました。

青色LEDについての受賞ですが、以下、各メディアの報道や、ウィキペディアその他の情報をまとめると、
赤崎さん、天野さんの「師弟コンビ」が基礎を開発し、中村さんが大きく実用化に貢献した、というところでしょうか。

中村さんについては、特許権や発明の対価を巡って、かって在籍した企業との訴訟を起こしたことでも有名です。
その件については、高裁で和解となりましたが、地裁で認められた対価の額よりも大幅に減額された和解案となったこともあり、中村さんは日本の司法についても批判的だったようです。

なお、中村さんの現在の国籍はアメリカ合衆国です。
(ちなみに、2008年に同じ賞を受けた南部陽一郎さんも、受賞時点では米国籍です。)

現在、従業者の発明の権利関係については、いろいろな議論があります。

社員の発明、特許は企業に 産業界が報酬ルールに理解
日本経済新聞 2014/9/4 0:24)

 特許庁は企業の従業員が発明した特許について、条件付きで企業に帰属させる方向で検討に入った。いまは発明した従業員が特許を持つが、企業の設備や同僚の協力なしに発明するのは難しいためだ。ただ従業員に報酬を支払う新ルールを整備し、企業が発明者に報いることを条件とする。

(略)

 いまの特許法だと発明の取り決めがなくても構わないが、その場合は報酬額をめぐって訴訟になる可能性がある。2001年から青色発光ダイオードの発明で争った中村修二氏のケースでは、一審が200億円の支払いを企業に命じ、最後は8億円で落ち着いた。

 特許庁が13年に実施したアンケートでは、発明に対する報酬などの取り決めがある中小企業は76%にとどまる。事前に報酬のルールを定めておけば、企業にとってリスク低下につながる。

 今後は報酬額をどう定めるかが焦点になる。従業員が報酬を求める権利をなくして企業が特許を持つ制度にすると、「何らかの損害賠償請求がおきる可能性もある」(京大の山本敬三教授)。従業員も納得する報酬の算定ルールを特許庁が指針などで示せば、訴訟を避ける効果がある。

 一定の基準を満たす企業だけが特許を持つよう規制する案もあるが、すべての企業の規則を政府が調べるのは現実的ではないとの意見がある。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS03H1X_T00C14A9EE8000/


難しい問題だろうとは思います。

中村さんも、高額の研究費の支出を即決した先代社長に対しては感謝を示しているとの報道があります。

ただ、どういう経緯があったにせよ、中村さんが(南部さんも)外国籍で研究を続けているという現実があります。

企業が研究に金をつぎ込むことも、才能ある日本人がが(なるべくなら)国内で研究を続けることも、どちらも阻害することがないような、そういう環境整備がなされれば、と思います。

もっとも、財界のトップあたりに、「企業が欲張りすぎると研究者の海外流失を促してかえって損になる」というような認識がどの程度あるのか、危惧を感じないでもありません。

ああ、せっかくのおめでたいニュースに、無粋なことを書いてしまいました。

青色LEDの恩恵を被っている現代人の一人としては、受賞が決まった3人の方にも、中村さんの訴訟の相手方企業を含む関係団体の方々にも、感謝せざるを得ない立場であることはもちろんです。