津波と園児送迎バスの判断

園児送迎バス訴訟、園側に1億7千万賠償命じる


 東日本大震災で、宮城県石巻市の私立「日和幼稚園」の送迎バスが津波に巻き込まれた事故を巡り、死亡した園児4人の両親が園側を相手取り、2億6689万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、仙台地裁であった。

 斉木教朗裁判長は「元園長が情報収集義務を怠った結果、高台から海側にバスを出発させ、津波被災を招いた。安全配慮義務違反による損害賠償責任がある」として、1億7664万円の支払いを命じた。大きな揺れが約3分続いたことなどから「津波は容易に予見できた」と判断した。

 訴えられたのは、同幼稚園を運営していた学校法人「長谷川学院」と当時の園長。震災の避難誘導を巡り、管理者の責任を問う訴訟で判決が出るのは初めて。

 判決によると、送迎バスは、地震発生から約15分たった2011年3月11日午後3時頃、園児12人を乗せ、高台の幼稚園から海側に向けて出発。7人を降ろした後、門脇小学校にいったん避難した後、園に戻る途中で津波に巻き込まれて横転、火災に遭って、園児5人と添乗していた女性が死亡した。運転手は被害を逃れ、幼稚園は津波を受けなかったが、今年3月、休園した。

 訴訟の最大の争点は、バスが津波に巻き込まれることを予見できたかどうかだった。

 園側は「予測不可能な異常な津波で引き起こされた不可抗力による事故」と主張していたが、判決は「最大震度6弱の揺れが約3分も続いており、地震震源地などによっては巨大な津波に襲われるかもしれないことは容易に予想され、ラジオや防災無線を正確に聴くべきだった」と判断。「報道では宮城県に6メートルの津波が予想されており、高台の幼稚園にとどまるきっかけとなる程度の津波の危険性を予見することは可能だった」と退けた。
(2013年9月17日11時46分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866918/news/20130917-OYT1T00294.htm?from=popin


痛ましい事件で、各紙で記事になっています。
現場の位置関係も複数のサイトにありますが、たとえばこちら。
http://memory.ever.jp/tsunami/higeki_hiyori.html


これもまた17日の読売新聞より抜粋。なお、太字強調は引用者が行いました。

 判決によると、日和幼稚園(宮城県石巻市)には元々、海側へ向かう第2便と、内陸方面の第3便の送迎ルートがあった。しかし事故当時、両便の園児は同じバスに乗り、海側に住む7人が降ろされた後、残った第3便の園児5人が死亡した。震災前から現場の判断で、2便と3便の一本化が始まっていた。しかし、保護者に対する説明はなかった。

 これとは別に、園児18人を乗せて海側に向かった送迎バスは、運転手がラジオで津波警報が出ていることを聞き、園へ引き返して無事だった。「園の対応の悪さが引き起こした人災では」。遺族たちは園側への不信感を募らせていった。
(略)
 法廷で、バスを出発させた理由について「みぞれが降る中、不安におびえている園児を一刻も早く親元に帰したかった」などと語った元園長。判決は「誤った判断を正当化する理由にならない」と一蹴した。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20130917-OYT8T00835.htm?from=popin


園の防災マニュアルでは「高台にある園で待機」となっていたのに、マニュアル自体を職員には配布していなかった、という報道もあります。
ネット上では、当然の判決とする意見が多いようですが、意外に(少なくとも私にとっては意外に)園側擁護の声もあったりします。

でも、ここでは、その議論には触れずに、別便の運転手が自主的に引き返して園児18人が無事だった、ということに注目してみたいと思います。

つまり、園長を含めた管理者側の対応に不備があったとしても、個人の判断で助かる命があるということ。

(後から考えれば、ではありますが)当然のこととはいえ最善の判断ができた人は、そうでない人と比べて何が違うか。
なぜ、その判断ができたのか。

それを今後に生かすことができれば、亡くなったお子さんたちも、その親御さんたちも、いくらかでも救われるような気がします。