感染保育士の虚偽答弁

感染保育士の出勤、園側が隠し保健所調査行われず…複数の園児らの感染判明
読売新聞オンライン 9/22(水) 5:00配信

 大阪市此花区の私立認可保育園が、新型コロナウイルスに感染した保育士に対し、保健所の調査に出勤していたことを隠すよう指示していたことがわかった。園では保健所による濃厚接触者の調査が行われず、その後複数の園児らの感染が判明した。市などが経緯を調べている。

 市や園の説明によると、保育士は8月23日朝から午後4時まで園で勤務し、帰宅後に発熱。翌24日にコロナの感染が判明した。

 ところが、報告を受けた園長らは、保育士に23日は出勤していなかったことにするよう指示。保健所は、感染者の発症2日前以降の行動を基に濃厚接触者を調べるが、保育士が土日で休みだった21、22日を含めて出勤していないと居住先の保健所に説明したため、園は調査の対象外となった。

 園では、27日に別の保育士の感染が判明。同日から9月1日まで臨時休園したが、その後園児2人の感染も判明した。それぞれの感染経路は不明という。

 園関係者から指摘があり、園長が10日、保育士に虚偽申告させたことを市に報告し、問題が発覚した。

 厚生労働省は、保育園で感染者が出た場合、濃厚接触者が特定されるまで臨時休園するよう求めている。

 園長は読売新聞の取材に「休園は保護者への影響が大きく、避けたかった。反省している」と話した。

 改正感染症法には、保健所の調査に虚偽の説明をする行為に罰則規定がある。
最終更新:9/22(水) 21:30
https://news.yahoo.co.jp/articles/7ace2d411f668908da62dec1308e2a9dff1fca5e

 


感染症法など、この種の法令に基づいた保健所業務の中で、何が困るって、虚偽答弁ほどマズイものはないでしょう。
「答えられません」という答弁拒否よりも、たぶん罪が重い。
この場合、「罪」というのは、倫理的、というより感染症防止という目的に対して、というような意味で、法的な罰則のことではありません。

 

では、法的な罰則は、といえば・・・

 

********************

改正後の感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

第八十一条 第十五条第八項の規定(略)による命令を受けた者が、第十五条第一項若しくは第二項の規定(略)による当該職員の質問に対して正当な理由がなく答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又は正当な理由がなくこれらの規定による当該職員の調査(略)を拒み、妨げ若しくは忌避したときは、三十万円以下の過料に処する。


感染症の発生の状況、動向及び原因の調査)
第十五条 都道府県知事は、感染症の発生を予防し、又は感染症の発生の状況、動向及び原因を明らかにするため必要があると認めるときは、当該職員に一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症若しくは新型インフルエンザ等感染症の患者、疑似症患者若しくは無症状病原体保有者、新感染症の所見がある者又は感染症を人に感染させるおそれがある動物若しくはその死体の所有者若しくは管理者その他の関係者に質問させ、又は必要な調査をさせることができる。
2~7 略
8 都道府県知事又は厚生労働大臣は、一類感染症、二類感染症若しくは新型インフルエンザ等感染症の患者又は新感染症の所見がある者(以下この項において「特定患者等」という。)が第一項又は第二項の規定による当該職員の質問又は必要な調査に対して正当な理由がなく協力しない場合において、感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要があると認めるときは、その特定患者等に対し、当該質問又は必要な調査(略)に応ずべきことを命ずることができる。

<参考>

https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2021/02/07/160511

********************

 


第15条第1項や第8項の「新型インフルエンザ等感染症」には「新型コロナウイルス感染症」が含まれるので、第81条の罰則規定が適用されるようにも思えますが、条文をよく読むと、


・第15条第1項では質問調査権について定め、
・その質問に対して正当な理由がなく協力しない場合に、応ずべきことを命ずることができる

 

という構造になっています。

では、第1項の質問に対し、任意で応じるふりをして虚偽の答弁をした場合はどうか、というのが今回の保育園の問題。

第81条を素直に読むと、第15条第8項の命令が出されていないと、虚偽答弁であっても罰則(30万円以下の過料)は適用されない、というように思われます。

 

う~ん、これはおかしくないかなあ。
虚偽答弁を指示した園長は、たとえば感染した児童の保護者から民事上の責任を追及されることは(因果関係によっては)あり得るのでしょうが。