生活援助中心型をめぐる誤解

訪問介護の生活援助中心型サービスについては、要介護者の在宅生活を支える柱のひとつでありながら、なにかと誤解を受けることがあるようです。
 

「同居家族がいる場合、生活援助は原則不可」

これはまあ、誤解とまではいえないかもしれません。
 


介護保険法施行規則第5条
 法第8条第2項の厚生労働省令で定める日常生活上の世話は、入浴、排せつ、食事等の介護、調理、洗濯、掃除等の家事(居宅要介護者・・・が単身の世帯に属するため又は<その同居している家族等の障害、疾病等のため、これらの者が自ら行うことが困難な家事であって、居宅要介護者の日常生活上必要なものとする>・・・。)、生活等に関する相談及び助言その他の居宅要介護者に必要な日常生活上の世話とする。


< >内をどう読むか、ということで、それを「例外」というなら、それ以外は「原則不可」というように。

ただ、私はこの< >内の理念は、省令を作った人々、運用してきた人々の想いはどうであれ、
・同居家族ができる家事は必要性が低いから算定しない。
・同居家族も行うことが難しい場合には算定できる。
というだけだと思っています。

つまり、「実行不可」(禁止)ではなく、必要性が低いから「算定不可」
それも、「生活援助が算定不可」ではなく、「生活援助中心型が算定不可」。

「え? どう違うの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが。

実際には、たとえば日中独居などの場合、
家族が休日や夜間などに行いやすい掃除、買い物などの必要性は低く、
調理など、要介護者本人の生活の維持に直結している行為については、それよりも高いような印象を持っています。
もちろん、どちらも「例外」(笑)はあるでしょう。
 

もうひとつ。
介護支援専門員実務研修受講試験の受験資格について。

訪問介護の)生活援助は直接的な対人援助業務ではないため実務経験として認められない」

え?

まあ、こういう誤解が生じた理由として考えられるのは、介護保険法施行規則第113条の2各号の読み方でしょうか。



一 医師、・・・社会福祉士介護福祉士・・・が、その資格に基づき当該資格に係る業務に従事した期間
二 イ又はロに掲げる者が、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の日常生活の自立に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行う業務・・・その他これに準ずる業務に従事した期間
 イ~ロ 略
三 イ又はロに掲げる者であって、社会福祉法第19条第1項各号のいずれかに該当するもの又は相談援助の業務に関する基礎的な研修を修了する等により相談援助の業務を行うために必要な知識及び技術を修得したものと認められるもの(次号において「社会福祉主事任用資格者等」という。)が、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき<入浴、排せつ、食事等の介護>を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行う業務(次号において「介護等の業務」という。)に従事した期間
 イ 老人福祉施設・・・その他これらに準ずる施設の従業者
 ロ 老人福祉法・・・に規定する老人居宅介護等事業、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律・・・に規定する居宅介護、・・・重度訪問介護、・・・同行援護、・・・行動援護を行う事業その他これらに準ずる事業の従事者又はこれに準ずる者
四 前号イ又はロに掲げる者であって、社会福祉主事任用資格者等でないものが、介護等の業務に従事した期間


まず、訪問介護に従事したのが介護福祉士である場合には、第1号にあるように、
「その資格に基づき当該資格に係る業務に従事」となりますから、
身体介護中心型であろうが生活援助中心型であろうが、疑いなく実務経験の期間となります。

では、第3号、あるいは第4号でいう<入浴、排せつ、食事等の介護>は、どうでしょうか。

私は、これを訪問介護の費用算定上の告示にある「身体介護中心型」に限定するのは、あまりにも矮小な読み方であると思います。

つまり、生活援助中心型も含めた訪問介護などによる対人援助全体を指す、という方が、妥当であると。

介護支援専門員が関わる居宅サービス計画には、生活援助を含めて位置づけますし、ヘルパーとして生活援助を行った経験が介護支援専門員としての業務に役立たないとは到底思えません。

何より、(「介護」の定義はともかく、としても)
「直接的な対人援助業務」に生活援助が含まれない
という不見識にはあきれるばかりです。

どうも、介護支援専門員実務研修について都道府県から委託を受けた機関がアップしている資料の中の一文らしいのですが・・・

研修内容は大丈夫でしょうか???