雑損控除の対象資産4

第2 9 雑損控除の対象となる資産(業務の用に供する貸付不動産)
問 アパート1棟を貸し付けて不動産収入を得ていましたが、大震災によりその一部が損壊しました。この場合、このアパートについて生じた損失は雑損控除の対象となりますか。

(答)
 不動産所得を生ずべき「事業」とはいえない「業務」の用に供される貸付不動産について、災害による損失が生じた場合には、その損失額は雑損控除の対象となりますが、その損失額のすべてを不動産所得の金額の計算上の必要経費に算入することも認められます。
 したがって、事業以外の業務の用に供される資産(以下「業務用資産」といいます。)の損失については、
[1] 雑損控除額の計算の基礎となる損失の金額は時価で計算した金額であること
[2] 雑損控除額の計算上、所得金額の合計額の10%相当額などの適用下限額があること
[3] 不動産所得の金額の計算上必要経費に算入される損失の金額は、取得費等を基礎として計算し、不動産所得の金額又は雑所得の金額を限度とすること
などを考慮し、雑損控除を適用するか不動産所得の金額の計算上必要経費に算入するかについて、いずれか有利な方を選択することができます。
 業務用資産の資産本体の損失金額を不動産所得の金額の計算上必要経費に算入している場合には、原状回復費用(資本的支出部分を除きます。)も必要経費に算入することになり、雑損控除の適用を受けている場合には、災害関連支出の金額も雑損控除の対象とされることとなります。したがって、その後に支出するアパートに係る修繕費の金額は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできません。
 また、雑損控除の適用を受ける場合は、住宅について、損失額の合理的な計算方法による計算が認められていることから、住宅用に貸し付けられているアパートの損失額についても損失額の合理的な計算方法により計算して差し支えありません。
(注)アパートの貸付けが事業的な規模により行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかにより判定しますが、その判定が困難な場合は、おおむね10室貸し付けている場合は事業的な規模の貸付けと考えます。

【法令等】
所法51[4]、72、所基通26-9



10 適用対象者(非居住者)
問 雑損控除は、非居住者にも適用がありますか。

(答)
 所得税法では、「居住者」とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、居住者以外の個人を「非居住者」といいます。
 総合課税の対象となる国内源泉所得を有する非居住者については、国内にある資産について生じた損失について雑損控除の対象となります。したがって、大震災によりその者の生活に通常必要な資産につき生じた損失の金額は、雑損控除の対象となります。

【法令等】
所法165、所令292[1]十六