利用者側へのペナルティ

介護保険などで、不正を行った事業者や施設にペナルティが課せられるのはご存知の方も多いでしょう。
指定(許可)取消などの他、報酬返還(場合によっては4割の割増)という金銭上のペナルティもあります。

知られていないかもしれませんが、実は、利用者側にもペナルティがあります。

介護保険法の関係しそうな条文を見ていきます。



第22条第1項
 
偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた者があるときは、市町村は、その者からその給付の価額の全部又は一部を徴収することができる。

第23条 市町村は、保険給付に関して必要があると認めるときは、当該保険給付を受ける者・・・に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を求め、若しくは依頼し、又は当該職員に質問若しくは照会をさせることができる。

第24条第2項
 厚生労働大臣又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、介護給付等を受けた被保険者又は被保険者であった者に対し、当該介護給付等に係る居宅サービス等・・・の内容に関し、報告を命じ、又は当該職員に質問させることができる。

第202条第1項
 市町村は、被保険者の資格、保険給付及び保険料に関して必要があると認めるときは、被保険者、第一号被保険者の配偶者若しくは第一号被保険者の属する世帯の世帯主その他その世帯に属する者又はこれらであった者に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を命じ、又は当該職員に質問させることができる。


つまり、たとえば要介護認定を偽って受けて(本当はできるのに、できないふりをするとか)、介護保険の給付を受けた場合には、その不正給付の金額相当について徴収できる、ということです。

また、その証拠をつかむため、報告を求めたり、調査したりする権限が市町村にはあります。
厚生労働省都道府県も調査可能な場合があります。



第144条第1項
 市町村が徴収する保険料その他この法律の規定による徴収金は、地方自治法第231条の3第3項に規定する法律で定める歳入とする。
 
第203条
 市町村は、保険給付及び保険料に関して必要があると認めるときは、被保険者、第一号被保険者の配偶者若しくは第一号被保険者の属する世帯の世帯主その他その世帯に属する者の資産若しくは収入の状況又は被保険者に対する老齢等年金給付の支給状況につき、郵便局その他の官公署若しくは年金保険者に対し必要な文書の閲覧若しくは資料の提供を求め、又は銀行、信託会社その他の機関若しくは被保険者の雇用主その他の関係人に報告を求めることができる。


この辺の条文はわかりにくいと思いますが、
先に説明した不正給付の徴収金は、税金の強制徴収権と同様で、裁判を起こさなくても、財産差押えなどの滞納処分ができるという規定です。

そのために、銀行預金や給料なども調査できるということになっています。


第208条
 介護給付等を受けた者が、第24条第2項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による当該職員の質問に対して、答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたときは、30万円以下の罰金に処する。

第214条第3項
 市町村は、条例で、被保険者、第一号被保険者の配偶者若しくは第一号被保険者の属する世帯の世帯主その他その世帯に属する者又はこれらであった者が正当な理由なしに、第202条第1項の規定により文書その他の物件の提出若しくは提示を命ぜられてこれに従わず、又は同項の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたときは、10万円以下の過料を科する規定を設けることができる。
 
同条第4項
 市町村は、条例で、偽りその他不正の行為により保険料その他この法律の規定による徴収金(納付金及び第百五十七条第一項に規定する延滞金を除く。)の徴収を免れた者に対し、その徴収を免れた金額の5倍に相当する金額以下の過料を科する規定を設けることができる。

ということで、質問に答えなかったり、嘘をついた場合には、罰金や過料を取られる場合があります。
さらに、不正で逃れようとした場合には、最大5倍のペナルティもあり得ます。

要介護認定制度に、問題がないとはいいません。
ですが、不正は結局は得にならない、と私は思います。
 
なお、障害者自立支援法にも、よく似た規定はありますので、念のため。