「軽度者はずし」に対する論文

「らっきょう亭 沖藤典子ブログ」の2011年5月17日の記事から、一部(というより大部分)引用します。


 
 軽度者の生活援助の利用額
 それでは、軽度者は介護費用をどの位使っているのでしょうか。
訪問介護利用額は、費用の10.5%といわれ、そのうち軽度者の生活援助利用額は、総費用の5%程度。概算3.000億円にも満たないのです。
(7.7兆円-約8,000億円(利用者負担額)))×0.105×0.372のです。
約4割の利用者が、全体の5%の給付費を使っている。約3.000億円。これが、無駄遣い多く、廃用症候群を招いているというのは、国民として納得できるでしょうか。
 財源を節約するのは非常に大切なことです。しかし、このことは軽度の生活援助利用者のみに課せられることではありません。医療や重度者も含めた全体の費用節減の話になっていないことに、審議の公平性に危惧を抱きます。老後の「安心の一本道」を通すために介護保険を大事に使うのは当然ですが、その方向性が必ずしも公平、透明に示されているとは思えないのです。ある政策への誘導として、軽度利用者をバッシングしているのなら、審議会の品位が問われます。

 心強い論文
 最近、この軽度者はずしを批判する非常に興味深い論文を読みました。
 慶応義塾大学医学部医療政策・管理学教室、池上直己教授、「軽度者への訪問介護サービスは虚弱化を促進するのか~日本とデンマークでの実証検討から~」(介護保険情報 2011.3)です。
 先生は「サービス利用別の悪化の割合は、通所介護利用者は37.3%、訪問介護利用者では20.9%であった」と、発表しました。まとめにおいてはこう述べております。

 通所介護を勧奨し、訪問介護を抑制する政策の妥当性は認められず、早期に是正する必要がある。そもそも週1回1~2時間程度の訪問介護で廃用性症候群が進むとは考えにくく、逆に改善を目標とするなら、短期集中的なリハビリテーションを医療サービスとして提供した方が効果的といえよう」
 さらに、さらにデンマークでの実証研究においても、訪問介護を受けた方が機能低下していない」と述べています。
 
 人生のQOLを
 軽度で推移して老いを全うする方が、中・重度になって長期間利用するよりも、人生全体において使う費用は少ないのではとも考えます。人生の質(QOL)にとってもいいことです。委員の中からは執拗に「軽度者への生活援助のエビデンス」といわれてきましたが、多く人たちは、数字では実証できませんでした。しかし、日常の生活では感じていました。科学の目で検証してくださったことを大変ありがたく思います。
http://okifuji.exblog.jp/15559401/
 


 
(文字の強調等は、引用者が行いました。)
該当論文は、石橋智昭、山田ゆかり、池上直己3氏の共同執筆となっているようですが、
ネット上では、沖藤氏のブログ以外では(私が調べた限りでは、ですが)内容について紹介されていないようです。
介護保険情報」3月号をご覧になった方、いらっしゃいますか?