介護保険法の概要(1)

介護保険法について


第一章 総則(第一条―第八条の二)


 制度の理念や用語の定義などが書かれています。
 他の章にも見られますが、「厚生労働省令で定める期間」のように、詳細は政令や省令などで規定されているものが多数あります。介護保険法の場合、「政令」という場合は介護保険法施行令(以下「施行令」といいます。)を、「省令」という場合は介護保険法施行規則(以下「施行規則」といいます。)を指すことが多いです。
(そうでない場合もあります。)

 第3条第1項により、市町村(以下、特別区を含みます。)が介護保険を行うこと、同条第2項により特別会計を設けることが規定されています。それで、介護保険で「保険者」と呼ぶときは、市町村(介護保険担当課)を指します。
 第5条第1項で、国は、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるよう保健医療福祉サービスを提供する体制の確保に関する施策その他必要な各般の措置を講じることとされています。
 同条第2項で、都道府県は、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるように、必要な助言及び適切な援助をすることとされています。

 介護保険のサービスが利用できる人は次のいずれかです(要介護・要支援のレベルによって利用できないサービスもあります)。
・要介護(要介護1~要介護5)か要支援(要支援1・要支援2)と認定された65歳以上の人
・加齢を原因とする特定疾病により要介護か要支援と認定された40歳以上65歳未満の人
 特定疾病は、施行令第2条で規定されている16疾病です(いわゆる「難病」の「特定疾患」と混同する人がいますが、別物です)。
 特定疾病に該当しない40歳以上65歳未満の人は、障害福祉サービス(障害者自立支援法)など、必要に応じて他の制度を利用することになります。

 第8条、第8条の2で、介護保険のサービスについて定義されています。

○広い意味の在宅サービス
 1A:居宅サービス
 1B:介護予防サービス
 2A:地域密着型サービス
 2B:介護予防地域密着型サービス
 3A:居宅介護支援
 4B:介護予防支援

 記号・番号は便宜上のものです。
 1と3は都道府県が指定などの権限を持っています(平成24年4月からは、政令市や中核市については、市に委譲)。
 2と4は市町村に権限があります。
 Aは要介護者、Bは要支援者のためのサービスです。
 1と2は直接的な介護サービスなど、3と4は、サービス計画(ケアプラン)の作成や調整などのサービスです。

 なお、これらのサービスが使える在宅(居宅)については、有料老人ホーム・軽費老人ホーム(ケアハウスなど)・養護老人ホームの居室を含みます。
 他に、住宅改修費も介護保険から給付されます。これも、要支援者に対する給付は介護予防住宅改修費と呼ばれます。

○施設サービス(介護保険施設
 介護老人福祉施設(特養)、介護老人保健施設老健)、介護療養型医療施設(療養型)

 他にもグループホームなど施設的なサービスがありますが、介護保険施設と定義づけられているのは、この3種類だけです。
 特養は老人福祉法の特別養護老人ホームとして定義づけられていて、介護保険法で「指定介護老人福祉施設」として指定する構造になっています。同様に、療養型は医療法上の療養病床などを「指定介護療養型医療施設」として指定したものです。
 老健は、介護保険法が始まるまでは老人保健法に根拠がありましたが、現在は介護保険法にしか根拠がないので、頭に「指定」は付きません。
 なお、療養型に関する条文については、平成24年3月末限りで一応廃止が決まっていますが、平成30年3月末までは、なおその効力を有することとなっています。


第二章 被保険者(第九条―第十三条


 介護保険に入る人(被保険者)について規定されています。
 1号被保険者(市町村内に住所を有する65歳以上の全員)と、2号被保険者(同じく40歳以上65歳未満の医療保険加入者)です。
 「40歳以上65歳未満で、医療保険に加入していない人」というのは、ほぼ「生活保護の被保護者」と考えてよいでしょう。生活保護を受けると国民健康保険(以下「国保」といいます。)には加入できなくなるので。ただし、例外的に、国保以外の医療保険に加入している被保護者もあります。
 被保護者で「40歳以上65歳未満で、医療保険に加入していない人」は、生活保護の介護扶助により、必要に応じて介護保険と同様の給付を受けることとなります(この場合、俗に「みなし2号」とか「3号被保険者」と呼ばれることがあります)。

 また、住所地特例という制度があります(第13条関係)。
 介護保険は、元気な高齢者からも要介護者・要支援者からも同じように保険料を集めて、サービスが必要な人に給付する制度です。ですから、他の市町村から介護保険施設に入所して施設に住所を移す人が多くなると、施設の所在地の介護保険財政の負担が重くなります。
 そこで、次の施設に入るときに住所を移す人は、元の住所地の市町村が引き続き保険者となります。
 (例:A市→B市の特養に入所→C町の特養に入所・・・その都度、住民票を動かしても、A市の被保険者のまま。)
※住所地特例対象施設:
 1)介護保険施設
 2)特定施設(有料老人ホーム<注>・養護老人ホーム軽費老人ホーム<ケアハウスなど>)
 3)養護老人ホーム(2の特定施設でない施設も含む)
<注:有料老人ホームのうち、高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条第1項の登録を受けた高齢者向けの賃貸住宅で、特定施設入居者生活介護の指定を受けていないものは除く。>


第三章 介護認定審査会(第十四条―第十七条)


 介護保険サービスが利用できる要介護者・要支援者の認定を行う審査会について規定している章です。
 詳細は施行規則で規定され、具体的なことは各市町村の条例等で定められています。