介護保険法の概要(2)

第四章 保険給付

 第一節 通則(第十八条―第二十六条)

 保険給付全体に関わるルールが規定されています。主なものは次のとおりです。
1)他制度の給付が優先する場合があります(労災等)。
2)交通事故など、第三者の行為で介護サービスが必要になった場合は、被保険者に代わって加害者に対する損害賠償請求権を市町村が取得します。
3)偽りなど不正に保険給付を受けた者に対する不正利得の徴収権や、それに加担した医師などの連帯納付について規定されています。
4)市町村は、事業者・施設の不正利得には、4割のペナルティを上乗せして徴収することができます。
5)市町村は、給付を受けた被保険者、事業者、施設等に文書の提出を求めたり、質問することができます(第23条)。
6)国や都道府県も、事業者や施設等に帳簿書類等の提出を求めたり、質問することができます(第24条関係)。
7)保険給付を受ける権利は譲り渡したり差し押さえしたりできません。

 第二節 認定(第二十七条―第三十九条)

 要介護認定と要支援認定、それぞれの更新認定、区分変更認定などについて規定されています。
 どの認定も、
1)被保険者が市町村に申請し、
2)市町村職員が調査を行い(新規認定以外は市町村が委託した介護保険施設や居宅介護支援事業所などの介護支援専門員(以下「ケアマネ」と略します。)が行う場合があります。)、
3)被保険者の主治医に市町村が意見書の提出を依頼し、
4)2のデータをコンピュータで判定した一次判定結果と、それに反映されていない調査員の特記事項と、3の主治医意見書とにより二次判定を行います。

 認定は申請から30日以内に行うこととされています。期限内にできない場合には、その理由等を申請者に通知する必要があります。
 なお、認定は申請日に遡って有効となります(更新認定の場合には、前の期限の翌日から)。

 第三節 介護給付(第四十条―第五十一条の四)

 居宅サービス等の費用は、厚生労働大臣が定める基準(告示)により定められています。福祉系のサービスについては、一定の条件の下で事業者が割り引くことも可能です。
 その費用のうち、9割が介護保険から給付されます。ただし、食費や短期入所の居住費(ホテルコスト)など、給付から除外されているものもあります。
 理念的には、利用者が事業者に全額支払って、後で利用者が市町村に9割相当額を請求する(償還払い)のが原則です。
 実際には、一定の条件の下で、利用者が1割だけ事業者に支払い、9割相当額を事業者が国民健康保険連合会(国保連)を通じて市町村に請求する、というのが一般的です。9割が現物のサービスとして給付される、という意味で、現物給付と呼ばれます。

※現物給付のための条件の主なもの
 1)ケアプランの作成等について依頼する居宅介護支援事業所を、利用者が市町村に届け出ていて、そのケアプランに位置づけられているサービスを利用した場合
 2)利用者がケアプランを自己作成する旨を市町村に届け出ていて、そのケアプランに位置づけられているサービスを利用した場合
 3)小規模多機能型居宅介護を利用することを利用者が市町村に届け出ていて、その事業所のケアマネが作ったケアプランに位置づけられているサービスを利用した場合(小規模多機能型居宅介護の利用者が利用できる居宅サービスは限定されているが、訪問看護などは利用可能)
 4)居宅療養管理指導など、居宅介護支援事業所が管理するケアプランに位置づけられていなくても現物給付できるサービスの場合

 地域密着型サービスも、同じような仕組みです。
 なお、居宅介護支援と介護予防支援には、実質的に利用者負担がないのが原則です。

 居宅サービスと地域密着型サービスについては、居宅療養管理指導など一部のサービスや一部の加算を除いて、要介護度によって支給限度額が設定されています(ただし、金額ではなく「単位」で設定。大都市圏以外では1単位=10円。大都市圏では、サービス種類によって10円以上の単価が設定されています。)。
 その限度額を超えた部分については、9割の給付はなく、全額利用者負担となります。

 施設サービスも理念的には償還払いですが、実質的には利用者が直接支払うのは1割負担で、9割は現物給付となります。
 ただし、食費や施設の居住費など、給付から除外されているものもあります。

 これらの費用のうち、その月の利用者負担が高額になった場合には、高額介護サービス費として限度額(所得等の状況によって、37,200円~15,000円)を超える部分が市町村から返金されます。高額医療合算介護サービス費というものもあります。

 施設や短期入所などの食費や居住費については、低所得者に対して特定入所者介護サービス費が給付される場合があります。これも、実質的に現物給付化することが可能です。

 住宅改修費や福祉用具購入費は償還払いが一般的ですが、「受領委任払」という方法を採って現物給付化している市町村もあります。
 住宅改修費の限度額は、その被保険者につき20万円です(その9割の18万円が実給付可能額。ただし、転居した場合、要介護度が3ランク以上悪化した場合には、それまでの給付額はリセットされます。)。
 福祉用具購入費の限度額は、各年度10万円です(その9割の9万円が実給付可能額)。

 その他、特例として、要介護認定申請日以前のサービス利用や、都道府県が指定した事業所以外の事業所(市町村が認めた基準該当事業所など)のサービスに対する給付、災害その他の場合に利用者負担を1割より減らせる規定などもあります。

 第四節 予防給付(第五十二条―第六十一条の四)

 予防給付も、「居宅介護支援」が「介護予防支援」になる程度で、介護給付とほぼ同様の規定です。
 ただし、介護予防サービスと介護予防地域密着型サービスについては、ケアプランに位置づけられているサービスを利用するのが原則で、位置づけられていないサービスは償還払いの対象にもならなくなります(介護予防居宅療養管理指導など、計画への位置づけが義務づけられていないサービスを除く)。

 第五節 市町村特別給付(第六十二条)

 介護給付、予防給付の他に、市町村が条例で定めれば特別給付を行うことができます(行っていない市町村が多いと思います。)

 第六節 保険給付の制限等(第六十三条―第六十九条)

 監獄等に入っている間は介護保険からの給付はされません。
 故意や重過失等で要介護等になった被保険者には、市町村は給付を行わないことができます。
 介護保険料を滞納した場合には、その期間や状況によって、給付に制限を受けることがあります。