黒田東彦氏vs鈴木宗男氏

日本維新の会参議院議員鈴木宗男氏の8月21日のブログより。

 

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 前日本銀行総裁黒田東彦氏が講演で「ロシア経済に『将来はない』」と述べている記事に目がとまる。正確を期すために全文紹介したい。

 

 日本銀行前総裁の黒田東彦・政策研究大学院大特任教授が20日、世界経済をテーマに京都市内で講演した。ウクライナ侵略を続けるロシアの経済について「将来はなく、無視すべき状況だ」とし、日本政府や企業が出資する露極東サハリン沖の石油・天然ガス開発事業からも「撤退した方がいい」との考えを示した。
 黒田氏は、日本の天然ガスの輸入先の多くが豪州や東南アジアだと指摘し、「ロシアとの関りは薄い。なぜ撤退を決めないのか分からない」と語った。
 黒田氏は講演後、読売新聞などのインタビューに応じた。日銀総裁に就任時に「2年程度」での実現を掲げた「持続的安定的な物価上昇率2%」が達成できなかったことについて、「デフレマインドを払拭できなかったことが大きかった」と振り返った。(21日読売新聞朝刊4面)

 

 物価上昇率2%をぶち上げながら実行できなかった黒田氏の話であるので、どこまでロシアのことを理解しているのか疑わしい。
 現在、天然ガスはオーストラリアから35.8%、マレーシアから13.6%、カタールから12.1%、アメリカから9.5%、ロシアから8.8%輸入している。
 石油はサウジアラビアから40%、UAEアラブ首長国連邦)34.8%、クウェート8.5%、カタール7.4%、ロシア3.7%である。
 ロシアからのエネルギーの占める割合は1割を超える。これを簡単に「撤退した方がいい」というのは「木を見て森を見ず」の話ではないか。

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(色付き強調は私が行いました。)

 

この黒田氏についての読売記事を読んだとき、私も疑問に思いました。
ロシア経済に将来はないかどうかは議論があると思いますが、サハリン沖の日本権益を手放したとしたら、中国など他の国が占めるだけで、ロシア制裁に結びつくかどうか疑わしいですし、エネルギーの供給先の選択肢は多い方がよいのは確か。
ロシアのウクライナ侵略が開始された時点の欧州諸国に比べて、日本のエネルギーのロシア依存度が低いのは事実でしょうが、仮に撤退するにしても、日本ではなくロシア側の責任であるということが主張できるようにしておくことが望ましいでしょう。

 

まあ、こういう黒田氏のような人が、アベノミクスに大きく関わっていたのだなあ、という・・・ちょっと残念感のようなものもあります。

 

それはそれとして、鈴木宗男氏の計算はおかしくないですか?
ロシア依存度について、天然ガスの8.8%と、石油の3.7%を足して「ロシアからのエネルギーの占める割合は1割を超える」はないでしょう。

8.8%+3.7%=12.5%>1割 ?
そんな足し算が許されるのなら、合計も天然ガス100%+石油100%=200% となるでしょ?

 

以下は、資源エネルギー庁の2022年度版(2021年度の値)から拾った数値です。

 

 

わずかながら国内調達分もありますし、鈴木氏の数値とは0.1%ほど差があるものもありますが、まあ誤差の範囲として。

エネルギー自給率や依存度を考えるには、たとえば天然ガス分を石油換算にするとか工夫が必要です。
が、面倒なので(笑)
仮に、天然ガスと石油の合計が同程度としたら、(8.8%+3.6%)/2=6.2% となります。
鈴木氏の値を使った場合でも、6.25%→6.3%。

天然ガスと石油の割合によって違いが出ても、8.6%から3.6%(または3.7%)の間となるはずです。

 

つまり、「ロシアからのエネルギーの占める割合は1割を超える」という鈴木氏の主張は虚偽、
控え目にいっても「ミスリーディングを誘う表現」です。