2024介護報酬パブコメ案

訪問介護の基本報酬
 2%台の減額になっているのはおかしい。介護給付費等実態調査で収支差率が+7.8%となったことを理由にしているようであるが、この数字は一般の訪問介護事業所の実態を反映していないのではないか。有効回答率は42.2%で、コロナ禍で経済的にも人員的にも比較的余裕のある事業所の回答率が高く、そうでない事業所の回答率が低かった可能性がある。
 今回の調査結果を採用するにしても、同一建物減算算定ありの事業所は9.9%と高く、算定なしの事業者は6.7%にとどまっている。これは訪問看護の同減算算定なしの6.0%と似たレベルで、訪問リハビリテーションの同減算算定なしの9.1%よりも明確に低い。また、障害福祉サービスの居宅介護は収支差率6.9%であるが、基本報酬は減額になっていない。訪問介護の減額は異常である。
 なお、新設の介護職員等処遇改善加算は最上位の加算で245/1000と高率ではあるが、統合される既存の処遇改善関係の加算は全て最上位算定の場合で計224/1000程度である。一見、2.1%(21/1000)アップのようであるが、それまでの所定単位数に対して乗じて算定するものであるため、基本報酬の落込み(他のほとんどの加算が基本報酬に定率を乗じて算出するものであることに留意)により、介護職員等処遇改善加算は1.5%余の増収効果しかない。基本報酬や他の加算の減収が2.3%余と推計され、事業所全体では0.8%程度の減収となることが予測される(以上、令和4年度介護給付費実態統計の数値から一般的な事業所について推計)。
 また、訪問介護は人件費の占める割合だけでなく、訪問用自動車の運用コストが占める割合も大きい。ガソリン代、車両の点検、修理や更新費用等、全て収支差率の調査時点よりも上昇している。こんな報酬改定では、移動にコストがかかる一般の訪問介護事業所は廃業が増えるのではないか。コロナ禍で通所サービス等の利用が実質的に制限された感染者や濃厚接触者等の生活を支えたのは訪問介護の役割が大きかった。収支差率の問題は、同一建物減算の減算率を見直す等、他の手段で解決すべきである。

訪問介護の同一建物減算
 新設の12%減算の要件に「正当な理由なく(略)事業所と同一敷地内又は隣接する敷地内に所在する建物に居住する者(略)に提供されたもの占める割合が100分の90である場合」とあるが、正当な理由とは何か。

訪問看護
 初回加算(II)の要件に「新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して、病院、診療所等から退院した日の翌日以降に初回の指定訪問看護を行った場合に所定単位数を加算する。」とあるが、入退院にからまない提供開始(通院や往診等から医師の指示)の場合は(II)を算定でよいか。
 理学療法士等による訪問の減算の要件のうち、「緊急時訪問看護加算、 特別管理加算及び看護体制強化加算をいずれも算定していないこと。」というのは、3加算のうち事業所として一つでも算定していれば該当しないということでよいか。
 また、理学療法士等による訪問回数が看護職員による訪問回数を超えているという要件については、訪問リハビリテーションの供給量が少ない地域など、指定権者の判断により減算しない取扱いを認めるべきではないか。

〇訪問リハビリテーション
 要介護者と要支援者で基本報酬に差を設ける理由がわからない。たとえば要介護1と要支援2とでは、認定の基準時間は同レベルであり、リハビリテーションという医療的サービスの報酬として10単位もの差が生じるのは合理的ではない。
 事業所評価加算の廃止を含め(これについては介護予防通所リハビリテーションも同様)、単に要支援者向けサービスを引き下げたいだけかもしれないが、特にリハビリ系については早期からサービス提供を行った方が効果的で、総合的にはコスト軽減につながるのではないか。

〇居宅介護支援
 基本報酬の上昇幅が小さすぎる(居宅介護支援(I)の最上位区分で0.93%)。処遇改善関係の加算がないのだから、もっと上げるべきである。安い単価適用になる件数を5件増やして、賃金を上げてほしかったら余分に仕事をしろというのは、まるでブラック企業ではないか。また、訪問介護ほどではないにしても居宅介護支援も移動が多く、訪問用自動車の運用コスト(ガソリン代、車両の点検、修理や更新費用等)の上昇が経営を圧迫している。なお、介護予防支援を直接提供できるようにはなったが、それでも単価は安い。
 入院時情報連携加算(II)は、「利用者が病院又は診療所に入院した日の翌日又は翌々日に、当該病院又は診療所の職員に対して当該利用者に係る必要な情報を提供していること。」が要件であるが、「営業時間終了後に入院した場合であって、入院日から起算して3日目が営業日でない場合は、その翌日を含む。」ともある。仮に平日の5月2日16時に緊急入院したが、当日中に情報提供できなかった場合、病院の都合で情報提供日が、次の平日である5月6日にずれ込んだとする。この場合、加算(II)も算定できないということか。加算(II)については「営業時間終了後に入院した場合」に限らず、3日目が営業日でない場合は算定を認めるべきではないか。

〇生産性向上推進体制加算
 加算(I)の「職員間の適切な役割分担」について、いわゆる介護助手を配置しなくても、他の方法(直接処遇以外の業務の外注や、職員間の時期的な業務量の差を意識して助け合う等)でもよいか。また、業務改善の取組による効果を示すデータ等の「エ 心理的負担等の変化」については、実際には心理的負担が重くなっているのに、軽くなっているように回答することを職員に強要することがないように、通知等で釘を刺した方がよいのではないか。
 加算(II)の「業務改善の取組による効果を示すデータ」については、成果の確認が求められる(I)とは異なり、必ずしも成果が上がっていなくても算定できると解してよいか。