訪問介護の報酬減はおかしい

介護報酬改定案などが、第239回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料として公表されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37407.html

 

今回は、令和6年4月改定分と、診療報酬改定に合わせた6月改定分とがあるので、注意が必要です。
(一部、令和7年8月改定というのもあります。)

 

まだ読み込んではいませんが、とりあえず。

 

 

訪問介護は基本報酬減、6月改定予定の介護職員等処遇改善加算関係を勘案しても、全体でマイナスという厳しい案になっています。

どうやら、各介護サービスにおける収支差率で、訪問介護が他のサービスに比べて数値がよく、かつ令和3年度から4年度に向けてもプラスになっている、ということが口実 理由になっているようです。

 


でも、これ合ってます?

調査方法か集計の分析方法か、何か間違っていませんか?
たとえば、サ高住みたいに同一建物居住者ばかり訪問している事業者のデータが、平均を大きく押し上げているとか。

 

実際、訪問介護の倒産件数は、2023年に過去最多と報道されています(介護保険が始まった2000年以降)。

<参考>2023年の「訪問介護事業者」倒産が60件に急増  ヘルパー不足や物価高、競合で過去最多を更新
東京商工リサーチ 2023/12/20(水) 13:08配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/9a4128f6f4331daa44973624f7ef644e08fda7ed

 

収支差率の資料に出てくる令和3年度から4年度にかけてというのは、新型コロナウイルスがデルタ株からオミクロン株系統に置き換わっていった時期で、施設系はクラスターが出たり、面会制限がより厳しくなったり、通所系は感染者だけでなく家族等も事実上のサービス拒否、という中で、訪問介護などが在宅要介護高齢者等の生活を細々と守っていた時期でした。

その中で職を離れるヘルパーも少なくなく(これは医療・介護の多くの職場にもいえることではありますが)、残ったヘルパーが、管理者やサービス提供責任者などを含めて自己犠牲的に訪問しまくっていた、という状況もあったのではないでしょうか。

 

現在にかけては、訪問系ではガソリン代の高騰は痛手ですし、車両の更新や修理等の経費も上昇しているはずです。
通所系ほどではないにしても、事務所の光熱水費、衛生関係物品の購入費など、物価高は収支差率調査時点(令和3~4年度)よりも厳しくなっています。

 

先に書いたように、新しい処遇改善加算についての細かい条件は読み込んでいませんが、仮にこれまでの処遇改善系の加算を全て最上位区分で算定していたとすると、統合された新加算の最上位を取ったとしても+2.1%(245/1000-224/1000)にしかなりません。
一方、基本報酬は(どの区分が多いかによって多少異なりますが)単純平均で△2.33%。

 

現状、訪問介護で事業所トータルがマイナス収入となるような改定は、やはりおかしいと思います。

今回の報酬改定案を見て撤退(廃業)を考える経営者は出てくるのではないかと危惧しています。