児童虐待対応の超党派提言

児童虐待防止へ国家資格を=小4女児死亡で要請-超党派議連
時事通信社 2/14(木) 19:05配信)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190214-00000119-jij-pol

虐待防止 児相に弁護士や医師の配置求める決議へ 超党派議連
(NHK 2019年2月12日 17時34分)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190212/k10011812311000.html

児童虐待防止へ「新国家資格を」、超党派有志の提言
日本経済新聞 2019/2/12 17:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41162290S9A210C1PP8000/

児童福祉法の抜本改正を」自民と超党派議連が決議まとめる 千葉小4死亡受け
毎日新聞2019年2月12日 18時28分(最終更新 2月12日 21時18分)
https://mainichi.jp/articles/20190212/k00/00m/040/158000c


各社によって、提言のどこを取り上げるかに差がありますが、足していくと、

1)児童福祉司の専門性を高めるため、国家資格化すること
2)すべての児童相談所に弁護士や医師の常勤での配置を法律で義務づけること
3)児童相談所に虐待問題への対応に専念する新たな部署を設けること
4)中核市と東京23区に児童相談所設置を義務づけすること
5)しつけを名目とした子どもへの体罰を禁止する法整備を速やかに検討すること

ということのようです。番号はこちらが便宜上に付したもので、深い意味はありません。


1については、
決議では「子どもの権利の保護よりも、保護者との関係を優先させるという児童福祉司らの専門性の欠如が背景にある」として、「根源的な改革が急務だ」としています。(NHK)
とのことです。

う~ん、これはどうでしょうか?

野田市の事件については、児相の対応はたしかに疑問があります。
なぜ、あのようなことを行ったか(逆に、なすべきことをしなかったのか)解明すべきでしょう。

ただ、現時点での個人的な印象ですが、
「専門性の欠如により保護者との関係を優先してしまった」
というよりも、
「職員個人を訴える」などの父親の脅しに屈してしまったのではないか(担当職員だけでなく所長を含む児相全体が)という疑念があります。
それで、お子さんを保護しなくてもよいという理由をなんとか作り上げて「総合的に判断した」という形にした要素がなかったかと。
(あくまで個人的な推測です。この点については本当のところを絶対に解明してほしいと思います。)

そうなると、専門性はともかく、国家資格よりも、児相を法的に守る仕組み(児相の組織を守るというより、児相が必要と判断した保護等の活動を守る仕組み)が必要ではないかと思います。

仮に「勇み足で保護した」ということが事後に判明した場合であっても、少なくとも職員個人は責任を追及されないこと。
そうでないと、専門性があったって、びびらされてしまったら同じです。

その意味で、2の弁護士の常駐は(費用の点で難しいかもしれませんが)方向性としては望ましいと思います。
もちろん、医師も、ですが、弁護士や医師については、常駐が困難でも、すぐに相談できるような状態なら、今回の件でもかなり違ったのではないでしょうか。

3の虐待専門部署については、結構なことではあると思いますが、地域によって専門部署を設けるほどの人員とならないかもしれません。
仮に過疎地域で1名だけ配置するようなら、その専門部署以外の職員が「虐待については自分は担当でない」というような意識にならないようにする対策が必要かもしれません。

4の中核市特別区への児相設置義務づけについては、将来的にはともかく、現時点では疑問です。
児相は一日にしてならず。
相談所の建物を造って、有資格者ということになっている職員を配置しただけでは、児童相談所は機能しません。
さまざまなノーハウや有形無形の資産を取得しようとしたら、たとえば厚労省が作るようなマニュアルだけでは駄目でしょう。
既存の児相(都道府県や政令市)から何らかの人的な支援が必要と思いますが、既存の児相にはそういう余裕はなかなかありません。
取り急ぎ、既存の児相の人員を充実しつつ、中核市等を含めて児相の数も増やしていく準備をしていく、ということが考えられます。
むろん、自主的に設置しようという中核市があって、そちらに資金や人材を投入できるのでしたら、それは結構なことです。
なお、東京都特別区については、ほとんど全区で設置しようという動きはあるようです。

5については、民法改正ということになるのでしょうが、動きを見守りたいと思います。

結論
国家資格でなくてよいから、人員を増やせ。
職員に法的に守られているという安心感を与えよ。