敗訴した市が改めて「けん責処分」

関西の自治体やその首長で、いちばん問題なのは、「うちわ会食」を勧める某知事かと思っていたのですが、もっと呆れる自治体がありました。


公益通報者の処分事案は京都市敗訴
https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2021/04/01/220254

↑この記事で市の敗訴を紹介しましたが・・・

 


懲戒処分取り消しの職員をけん責処分に、京都市 内部告発で児相資料持ち出し 専門家「見せしめ」と警鐘
京都新聞 2021年4月13日 18:34

 京都市児童養護施設で起きた性的虐待事件を内部告発するため、市児童相談所の相談記録を持ち出して懲戒処分を受け、その後最高裁で処分が取り消された男性職員(49)に対し、市は13日、懲戒より軽いけん責処分を出した。最高裁の決定が出たにもかかわらず再び処分を出したことに、専門家は「公益通報を萎縮させる」と疑問視する。

 男性職員は児相に勤務していた2015年、左京区児童養護施設に入所する少女が施設長から性的虐待を受けたとする母親からの相談が放置されているとして、市の公益通報窓口に通報した。その際、担当外の少女に関する記録を閲覧し、通報後に自宅に持ち帰ったとして市は同年12月、男性職員を停職3日の懲戒処分にした。

 男性職員が市を相手取り処分の取り消しを求めた訴訟の一審京都地裁と二審大阪高裁の両判決は、担当外の児童についての記録の閲覧は禁止されておらず、持ち出しも公益通報などの目的があったと認定。懲戒処分は「裁量権の逸脱や乱用の違法がある」と結論付けた。最高裁は今年1月、市の上告を退け、市に処分の取り消しを命じた二審大阪高裁判決が確定した。

 市はその後も処分について検討を続け、記録の持ち出しと無断で廃棄した二つの行為については市の情報管理の基準に違反しているとして、懲戒より軽いけん責処分(市長名の厳重文書訓戒)としたという。公益通報者保護法では公益通報者への不利益な取り扱いは禁じられているが、市は「公益通報が処分の理由ではない」と主張する。

 一方、男性職員は「記録持ち出しは証拠保全のためで、今回の処分には納得できない。停職3日という誤った処分をしたことへの謝罪もない」と訴える。

 公益通報制度に詳しい浅岡美恵弁護士は「記録の持ち出しは公益通報に不可欠な行為で、それを根拠に処分しようとするのは公益通報への萎縮効果をもたらしかねない。最高裁まで争って取り消された案件でこのような措置をすることは『見せしめ』と受け取られても仕方がない」と指摘する。
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/547139


また、NHKによると、


京都市公益通報」で処分取り消しの職員を改めて処分
04月13日 17時16分
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20210413/2000043915.html

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改めて処分を受けたことについて男性職員は、「京都市からは停職の懲戒処分が誤りであったとの謝罪は一切なく、また苦しめられるのかと思い、納得がいきません。資料の持ち出しは隠蔽が行われるのではないかなどの不安を抱き、自宅以外に適切な保管場所を思いつかなかったためです。廃棄については、了解を得たものと理解していましたが、判決で軽率と指摘されている点については反省しています。犯罪行為を見逃すことはできなかったので、公益通報をしたことへの後悔は今もありません」と話していました。

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とのことで、(職員のコメントは)ごもっともと言わざるを得ません。

 

「書類持ち出し」は、公益通報に必要なので、その違法性は指摘できないのは当然。

「廃棄」については、いろいろ考え方はあるかもしれませんが、
関西テレビ(2016年7月28日(木)23時41分配信)によると、
<閲覧し印刷して持ち出したのは「公益通報をすることで児童相談所の対応の遅れをただすためだった」と主張>
https://jukeizukoubou.blog.fc2.com/blog-entry-2125.html

とのことで、少なくとも児童相談記録の原本がなくなるような形での廃棄ではないようです。
(電子化されている記録を紙に印刷して、それを持ち出した、ということなら、「廃棄」を理由として処分するには当たらないでしょう。)

逆に、本件の職員の通報により、<「性的虐待についての相談が放置されて、児童相談所の職員が何も対応しなかった>という不名誉な状態が回避された、ともいえるわけで、むしろこの職員は表彰されてもよいぐらいではないでしょうか。

処分を受けるべきは、性的虐待についての相談を放置していた職員とか、もしも公益通報を握りつぶそうとする幹部職員がいたらその職員とか、公益通報をした職員を不当に停職処分にした方ではないかと思うのですが、藤田洋史人事部長、違いますかね?