民法改正17・短期消滅時効の削除等

<改正前>

(定期金債権の消滅時効
第百六十八条 定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。
2 定期金の債権者は、時効の中断の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。
 
 
<改正後>

(定期金債権の消滅時効
第百六十八条 定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
 一 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から十年間行使しないとき。
 二 前号に規定する各債権を行使することができる時から二十年間行使しないとき。

2 定期金の債権者は、時効の更新の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。

 
↑行使できるときから20年間、行使できることを知ったときから10年間、という使い分けが導入されます。今回の改正でしばしば見られる形です。
あとは、時効の「中断」という言葉を避ける、という、これもよく見られる変更です。
 
 

<改正前>

(定期給付債権の短期消滅時効
第百六十九条 年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。

(三年の短期消滅時効
第百七十条 次に掲げる債権は、三年間行使しないときは、消滅する。ただし、第二号に掲げる債権の時効は、同号の工事が終了した時から起算する。
 一 医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権
 二 工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権
第百七十一条 弁護士又は弁護士法人は事件が終了した時から、公証人はその職務を執行した時から三年を経過したときは、その職務に関して受け取った書類について、その責任を免れる。

(二年の短期消滅時効
第百七十二条 弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権は、その原因となった事件が終了した時から二年間行使しないときは、消滅する。
2 前項の規定にかかわらず、同項の事件中の各事項が終了した時から五年を経過したときは、同項の期間内であっても、その事項に関する債権は、消滅する。

第百七十三条 次に掲げる債権は、二年間行使しないときは、消滅する。
 一 生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権
 二 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
 三 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権

(一年の短期消滅時効
第百七十四条 次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。
 一 月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権
 二 自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権
 三 運送賃に係る債権
 四 旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権
 五 動産の損料に係る債権
 
 
<改正後>

(判決で確定した権利の消滅時効
第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。

第百七十条から第百七十四条まで 削除

 
↑これらは、今回の民法改正の目玉とでもいうべき変更のひとつです。
飲み屋のつけ(1年)、売掛金(2年)、診療報酬(3年)など、ばらばらだった短期消滅時効がなくなり、事実上(ほぼ)5年に統一ということになります。
ついでに?裁判で確定した権利についての規定が明記され、あとはばっさりと削除されます。
 
<再掲>第166条第1項
 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
 一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
 二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
 
(つづく)