H28.7.20介護保険部会議事録(3)

(つづきです)


桝田委員全国老人福祉施設協議会介護保険事業等経営委員会委員長>
 参考資料の17ページの部分で、介護度が高くなるにつれて身体介護中心となっていると考えられます。これは当たり前の話なのですけれども、ここで少し考えていただきたいのは、この介護度によって生活援助中心が減っていく現象は、人間として生活する上で衣食住のニーズというのはみんなほぼ同じだと思うのです。この部分を誰が行っているかというのがここのデータに出ているのではないかと思われます。介護度の高い人は、生活援助部分のニーズが少なくなるのでなくて、家族がこれを行っている。そうすると、介護度1から介護度5までの、いわゆる家族の状況をオーバーラップして調べていただいたらよくわかると思うのですが、実はここの軽度の要介護1、2の方、生活ニーズの部分のサービスを受けている方というのは、大分部がひとり暮らしなり高齢世帯の方だと思うのです。ここが今、サービスを受けることによって生活を続けられている。これがなくなっていく、もしくは自分の費用で払えなくなってくると次に何が起こるかというと、この方たちはひとり暮らしなり高齢世帯ですので、別に住まわれているご家族、例えば息子さんなりの介護離職という問題が起こってくる可能性があります。
 介護離職を抑えるというのは、要支援から要介護1、2の方をどうフォローしていくのか、その地域でどう住み続けていただくかというのが一番の課題になってきます。そうすると、地域支援事業移行の問題というのが起こってきますけれども、現在3分の1の市町村が始まったばかり。3分の2は来年度の4月からという状況で、どういう状態になるのか。要支援者さえまだはっきりどういう状態になるか見えていないところに、要介護1の人なりを追加するというのは少し乱暴ではないかと思います。要支援の方のサービス提供体制が固まった時点で再検討すべき事項に入ってくるだろうと考えます。
 もう一つは、身体的な状況だけでなくて、今、いろんなことが介護保険の世界でも起こっています。というのは、地域によってサービスの内容が違う、充足状況も違うという中で、例えば今、特別養護老人ホームを考えますと、新聞で待機者が減った減ったという話が出ています。要介護1、2の方、特養の利用というのは、特殊な方でなかったら使えないというのが制度的にスタートして、手を挙げている方が減ったというのもあるのですけれども、ただ、それだけでなくて、今、いろんな状況が起こっています。
 地域によれば、特別養護老人ホームでもう空きが出ているところも出てきました。それは、その地域の高齢者の方がどんどん減ってしまっている。でも、施設は一度つくれば、その定員数というのは同じ状況ですので、需要と供給のバランスが崩れかけている地域もあります。逆に全く足りなくて、どうしようもない状況の地域もあります。そういうことになってくると、介護保険自体も軽度者、中度者、重度者と考えても、地域によっていろんなサービスの提供体制を組み立て直す時代が来たのではないかと思います。単純に全国一律でサービスを提供しましょうといっても、提供できない地域もあれば、逆にサービス過多に陥る地域もある。全体として細かな部分だけでなくて、大枠をちょっと見直す時期に来たのではないのかなと思っています。

桝田委員の冒頭部分は、前記事のグラフ等に対する、また別の切り口だと思います。


伊藤委員日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長>
(略)要支援者についての検証もされていない中で、さらに充実した支援が必要な要介護者について、給付対象から外すといった見直しは余りにも時期尚早だと思います。特に特養の入所者は原則要介護3以上になっているということも踏まえて、要介護1、2の在宅サービスの必要性はより高まっていると考えるべきだと思っております。
 また、担い手の問題ですけれども、生活援助中心型のサービスについて誰が担うかというときに、専門性がそれほどない人でもできるということの整理について非常に違和感があります。これまでも何人かの方から御指摘がありましたけれども、ホームヘルパーについては、単に介護についてだけでなく、自立援助とか訓練とか社会関係の調整とか、非常に幅広い役割が期待されていますし、倫理性についても十分に認識をした上で従事していらっしゃるということ。こういう担い手のことを、決して踏みにじるようなことはしてほしくないと思っていますので、生活援助を担う人というのは、やはり専門性を持つ人を養成するという観点で検討をしていってほしいと思います。
 では、財政的にも人材確保も課題がある中でどうすればいいのだと厚生労働省さんに開き直られても困るのですけれども、ここは政府として介護離職ゼロ、女性の活躍推進という政策課題の優先順位を上げたということを十分に踏まえて、そこの資源配分も含めて対応していただかないといけないと思っています。

大西委員全国市長会介護保険対策特別委員会委員長(香川県高松市長)>
(略)この軽度者への支援のありかたにつきましては、本年2月の議論の最初のときに、給付の見直しや地域支援事業への移行によって、市町村の負担がより増大したり、あるいは要介護度の悪化といった本末転倒の結果を招くことのないように、それぞれ制度改正、慎重に取り扱っていただきたいという旨の発言を行ったところでございますし、全国市長会としても、特別提言、重点提言という形でその旨を求めておるところでございます。
 そして、そういう中での現在の状況ということですが、お話が先ほどから出ておりますように、介護保険の保険者であり、また、地域支援事業等、地域包括ケアシステムの構築に当たって、主体的にやっていかなければならない我々基礎自治体、市町村におきましては、大きくは地域包括ケアシステムをいかに構築していくのか。具体的には26年度改正で地域支援事業、新しい総合事業へ移行することとされました訪問介護通所介護の予防給付の分について、いかに新しい総合事業を立ち上げていくのかということで今、四苦八苦しているような状況でございます。
 先ほどからお話が出ていますし、資料にもありますように、この4月から始められているところは全体の3分の1ということでございますが、全体の3分の1で始めているところも、市域等で全体的にせーのでやられているところはほとんどないような状況でございます。
 本市におきましても、この10月から新しい総合事業に移行はすることにしていますが、円滑に実施していくにはまだまだ課題が多くございます。
 難しいのは、先ほど齊藤委員のほうからございましたけれども、やはりコミュニティーのあり方と非常に密接に関連してくる。それぞれの市町村の状況によって大きく違ってくるかと思うのですが、高松市は42万人の中核都市で、それなりの都市的な機能もありますし、都市住民としてのいろんな活動も活発であるので、割と仕組みやすい地域であるとは思うのですが、それでも例えば自治会加入率が今どんどん落ちてきて、地域の力が弱まっている。そういう中でコミュニティーの再生といったものを図りつつ、この地域包括ケアシステムを構築していかなければならない。その辺は時間をかけながら、両方がうまく進んでいけるように、コミュニティーの再生と地域包括ケアシステム、それがいい方向で連携して進められるような形で今やっておるところでございます。
 今、そういう状況の中で、また新たに軽度者への支援事業として給付を見直してという話になってきますと、とてもじゃないけど市町村のほうとしては対応がしかねるのではないかというのが今の状況でございまして、それで、より慎重に検討を求めたいということで、今、意見を出させていただいておるところでございます。(略)

東委員<全国老人保健施設協会会長>
(略)現在使っている要介護度は、サービス提供側の手のかかり度であって高齢者本人の自立度ではありません。手のかかり度である要介護度をもとに「自立支援」を論じながら、要介護度が低いから介護保険から外すとか外さないとか言っていること自体が議論としては少しおかしい。その点もきちっとわきまえて議論をしていただきたいと思います。
 また「自立支援」ということを適切に評価するのであれば、ケアマネジャーがそのキーパーソンになると考えております。例えば、要介護度がどうであっても、あなたはこれができるのだからこういうサービスにしましょうとケアマネジャーが適切な判断をしてサービスを組み立てることができれば、「自立支援」につなげることができます。このような「自立支援」が今後非常に重要な論点になると思います。


まだまだありますが、「軽度者外し」に対して慎重、懐疑的、反対といった委員の発言については、一度区切りとします。

福祉用具とか住宅改修とかのほうはどうしようかなあ・・・・・・