H28.7.20介護保険部会議事録(1)

2016年7月20日 第60回社会保障審議会介護保険部会 議事録
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000136005.html

この部会は、
1 軽度者への支援のあり方
2 福祉用具・住宅改修
という問題が議題でした。何回かに分けて、各委員の発言をピックアップしてみたいと思います。


陶山委員
<UAゼンセン日本介護クラフトユニオン会長>
(略)資料1の7ページに生活援助は誰でもができるサービスであるというニュアンスの研究報告が紹介されていますが、前回御指摘させていただいたように、生活援助は利用者の身体状況の様子の確認などを行っている専門職の仕事であると考えています。現場からも、「生活援助にヘルパーがかかわることによって、利用者の身体能力が落ちていくことを見守り、必要なサービスに結びつけていく」との意見や、「例えばこの夏、大変厳しい暑さになると言われていますけれども、食べられなくなる、水分がとれなくなるなど、状態が急変したときの対応を含め、誰でもができるわけではない」との指摘もありました。
 対応策につきましては、この資料のように、介護人材の類型化、機能分化に進むのであれば、現在の要介護度だけで判断するのではなく、利用者宅を定期的に訪ねて見守り、もしものときにどう専門職に伝えていくか、そういう機能を含め、本当に生活援助が必要な人に地域の全ての資源を活用した仕組みを同時につくることが生活援助の見直しに必要な前提だと考えます。それでないと、気がついたら亡くなっていた、そういうケースも起こり得ると考えますし、専門職でない方に責任を押しつけることになってはいけないということも申し上げたいと思います。
 このように、利用者に対する生活援助は、利用者の生活を総合的に支援する視点が必要だと考えます。単に作業としての生活援助があるわけではないということを再び強く申し上げたいと思います。
 また、それらの面倒を地域で見る総合事業にいたしましても、資料1の8ページにあるように、まだまだ準備が整っていないようであります。また、総合事業を開始している保険者にしても、生活支援サービスの展開に向けて取り組み中であるという、先の見えない環境でもあるように感じます。
 加えて、予防給付の訪問介護通所介護を地域支援事業に移行した検証もできていない現状では、生活援助を見直すことは時期尚早と言わざるを得ないと考えます。
 最後に、人材確保の観点ですが、人材不足と言われている介護事業ですけれども、とりわけ直行直帰型の非正規労働者が多い従事者の中には、一時的であれ、見直しが収入減につながった場合、生活を支えるために介護職を離れるきっかけになることも念頭に置かなければなりません。

鷲見委員<日本介護支援専門員協会会長>
(略)まず「軽度者への支援のあり方」ですが、介護度と利用者の状態、介護度と支援の困難性というものは必ずしも一致していません。実際に要支援者のADLが自立に近い状態であっても、IADLには支障が生じている。参考資料7ページの生活行為(IADL)の部分が地域支援事業の対象になると考えますが、多様なサービスの展開が保険者ごとに工夫がなされているという段階で充実した支援が実施されているとはまだ言いがたい状況にあると思います。どのような原因、背景で支障が生じているのか分析し、ケアマネジャーがどのような支援が必要かどうか見きわめる必要があると考えています。
 また、当協会で実施いたしました軽度者への訪問介護の生活支援の自費移行につきましては、利用者家族へのアンケートでは、現在、もう既に2割の負担者においてはやや意識が異なるものの、本人は73%の方が反対していらっしゃいます。今後独居高齢者世帯がふえていきます。現在、民間の自費サービスでいきますと、大体1時間当たり2,500円程度かかりますし、または高額なパッケージ料金ともなっているところです。
 地域でさまざまな取り組みが充実しない限り、とてもこのサービスを使い切れるものではございません。よって、軽度者から重度者まで一貫したケアマネジメントが必須であると考えます。
 例えば対象者をよく理解しているケアマネジャー、いわゆるマイケアマネジャーがつき、軽度者から予防の視点を持って介入したり、入退院の支援や緊急時など、MSWの方などと一緒に協働し、迅速に対応できるような仕組みにしていく必要があると思っています。そうすることによって、在宅への移行がスムーズになり、医療費の削減にもつながると考えます。介護度による軽度者、重度者への支援を区別するということはあってはならないと考えています。

花俣委員認知症の人と家族の会常任理事>
(略)軽度者といえども、要介護認定を受けて、何らかの支援が必要と認められた方なわけですから、この方を給付から外すということには到底納得できませんし、また、介護度の数値だけで生活援助が要る、要らないということを判断するというのは、随分性急な判断かなとも思います。生活援助が必要な方というのは、特に認知症高齢者の場合、要介護認定の判定は軽度に出る場合が多うございますので、こういった方から生活援助を外すということは、後々重度化や命にかかわるということはもう明らかです。
 それから、持続可能な介護保険制度にするために給付の削減ということで、軽度者の生活援助を特に総合事業に移行できないかということかと思うのですが、その前にもっともっとたくさんの課題がこの制度の中に。介護保険制度がスタートしてもう既に十何年たつわけですから、もう少し丁寧に見ていけば、こんなに乱暴なやり方をしなくても費用の削減はできるのではないかと私は感じております。
(略)資料1の2ページには、サービスが軽度者の状態の改善、悪化防止に必ずしもつながっていないと書いてあります。しかし、2014年度介護給付実態調査の結果の概要では、表4の要介護(要支援)状態区分別に見た年間継続受給者数の変化別割合では、どの認定ランクでも現状維持している利用者が約7割で、十分に悪化防止になっているのではないかと思います。
 介護保険の認定者は80代、90代が圧倒的に多く、ひとり暮らしや高齢夫婦で在宅サービスを利用しているケースも多いわけですから、ニーズの高い在宅生活を維持するために必要とされているサービスをテーマとする以上、利用者や介護者への説明責任は十分に果たしていただきたいと思います。
(略)生活支援について、ボランティア等の活用、その他、次々と総合事業の中でのいろんな位置づけがされているのですけれども、一般のボランティアが他人の家、場合によってはひとり暮らし、家族の目がない状態のところに入ってケアを行うということは、大変慎重に行わないとかなり問題が生じるのではないかと危惧しております。
 結局、ボランティアにも一定の専門性が必要になるのではないか。そうなれば、研修も必要。研修を受けたとなれば、人件費の上昇もあるということで、この辺はもう少し慎重に考えていきたいなと思っています。


(つづく)