書評・多数決を疑う

坂井豊貴「多数決を疑う-社会的選択理論とは何か」 (岩波新書)


米国の大統領候補者選出とか、我が国の参議院選挙とか、県またぎの合区とか、英国のEU離脱についての国民投票とか、いろいろ選挙や投票のあり方について話題になることが多くなっています。

本書は、別に民主制より独裁制の方がよい、などという主張ではなく、現在よく用いられている多数決が、必ずしも人々の意思を適切に集約しないのではないか、と投げかけています。

一般に用いられている多数決は、1位に1点、2位以下には全て0点を付けるという方法です。

それ以外の方法として、1位に3点、2位に2点、3位に1点という加点をして、その合計で優劣を定める(ボルダルール)。

あるいは、1位に1点、2位に1/2点、3位に1/3点、4位に1/4点、5位に1/5点という方法(ダウダールルール)。

あるいは、中位者ルール。
本書にある例ではありませんが、たとえば裁判員裁判での量刑の決定も似ています。
裁判員と裁判官の合計9名で、

懲役3年:1名、懲役4年:2名、懲役5年:2名、懲役6年:4名

の場合、単純多数派の懲役6年とはなりません。
軽い方の刑期から足していって、懲役5年のところで5名(過半数)に達したところで決定となります。

一票の格差が話題になりますが、本書の考え方も参考にしたいところです。

もっとも、本書の内容を理解できない政治家がいるのではないか、とか、
そもそも国民の意思の集約結果に従う気がない政治家もいるのではないか、とか、
いろいろ気になることころはありますが。