地域ケア会議(4)

Q&Aの続きです。

問5 地域づくり・資源開発、政策形成を行うために「地域ケア会議」ではどのような検討を行うのか。


(答)
 「地域ケア会議」において個別ケースの課題を解決していく中で、地域に不足している資源やサービス、連携が不十分な職種・機関、新たに取り組むべき課題等が明らかになってくるため、これらを関係者で共有し、社会基盤の整備についての検討を行うことが考えられます。
 これらの地域課題は、日常生活圏域内の調整で解決可能な課題から、市町村全域での検討が必要な課題もあるため、それぞれのレベルの課題を地域包括支援センターと市町村職員が共有し、地域で必要な資源の開発を検討して政策に反映させていきます。
 この場合、案件によっては地域における関係者の代表者レベルによる開催が必要なケースも考えられます。

 なお、会議内容の具体例は以下のとおりです。

 [1] 地域づくり・資源開発等の例
 ・公的サービスだけでは支えきれない課題(ゴミ出し、見守り等)がある場合、住民組織やボランティアとの協働などについて検討
 ・特定の機関(医療機関、施設等)との連携が進まない場合、関係者で好事例を共有し改善方法を検討
 ・特定の介護支援専門員やサービス事業者の課題(自立支援の理解不足、サービス過剰、サービス過少等)の解決のため、職能団体や事業者団体のネットワーク化による解決方法を検討

 [2] 政策形成等の例
 ・圏域内で解決困難な課題(買い物弱者の移動手段、孤立死防止に関する企業との連携等)について、市町村での事業化・施策化の必要性について提言
 ・地域ケア会議で見出した地域で実践されている有効な解決策を、地域全体に普及することについて提言

 以上のような取組により、以下に示すような政策形成につなげていくことが重要です。

 ・市町村は、地域包括支援センターの提言を受け、日常生活圏域ニーズ調査など計画策定に関する調査結果とあわせ、地域のニーズ量に基づき資源を開発し、次期介護保険事業計画に位置づけ
 ・市町村内で解決困難な課題(医療資源の不足、道路・交通、法制度上の課題等)について、広域的な検討の場及び国・都道府県等に対して政策を提言し、提言を受けた国・都道府県等は適切に対応


問6 「地域ケア会議」の開催によってどのような効果が得られるか。


(答)
 地域ケア会議は、個人で解決できない課題を多職種協働で解決し、そのノウハウの蓄積や課題の共有によって、地域づくり・資源開発、政策形成等につなげ、さらにそれらの取組が個人の支援を充実させていくという一連のつながりがあります。
 その効果を具体的に挙げると、サービス利用者や家族にとっては、より良いケアマネジメントが提供されることとなるため、サービス利用者の自立支援やQOLの向上につながります。
 また、介護支援専門員と事業者にとっては、他の専門分野の知識を得る機会になり、他機関との役割分担やサポートによって負担が軽減します。さらに、支援チームが課題解決の経験を積み重ねることによって、類似事例においても自主的な実践が可能となり、早期対応が重度化を防止することにもなります。
 こうした取組は、地域ケア会議に参加した関係者のスキルアップや事業者間での質の管理にも役立ち、保険者にとっては、適正な介護給付の維持と地域包括ケアシステムの構築につながり、地域住民にとっては、住み慣れた地域で安心して生活を継続できるという効果があります。
 このように、「地域ケア会議」の実践は、地域包括ケアシステムの構築・発展に有効な機能であり、サービス利用者は勿論のこと、支援者、市町村及び地域住民にとっても様々な効果をもたらすものであると言えます。


問7 個別ケースの検討は行わなくてもよいか。


(答)
 地域包括ケアシステムづくりのためには、[1]高齢者個人に対する支援の充実と、[2]それを支える社会基盤の整備とを同時にすすめる必要があります。
 地域ケア会議における個別ケースの検討は、自立支援に資するケアマネジメントの実現、サービス利用者のQOLの向上、関係者のOJT等の効果が期待されるところであり、これらの積み重ねにより、地域における個別支援の最適な手法が蓄積されます。また、これらの事例の課題分析等を行うことで、社会基盤の整備に資するニーズや地域課題を把握することができます。
 したがって、地域包括ケアシステムづくりのために、地域ケア会議において個別ケースの検討を行うことは大変重要な取組であると言えます。


問8 「地域包括支援センター運営協議会」を「地域ケア会議」に置き換えてもよいか。


(答)
 地域包括支援センター運営協議会は、地域包括支援センターの業務に関する評価を行い、センターの適切、公正かつ中立な運営の確保を目指すこと目的としていますが、運営要綱7―(3)に規定する所掌事務のうち、「(e)その他地域包括ケアに関すること」について、地域づくり・資源開発、政策形成等の地域ケア会議の目的・機能に合致する内容の検討を行う場合は、地域ケア会議に置き換えて差し支えありません。