地域ケア会議(3)

「地域ケア会議」に関するQ&Aの送付について
(平成25年2月14日 事務連絡 各都道府県介護保険担当課(室)あて厚生労働省老健局振興課通知)

問1 今般、「地域ケア会議」を通知に位置づけた背景は何か。


(答)
 団塊の世代が75歳以上となる2025年へ向けて、高齢者が尊厳を保ちながら、住み慣れた地域で自立した生活をおくることができるよう、国は、医療、介護、予防、住まい及び生活支援サービスが、日常生活の場で切れ目なく提供できる地域での体制(地域包括ケアシステム)づくりを推進しています。
 これを実現するためには、[1]高齢者個人に対する支援の充実と、[2]それを支える社会基盤の整備とを同時にすすめる必要があります。
 このため、今般、[1]専門多職種の協働のもと、公的サービスのみならず他の社会資源も積極的に活用しながら、高齢者個人の課題分析と在宅生活の限界点を上げるための支援の充実に向けた検討を行い、これらの個別ケースの検討の積み重ねを通じて、高齢者の自立支援に資するケアマネジメントを地域全体に普及することにより、地域で高齢者を支えるネットワークを強化するとともに、[2]高齢者の自立を支援するための具体的な地域課題やニーズを行政に吸い上げ、社会基盤整備につなげる一つの手法として、地域ケア会議を通知に位置づけたところです。
 各地域においては、市町村の方針や従来の活動の流れを汲んで、様々な取組が行われてきましたが、その目的や手法が多様であることから、今回このように整理したところです。
 現在行われている取組が、後述する目的に合致しているか、また、どの機能に該当するかを確認のうえ、地域包括ケアシステムの実現につながるよう、充実強化していくことが求められます。


問2 「地域ケア会議」にはどのような目的と機能があるのか。


(答)
 地域ケア会議の目的については、課長通知の中で「ア 個別ケースの支援内容の検討によるもの」と「イ 地域の実情に応じて必要と認められるもの」に大別しています。
 前者については、課長通知のi~iiiで既に示していますが、後者については、例えば、個別ケースの検討による課題解決を積み重ねることによって明らかになった共通の要因や地域課題及び日常生活圏域ニーズ調査で把握された地域課題を基に、地域づくりや新たな資源開発、政策形成等につなげるものを取り扱うことが考えられます。
 これらを踏まえて地域ケア会議の有する機能を整理すると、個別ケースの支援内容の検討によるものについては、

 [1] 多職種が協働して個別ケースの支援内容を検討することによって、高齢者の課題解決を支援するとともに、介護支援専門員の自立支援に資するケアマネジメントの実践力を高める「個別課題解決機能」

 それを通じた

 [2] 高齢者の実態把握や課題解決を図るため、地域の関係機関等の相互の連携を高め地域包括支援ネットワークを構築する「ネットワーク構築機能」
 [3] 個別ケースの課題分析等を積み重ねることにより、地域に共通した課題を浮き彫りにする「地域課題発見機能」

 が主なものとして挙げられます。
 また、地域の実情に応じて必要と認められるものとしては、

 [4] インフォーマルサービスや地域の見守りネットワークなど、地域で必要な資源を開発する「地域づくり・資源開発機能」
 [5] 地域に必要な取組を明らかにし、政策を立案・提言していく「政策形成機能」などが考えられます。

 これらの目的・機能は、一度の会議ですべてを網羅することは困難であるため、課題や目的に応じて、開催方法や実施回数、参加者等を検討する必要があります。地域の実情に応じて既存の会議を活用しながら、不足している部分を強化していくことが重要です。
 特に、個別ケースの検討による[1]~[3]は重点的な取組が求められます。
 また、会議の主催者及び名称については、実施主体の判断によりますが、その機能に着目し、[1]から[3]については主に地域包括支援センター主催による「地域ケア個別会議」、[4]及び[5]については検討内容によって地域包括支援センターまたは市町村主催による「地域ケア推進会議」と称するなど、会議の機能に応じて設定することが考えられます。
 いずれが主催する場合も、ひとりひとりの高齢者が尊厳を保ちながら、住み慣れた地域で自立した生活を送ることができるよう支援することを目指しています。
 会議の設置・運営に当たっては、上記のような地域ケア会議の全体像(目的・機能)を十分に理解した上で、開催目的を明確にして実施することが求められます。


問3 「地域ケア会議」で行う個別ケースの検討と「サービス担当者会議」、「事例検討会」の違いは何か。


(答)
 「サービス担当者会議」は、介護支援専門員の主催により、ケアマネジメントの一環として開催するものです。効果的かつ実現可能な質の高い居宅サービス計画とするため、利用者の状況等に関する情報を各サービス担当者等と共有するとともに、専門的な見地から意見を求め、具体的サービスの内容の検討、調整を図るものであり、その位置づけは地域ケア会議とは異なります。
 なお、サービス担当者会議においては、保健・医療職やインフォーマルサービス、住民組織等の協力者の参加が少ないという実態があります。
 一方、「地域ケア会議」で行う個別ケースの検討は、地域包括支援センター又は市町村の主催により、包括的支援事業の一環として、幅広い地域の多職種の視点により、それぞれの専門性に基づくアセスメントやケア方針の検討がなされる場です。この検討を通じて、高齢者に対する包括的ケアと自立支援に資するケアマネジメントの実践力を高め、保健・医療職やインフォーマルサービス等を含めた地域包括支援ネットワークの構築、地域課題の把握等を行います。
 また、これらの積み重ねにより、介護支援専門員のケアマネジメント能力が向上し、その結果、サービス担当者会議が充実することが期待されます。
 なお、「事例検討会」は、援助者の実践力向上を図ることを目的とした場合、研修としての意味合いが強く、ここでいう「地域ケア会議」とは異なります。


問4 個別ケースの支援内容の検討はどのように行うか。


(答)
 個別ケースの検討に取り上げる事例は、市町村の方針に基づき、地域包括支援センター又は市町村が選定します。包括的・継続的ケアマネジメント支援業務の一環として支援困難事例の相談・支援から事例を取り上げる場合、総合相談支援業務等の一環として住民や関係機関等からの相談事例を取り上げる場合、各市町村の課題に応じて関係者に事例の提供を求める場合等が考えられます。
 支援困難事例の場合は、主に介護支援専門員が抱える困難事例等、総合相談支援事例の場合は、地域住民や医療機関等の関係機関による支援要請事例等に対し、地域包括支援センターの三職種をはじめとした多職種による課題分析を行い、必要に応じて多様な機関との連携や役割分担を行い、サービス利用者や地域住民のQOL向上と自立支援に資するケアマネジメントの支援を検討します。
 また、市町村の課題に応じて事例提供を求める場合は、たとえば小規模な居宅介護支援事業所、経験の浅い介護支援専門員が担当する事例、新規開設事業所の事例、軽度者の区分変更事例、予防プランの委託事例、障害者自立支援法からの移行事例、小規模多機能型居宅介護など地域密着型サービスの利用事例、施設入所待機中の事例、施設入所者の事例等、市町村として潜在課題が予測される事例に焦点を当てることが考えられます。
 いずれの会議も、出席者への追及の場ではなく、よりよいケアマネジメントが行われるよう多職種が支援チームとなって検討する場であり、サービス利用者や地域住民のQOLと地域のケアの質の向上が目的です。したがって、主催者側は意見を述べるだけではなく、必要に応じて、その後のモニタリングや支援内容に対する事後フォローを行うことが求められ、プランを変更することとなった際は、利用者等への説明や他機関との調整について、介護支援専門員をバックアップすることが重要です。