軽度の方が長時間利用か?

12年改定後の訪問介護 軽度者ほど長時間提供

厚労省 12年介護サービス事業所調査 生活援助のニーズ浮き彫りに
訪問介護の生活援助サービスの時間区分が「45分」に短縮された2012年の報酬改定。厚生労働省が13日にまとめた12年の介護サービス施設・事業所調査結果では、改定後も軽度の人ほど身体介護より掃除・洗濯などの生活援助の利用割合が多く、60分以上の長時間サービスが必要となっていることが分かった。(以下略)
(シルバー新報 2014/03/20)


また、悪意ある、というか、問題のある見出しです。
悪意のあるのは厚労省の発表の方でしょうが、(おそらく)それをそのまま使っているメディアも賢いとはいえないでしょう。

軽度者は「生活援助や長時間利用が多い」のではなく、「身体介護や短時間利用が少ない」から
「生活援助や長時間利用」の割合が相対的に大きくなっているだけです。
これは構成比の問題で、利用の絶対量(回数、時間)ではありません。

「軽度者に無駄金使っている」ようなイメージを与えようとするのは、こちらの記事で触れたのと同じ手口ですね。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/31868253.html
 
ちなみに、報道の元は、この資料のようです。
 


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では、元のデータから見直してみます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001117909

こちらの「2  介護サービス受給者数,要介護状態区分・サービス種類別」から訪問介護の利用者数を、
「14  訪問介護回数,要介護状態区分・内容類型・所要時間別」から生活援助の利用回数を引っ張り出します。(表イ)

上の表を利用者数で割って、個々の利用者がどれぐらいの時間のサービスを利用しているかを見ます。
1人当たりでは数値が小さすぎるので、千人当たり回数で比較します。(表ロ)


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図Aでグラフにしました。
「長時間利用の絶対値」が比較しやすいよう、長時間利用を左に持ってきました。

45分以上(図の黄色と茶色)の利用は、要介護1~3ではあまり差がありません。
要介護4以上では減少しますが、
・重度になると独居で在宅生活できる人の割合が減ると考えられること
・同居家族がいると生活援助の必要性が減ること
を考慮すると、軽度の方が長時間利用が多いとはいえません。

念のため。身体介護のデータも見てみましょう。
表ハの値を訪問介護の利用者数で割って、利用者千人当たりの回数を出します。(表ニ)
グラフ化したのが図B。ただし、細かく区分すると見にくいので、60分以上はひとつにまとめました。(赤色)


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要介護度で差が大きいのは30分未満の利用です。(薄緑色)
が、他の区分(30分以上など)も重度者ほど利用回数が多くなります。

結論1:「軽度者ほど訪問介護を長時間利用している」とはいえない。
結論2:「軽度者の利用を抑制する方向に誘導するため、国は故意に誤解が生じやすい資料を作っている」
    という疑いがある。