回数に「身体+生活」は含まれるか?

前記事の訪問介護について届出が必要な回数の対象サービスですが、
・生活援助(中心型)だけか
・身体介護(中心型)と組み合わせて行う生活援助(中心型)も対象となるか
ネット上でも議論になっているところがあるようです。

まず、関係の法令等を見てみます。


指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第13条
十八の二 介護支援専門員は、居宅サービス計画に厚生労働大臣が定める回数以上訪問介護厚生労働大臣が定めるものに限る。以下この号において同じ。)を位置付ける場合にあっては、その利用の妥当性を検討し、当該居宅サービス計画に訪問介護が必要な理由を記載するとともに、当該居宅サービス計画を市町村に届け出なければならない。

平成30年厚生労働省告示第218
厚生労働大臣が定める回数及び訪問介護
 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準・・・第13条第18号の2に規定する厚生労働大臣が定める回数及び訪問介護は、次の各号に掲げる事項に応じ、それぞれ当該各号に定めるとおりとする。
一 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準第13条第18号の2に規定する厚生労働大臣が定める回数 次のイからホまでに掲げる要介護状態区分に応じて、それぞれ当該イからホまでに定める回数
 イ 要介護1 1月につき27回
 ロ 要介護2 1月につき34回
 ハ 要介護3 1月につき43回
 ニ 要介護4 1月につき38回
 ホ 要介護5 1月につき31回
二 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準第13条第18号の2に規定する厚生労働大臣が定める訪問介護 生活援助(指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表指定居宅サービス介護給付費単位数表の訪問介護費の注3に規定する生活援助をいう。が中心である指定訪問介護(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第4条に規定する指定訪問介護をいう。)

指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)
別表・指定居宅サービス介護給付費単位数表
1 訪問介護
イ 身体介護が中心である場合
(1)所要時間20分未満の場合 165単位
(2)所要時間20分以上30分未満の場合 248単位
(3)所要時間30分以上1時間未満の場合 394単位
(4)所要時間1時間以上の場合 575単位に所要時間1時間から計算して所要時間30分を増すごとに83単位を加算した単位数
ロ 生活援助が中心である場合
(1)所要時間20分以上45分未満の場合 181単位
(2)所要時間45分以上の場合 223単位
ハ 通院等のための乗車又は降車の介助が中心である場合 98単位

注3 ロについては、単身の世帯に属する利用者又は家族若しくは親族(以下「家族等」という。)と同居している利用者であって、当該家族等の障害、疾病等の理由により、当該利用者又は当該家族等が家事を行うことが困難であるものに対して、生活援助(調理、洗濯、掃除等の家事の援助であって、これを受けなければ日常生活を営むのに支障が生ずる介護保険法(平成9年法律第123号。以下「法」という。)第8条第2項に規定する居宅要介護者に対して行われるものをいう。)が中心である指定訪問介護を行った場合に所定単位数を算定する。

注5 身体介護が中心である指定訪問介護を行った後に引き続き所要時間20分以上の生活援助が中心である指定訪問介護を行った場合(イ(1)の所定単位数を算定する場合を除く。)は、イの所定単位数にかかわらず、イの所定単位数に当該生活援助が中心である指定訪問介護の所要時間が20分から計算して25分を増すごとに66単位(198単位を限度とする。)を加算した単位数を算定する。


生活援助(・・・訪問介護費の注3に規定する生活援助をいう。が中心である指定訪問介護

という表現を、どう解釈するか。
「注3に規定する生活援助」なので、注5の身体+生活は対象外、とするのが自然な読み方です。
ただ、「注3に規定する生活援助」というのは、あくまで生活援助(中心型)の定義であって、その生活援助(中心型)が再登場する注5における生活援助(中心型)部分も含まれる、と解釈する余地もあるようです。

ここで、報酬告示の留意事項通知を確認してみます。


<H12年老企第36号>
(3)1回の訪問介護において身体介護及び生活援助が混在する場合の取扱い
 1回の訪問において身体介護及び生活援助が混在する訪問介護を行う必要がある場合は、居宅サービス計画や訪問介護計画の作成に当たって、適切なアセスメントにより、あらかじめ具体的なサービス内容を「身体介護」と「生活援助」に区分してそれに要する標準的な時間に基づき、「身体介護」と「生活援助」を組み合わせて算定することとする。なお、身体介護中心型の単位数に生活援助が20分以上で66単位、45分以上で132単位、70分以上で198単位を加算する方式となるが、1回の訪問介護の全体時間のうち「身体介護」及び「生活援助」の所要時間に基づき判断するため、実際のサービスの提供は身体介護中心型の後に引き続き生活援助中心型を行う場合に限らず、例えば、生活援助の後に引き続き身体介護を行ってもよい。
(例)寝たきりの利用者の体位変換を行いながら、ベッドを整え、体を支えながら水差しで水分補給を行い、安楽な姿勢をとってもらった後、居室の掃除を行う場合。
〔具体的な取扱い〕「身体介護」に該当する行為がどの程度含まれるかを基準に以下のいずれかの組み合わせを算定
 ・身体介護中心型20分以上30分未満(248単位)+生活援助加算45分(132単位)
 ・身体介護中心型30分以上1時間未満(394単位)+生活援助加算20分(66単位)
(以下略)


報酬告示では、身体介護中心型に後に生活援助中心型を行った場合、という感じで書かれていますが、留意事項通知を読むと、実際には混在で、生活援助の後に身体介護を行うこと等も含まれることがわかります。

また、そもそも、このようなルール制定を審議した社会保障審議会介護給付分科会の資料では、注3に該当する生活援助だけの回数の調査結果が基になっていることがうかがえます。


○ 生活援助中心型サービスの利用回数(所要時間20分以上45分未満、45分以上のサービスの合計回数)が、合計90回以上の被保険者のいる保険者に対し、具体的な利用状況とサービスの必要性の検証の有無について、調査を実施した。
(社保審-介護給付費分科会 第152回(H29.11.22) 資料1)

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つまり、国が「回数が多すぎる」とか「標準偏差の2倍を目安として」とか言っているデータには、「身体+生活」は含まれず、生活援助(中心型)20分以上45分未満、同じく45分以上、の回数しか含まれていないと考えるのが妥当と思われます。

よって、注5(身体+生活)の回数は、届出の要否には無関係、となります。

もっとも、基準回数を超えたケースで、届出後にケアプランの妥当性をチェックする際には、身体+生活の部分を含めて検討することにはなるのでしょうが。